さざなみ (45 Years) ネタバレ注意感想 いくつになっても。

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注意! 作品の結末をネタバレしています


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オススメ度 ★★★★☆



あらすじ


長年連れ添ったジェフ(トム・コートネイ)ケイト(シャーロット・ランプリング)の夫婦は、結婚45周年を記念したパーティーを土曜に控えていた。

しかし、月曜に彼らの夫婦生活を揺るがす...かもしれない手紙が届く。
山岳事故で命を落としたジェフの昔の恋人・カチャの死体が、スイスで氷付けのままに発見されたというのだ。

カチャはジェフがケイトと出会う前に付き合っていた恋人。
交際当時の思い出に浸り、ついには彼女に会うためにスイスへと向かうことさえ考え始めるジェフ。

過去の思い出に焦がれるジェフの姿を見せつけられたケイトは、心の中で静かに、しかし激しく嫉妬を募らせていく...

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感想


現在25歳の私には、私が今まで生きてきた年数+20年間も特定の一人と常に一緒にいて、人生の経験のうちのほとんどを一緒に経験していくことなんて想像もつかないことなんですが、

今作「さざなみ」の主役となるご夫婦は、なんと結婚45周年を目前に控え、未だに仲良し、夜の営みの方もお盛んなカップル。それだけですげえなあ、って感じなんですが...

そこで私は思いました。結婚してから45年間も一緒にいて、そこに恋愛感情は残っているのでしょうか。
それともそれだけ長く一緒にいたら、恋とは全く別の何かに変化していくものなのでしょうか?

答えはなんとなく...いや、観る人によってははっきりと? 提示されていました。

私が受け取った答えは、男性にとっては「恋愛以上の何か」に変わっているけれど、女性にとってはいつまでも、いや、そうでない部分もあるかもしれなけれど、どこかでは常に「恋」の部分が残り続けているんだなあ、ということだったんですけど、人生経験浅すぎて、多分、いや絶対この解釈は間違っているはずです。
ご結婚されてから長い方の意見を聞いてみたいところですね。今度実家に帰ったら、両親にどういう感じなのか聞いてみようかなあ。

ジェフ(トム・コートネイ)ケイト(シャーロット・ランプリング)は、イギリスの田舎で慎ましく、そして仲睦まじく暮らす夫婦。

彼らの結婚45周年を記念するパーティは早くも土曜日に迫り、ケイトは会場選びやお互いに送るプレゼント選びなんかに一生懸命! いくつになったって夫婦のお祝い事は気合が入っちゃうってものですよね。
土曜日の日を楽しみにしていたケイトですが、世界は残酷。そう簡単に幸せばかりを運んできてはくれないのです。

パーティまであと5日となった月曜日、彼女たちの家に一通の手紙が届きます。
その内容とは、なんと約50年前にジェフが交際していた彼女・カチャの死体が、氷付けのままスイスで発見されたというもの。

ケイトも一応、ジェフに自分と出会う前の恋人がいたことを知ってはいましたが、こうして直接的な問題として向き合うのは初めて。
ついつい動揺してしまうものの、彼が今愛しているのは私。少しの嫉妬は覚えるものの心配はいらない、と思いきや...

なんとジェフさん、カチャに会うためにスイスに飛んで行きたいなあ、なんてとんでもないことを言い出すわけですよ。
それからは夫婦の決め事だった禁煙も破り、タバコをふかしながらカチャとの思い出を、まるで昨日のことのように鮮明に語り始めたり。

男は女性と比べて過去の恋愛をグズグズ引きずる傾向にあるというのはよく言われることですが、このジェフの行動を見ると顕著ですね。タバコを再び吸い始めるっていうのも、本当は良くないとわかっていながら過去の引き出しを開けてしまったことを象徴しているようです。

その後も、「僕のカチャ」なんてわざわざケイトの前で言わなくても良さそうなセリフを吐き続けるジェフの姿に、女性でなくとも「いやいやもうちょっと気を遣えよ!」と思ってしまうのではないでしょうか。

既に亡くなってしまった人物に恋焦がれる気持ちを隠そうとすらしないジェフを目の当たりにしたケイトは、ものすごい勢いで嫉妬の炎を燃やし、ベッドシーンまで用意された仲良し夫婦の関係に、見えない亀裂が入っていく...というのが今回のお話の全てなんですが、その中に詰め込まれた情報量が尋常じゃあないんですよね。

