ラブ&マーシー 終わらないメロディー (Love & Mercy) 感想

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オススメ度: ★★★★☆

あらすじ:

1960年代、世界を熱狂させていた一つのバンドがあった。
彼らの名は、The Beach Boys

フロントマンであるブライアン・ウィルソン(ポール・ダノ/ジョン・キューザック)は、生まれ持った天才的な作曲センスで多くの大ヒットを生み出してきたが、周囲が自分に期待する楽曲のイメージと、自分が本当に作りたい楽曲のギャップに苦しみ、そのプレッシャーから心を病んでしまう。

それから時は流れ1980年代。
今でも心の病から回復できず無気力な日々を過ごすブライアンだったが、ある日カーショップの店員・メリンダ(エリザベス・バンクス)と出会ったことから、彼の心に変化が現れ始める...

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実在の人物の半生を描いた伝記映画というのは数え切れないほど存在しますが、その中でも面白いものって、今ある素材から何か新しいものを創り出そうという気持ちが伝わって来る作品だと思うんですよ。

例えばそれは、この映画の主人公であり、現在も活躍する天才シンガソングライターのブライアン・ウィルソンのキャリアとよく似ていると思いませんか。

中でもThe Beach Boysの代表曲として知られる"Good Vibrations"は革命的な楽曲。
一曲の中でコロコロと変わる曲調に、異常なほどキャッチーなメロディを支える緻密で複雑な音作り。さらには電子楽器のテルミンが取り入れられていたりと、とにかくブライアンの音楽制作への実験的な姿勢がこれでもかというほどに現れた、会心の一曲なわけです。



一体なにをどうやったらこんな作品を生み出すことができるのか? 凡人の私には理解のしようもありません。

そんな天才、ブライアン・ウィルソンの天才ゆえの苦悩の日々と再生を描いたこの「ラブ&マーシー 終わらないメロディー」は、彼の頭の中に広がる世界を我々にも覗かせてくれる、傑作伝記映画に仕上がっています。

オスカー受賞作「それでも夜は明ける」の制作を務め、今作では監督を務めるビル・ポーラッドは60年代、80年代という時代を美しくも正確に捉えた映像作りと、そして何よりブライアン・ウィルソンという人間を形作る音楽の両面から、ブライアンの内面に深く、そして優しく入り込んでいきます。

ブライアンの長きにわたる苦悩の日々を、'60年代と'80年代という2つの時代を行き来しながら描いたこの映画ですが、ポーラッド監督は1人の俳優に特殊メイクをすることなどで加齢を描くのではなく、それぞれ違った意味で優れた2人の俳優たちに演じさせるという手法をとりました。

'60年代、クリエイティビティが最高潮に達していた時のブライアンを演じるポール・ダノは、その純粋さゆえに、1本でも指を触れたらその瞬間に崩れ去ってしまいそうなあやうさを見事に表現しています。

そんな彼は、グループの対抗馬となる他のバンドたちに負けないように、そして自分の音楽を追求するため、犬の鳴き声や笛の音、さらには自転車のベルなどを駆使して、新しい音楽の形を創り出そうと奮闘します。

しかしグループのメンバーやレコード会社は、ブライアンに今までと似たような楽曲、簡単にヒットを飛ばせそうな楽曲を作るように要求。
メンバーとの対立や、自分のクリエイティビティを押さえつけられるプレッシャーやストレスから、ブライアンは心を病んでしまいます。

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そして月日は流れ'80年代。未だ心を病んだままのブライアンを演じるのはジョン・キューザック。お世辞にもブライアン・ウィルソンに似ているとは言えない彼ですが、周囲の人々にすっかり心を支配され弱ってしまったブライアンの姿を実に生々しく演じています。

そんな彼の救世主となるのは、彼がカーショップで出会う販売員・メリンダ。
出会った時から魔法にかかったように恋に落ちていく彼ら。メリンダはその優しさでブライアンを包み込み、だんだんと心を取り戻していくかのように見えるブライアンですが、物事はそう簡単にはいきません。

ブライアンが恐れているのは、彼の精神科医であり、仕事のマネージャーでもあるユージン・ランディ(ポール・ジアマッティ)
ランディはブライアンの行動を24時間監視し、ブライアンの食べ物にさえ口を出す。時には暴力まで行使する彼は、メリンダとの交際もブライアンに悪影響を与えるからと、彼らの仲を引き裂こうとします。

現在のブライアンの妻となるメリンダがランディに真っ向から立ち向かう姿の、なんと神々しいことか。
最近では"Pitch Perfect 2"で監督業も務めたエリザベス・バンクスは、ハンガー・ゲームでのような奇抜なキャラから、今作のような聖母系キャラまで何をやらせても似合いますねえ。

ポール・ジアマッティの脅迫的なまでに恐ろしい演技も、これならブライアンが骨抜きになっても無理はない、と思わされてしまう迫力があります。

しかしこれだけ素晴らしい俳優たちが束になっても、やはり音楽からは主役の座を奪うことはできません。

"Good Vibrations"でのレコーディング風景に加えて、ブライアンの頭の中でなっている音楽を視覚的に具現化して見せたシーンあり、さらには名曲・"God Only Knows"をポール・ダノがピアノで弾き語りしたりなど、The Beach Boysのファンでなくとも誰もが一度は耳にしたことのある名曲たちのオンパレードには心を動かされること間違いなしです。

そしてエンドロールで流れるのは、映画のタイトルにもなっている"Love & Mercy"のブライアン・ウィルソン本人によるライブ映像。
この映画を観た後だからこそ、自由に心の羽を伸ばして生きることを訴える彼の歌声に涙が止まらなくなるのです。本当に素晴らしい。

みなさんもこの映画を観たら、意図せずしてビーチ・ボーイズのファンになっちゃうかもしれませんよ...



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Theme: 映画感想 - Genre: 映画

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