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しかし、最初の方でジェフの気を惹こうと会話を途切れさせないようにしたり、既に亡くなった、夫の50年前の恋人に対してここまで嫉妬するケイトは、非常に女性らしい人だと言えるのではないでしょうか。

嫉妬に燃えるケイトは、ジェフとカチャがどんな関係だったかを探るために家中を漁ったり、旅行会社まで行ってジェフがスイスへの航空券を取ろうとしていないかの証拠を掴みに行ったり、さらにはジェフ本人の口からカチャとの思い出を引き出した挙句、
「もし彼女とそのまま一緒だったら、彼女と結婚してた?」
なーんてホラーな質問をしちゃったりするのです。

ひぃぃ恐ろしい!
そ、そんなん当然、「僕が今愛しているのは君なんだから」とか、ちゃんとフォローしてケイトのことを愛してるって伝えてあげるんですよね...?

...と思うじゃないですか? 女性のみなさん、男というのはバカな生き物でしてね、「過去の女性に対する未練を口にしたって、今は目の前の人を愛しているってことくらい伝わってるから、何言っても大丈夫だろう」とかって思っちゃったりするものなんですよ。

だからジェフは、「そうだろうな」なんて無神経の極みのようなことを正直に言っちゃうわけですよ。
男からしたら、「既にこの世にいない女性に対して嫉妬はしないだろう」とか「今さらこんなことを口にしても何も変わらないだろう」っていう軽い気持ちで言っちゃってるわけなんですね。

しかし、これを聞いたケイトの心はもうズタズタ。
ジェフのことを、今までと同じ目線では見られなくなってしまうわけです。

そしてラスト付近でケイトが発見してしまう衝撃の事実が、ケイトの心の中で大きくなっていった亀裂を一瞬にしてかち割ってしまうわけです。

一方のジェフはそんなことが起こっているなんてつゆ知らず。

「部屋中にカチャの香水が染み込んでいるようだわ」「パーティではうまく振舞ってよね。私たち夫婦がうまくいっていないなんて、他の人たちには悟られたくないから」なんて怒りくるうケイトに対しても、なんでそんなに怒っているのかが理解できない、という風に振舞ってしまうんです。

ケイトを演じるシャーロット・ランプリングの演技が凄まじくて、
ここまで怒りをため込んでため込んで、でもこの時まで爆発させず、観客である私たちには痛いほどに伝わってくるものの、ジェフ本人には気づかれないように...という微妙なラインの怒りを完璧に表現しているんですよ。

結婚の兆しすらない私には「おおお、女性って怖いなあ」くらいで済んだものの、おそらく既婚の男性陣がこれを見ると、あるあるを超えて「今なんか俺、まずいことやり続けてないよなあ...」って、映画館からの帰りにケーキの一つでも買って帰りたくなること間違いなしなシーンになっているんじゃないでしょうか。

ジェフ役のトム・コートネイの演技がまたリアルで、「あ、夫婦生活が史上最大の危機を迎えようとしていること、本当に気づいてないんだなあ」思わせるとぼけっぷりを見せているんですが、

でもあれ、男だったら共感できる部分も多いと思うんですよねえ。男性の皆さん、いかがですか?

そして、ついに迎えたパーティの日。
早起きして、ウキウキした表情でケイトを起こし、プレゼントなんか渡しちゃったりして。
すっごく楽しそうなジェフをよそに、肝心のケイトの表情はこれ以上ないくらい複雑そうです。

パーティ会場に到着し、親戚やお友だちからはお祝いの言葉と笑顔が飛び交い、2人がこれまで過ごしてきた45年間の思い出話にも花が咲く...かと思いきや、
そんな思い出話が今となっては苦痛でしかないといった風にトイレに駆け込むケイト。

ここ、女性の皆さんはどう受けとるんでしょう。ケイトの中では、今までの45年間はほぼ完全に崩壊しているってことなんでしょうか。

それとも、今でもジェフを愛する気持ちと、彼が憎いという気持ちが葛藤しているんでしょうか。

ラスト付近、ジェフは涙ながらに「今までこんな僕のそばにいてくれてありがとう。愛してるよ」と感動的なスピーチを贈るのですが、

これ、男の立場からすると、「ああ、ここでケイトのことを心から愛してるっていう気持ちがはっきり伝わったんだから、今回の話はこれで決着ということでいいでしょう」って思いますよね?

ところがラスト、45年前の結婚式で使ったのと同じ曲に合わせてダンスをする2人でしたが、
ケイトは途中でジェフの手を離し、腕を組んで複雑そうな表情をしながら立ち尽くすのみ。

そこから静かに映画は幕を下ろすわけですが、な、なんだろうこの不気味なエンディングは...

一度浮かび上がった疑念は消えることなく、45年間続いたケイトの恋心も、静かに消えていったということなんでしょうか。

それともジェフが今愛しているのは自分であると思い直し、彼のことを許したんでしょうか。

男の立場からすると後者であってほしいと願うばかりなのですが、女性の気持ちっていうのはそう単純ではないはず。

シャーロット・ランプリングの長い人生経験が滲んだラストシーンの表情は、オスカーノミネートも納得の素晴らしさ。

男性諸君にとってはトラウマ、
女性陣にとっては、旦那さん方との関係をいい意味でも悪い意味でも見つめ直すきっかけとなりそうなこの「さざなみ」は、穏やかに、でも深く私たちの心を抉るヒューマンドラマです。



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Theme: 映画感想 - Genre: 映画

Comment

  • 2017/02/13 (Mon) 05:42
    #- - URL
    No title

    式前夜、静かに怒るケイトに、「どれもこれもカーチャに関係してるのでは?」と問われて、ジェフはまるで教師に叱られた子供みたいな受け答えをしました。
    そして、ケイトの憶測は多分当たっています。
    ついに危機感をもったジェフは翌朝、紅茶やスクランブルエッグをいそいそ用意したり、朝食の後に散歩しよう、と誘ったりしてご機嫌取りをしています。

    彼のスピーチはきっと本心ですが、ケイトにはもう、
    あまり響きません。
    そして、2度目のウェディングダンスをした時に、
    きっと、この曲もカーチャとの思い出の曲なんだろう、と自己納得してしまったように見えます。
    そこにジェフの45年越しの裏切りを感じて、手を振り離します。

    日本でも自分の娘に元カノの名前をつけて、後々バレて修羅場になった、なんて話を聞くじゃないですか。
    それと通づるものがありますね。

  • 2017/03/08 (Wed) 23:33
    通りすがりの男性 #tHX44QXM - URL
    アイデンティティ・クライシス

    >男性の皆さん、いかがですか?
    映画は女性視点で描いており、敢えて明確に描いていませんが、50年前に夫は愛する恋人と彼女が宿した我が子を失い、相当苦しんでいます。映画をよく見ればわかりますが、彼女の遺体がその時のまま発見されたと聞いて、愛する人を失う苦しみがフラッシュバックしています。これは彼女を未だに愛しているといった問題ではなく、病理的な反応です。彼は平静を装っていますが、妻を思いやる余裕がなくなっています。夫はトラウマに苦しんでいるだけで、浮気をしているわけではありませんが、妻の嫉妬、疑念はエスカレートし、「子供のいない自分に夫は満足していない」と妄想を抱くようになり、「自分の人生は何なのか、自分は何を成し遂げたのか、もっと何かできたのではないか、夫のかつての恋人が生きていれば自分はここにいなかったのではないか」と自己喪失感に苛まれ、抜け出ることができなくなります。いわば、妻は苦しむ夫の言動によって二次的に傷を負ったことになります。
    夫の言動を責めるのは容易ですが、妻はまずその傷を癒やす必要があります。そして「夫との生活に満足していた」彼女の幸せを壊したのは自身の妄想であることに気づき、「もし夫の恋人が生きていれば」というのが無意味な考えであることに気づかなければなりません。将来は選択できますが、過去は選択できないのです。こうしたことに気づけなければ、どのような形をとっても、彼女は幸せになることができません。彼女の傷が癒えるまで夫は苦労することになりますが、さもなくば彼は愛するもの失う苦しみを三度、味わうことになります。年老いたからと言って人生は必ずしも成熟するわけではなく、どこに罠が潜んでいるかわからないことを感じさせる作品です。

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