エクス・マキナ (Ex Machina: 日本未公開) ネタバレあり感想 性と生存本能のせめぎ合い

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オススメ度: ★★★★☆


あらすじ


検索エンジンで有名なIT企業「ブルーブック」でプログラマーとして働くケイレブ(ドーナル・グリーソン)はある日、抽選で社長ネイサン(オスカー・アイザック)の自宅を訪問する権利を得る。

山岳地帯の奥地にあるネイサンの自宅へ辿り着いたケイレブは、ネイサンが自宅へ彼を招いた目的を語り始める。

それは、彼が秘密裏に開発している人工知能(AI)と1週間の滞在期間中、1日1回の面会を通して知性を測るという、いわゆる「チューリングテスト」を行って欲しいというものだった。

そして実験初日、対面した女性型ロボット・エイヴァ(アリシア・ヴィキャンデル)は、顔面と手、足先のみが皮膚で覆われているが残りの部分は機械の内部構造が透けて見える、誰が見てもロボットだとわかる姿をしていた。

しかし会話を始めると、ケイレブは好奇心が強く、美人な顔立ちをしたエイヴァの不思議な魅力に惹かれていってしまい...

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感想


もうさあ、同じAIを題材にした映画でも、「チャッピー」とか「トランセンデンス」みたいな予算だけバカみたいにかけて中身空っぽの映画は日本でもバンバン劇場公開されるのに、
なんでこの「エクス・マキナ」みたく、最小限の表現に言いたいことをギュッと詰め込んだ映画がスルーされるんだよ!(憤怒)

人工知能を組み込まれ、人間の肌を手に入れたロボットは、果たして人間になることができるのか。
その過程をスリリングに、そして少しのホラー風味を加えて描いた今作は、AIをテーマにした映画が氾濫する現在、今まで誰も見たことがなかったほどの衝撃を残すSFスリラーの快作となっています。

有名なIT企業に勤める主人公・ケイレブは抽選に当たり、謎に包まれた社長の自宅で1週間を過ごす権利をゲットします。ここで行きたいって思えちゃうのがすごいですね。私だったら「社長と一緒に1週間暮らそう! さあ、荷造りして行ってこい!」とか言われたら死んでも断りますけど。

ヘリを使わないと行くことができないアラスカの山奥に建てられた社長の家は、最新鋭のセキュリティが用いられた、さながら研究施設のような様相を呈していました。
そこでなぜか筋トレをしているヒゲ面ボウズのおっさんが。この怪しいおっさんこそが、全世界屈指のインターネット企業「ブルーブック」を束ねる社長・ネイサンだったのです。

到着して早速、ネイサンは今回ケイレブを招待した本当の目的を明かします。
そりゃそうだ。別におっさん2人で、人里離れた豪邸で過ごしたって何も生まれんわな。

その目的とは、ネイサンが秘密裏に開発している、AIを組み込んだ女性型ロボットと1日1回面談し、彼女に知性や性的な意識があるのかを確かめるというものでした。

そこで登場するのが、顔面と手足だけが人間の肌に包まれた美人ロボット・エイヴァです。

エイヴァを演じるのは、「コードネーム U.N.C.L.E.」をはじめとして最近売れに売れているアリシア・ヴィキャンデル。
彼女の手にかかれば、もともと「心」という概念がないはずのAIであるが故のなんとなく冷たさを感じさせる発音と、人間のような機微に満ちた感情の動きを同時に表現するなんてお手の物。
だからこそ我々は、エイヴァに得体の知れない恐怖心と共感を同時に覚えることができるんです。


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このエイヴァ、生まれてこのかた施設を出たことがなく、外の世界に興味津々。
ケイレブに「外の世界に出たら何をする?」と尋ねられたエイヴァは、「人の多い通りに立って、人間観察をしたい」というのです。

開発者であるネイサン以外の人間に触れたことのなかったエイヴァは、まるでケイレブと恋に落ちてしまったかのように、「あなたと一緒に外の世界に出て、デートに行きたい」となんともロマンティックなことを言い始めます。

女性経験の薄いケイレブは、いけないことだとわかっていても、エイヴァに惹かれていく気持ちを抑えられなくなっていくのです。
そしてエイヴァとの逢瀬を重ねていくうちに、エイヴァをこの牢獄に閉じ込めているネイサンのことを疑い、彼女を救う方法を模索し始めるようになります。

果たしてエイヴァの感情は本物なのか? ロボットと恋に落ちたケイレブの運命は?
少しロマンチックにすら思えるストーリーラインですが、「私を離さないで」や「28日後...」の脚本家を務め、今作で監督デビューを飾ったアレックス・ガーランド監督が、そんな甘々な話で終わらせてくれるはずもありません。

不穏なBGMと異様な緊迫感が張り詰めるスクリーン上で進行していくのは、性、知性、そして生存本能の果たしてどれこそがある物体を人間たらしめるものなのかを問うサスペンスフルな物語。

何が起こるかわからない、まったく予測不可能な物語は見るものすべての心に衝撃を残していくこと間違いなし。

こういう傑作映画を平然とスルーしちゃダメですよ、日本の配給会社さん! この映画がオスカーにノミネートされてからやっと価値に気づいても許してあげますから、必ず日本でも劇場公開を! お願いします!



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Theme: 映画感想 - Genre: 映画

Comment

  • 2016/06/11 (Sat) 23:01
    マフティーエリン #VCj8WLdk - URL
    No title

    ようやく日本で配給されましたね。今日見てきました。
    とても考えさせられる内容でしたが、そこから深く考えたときに
    ある疑問が浮かびました。
    AIにとって死の定義は何なのか?
    おそらく現在までに記憶した情報が削除される事と私は思いましたが、
    その記憶って情報として何かに移せるのでは?と。
    そこで、決定的に欠けているのが本能という概念と思いました。
    死ぬことは怖いという情報を予めプログラミングしておけばそれに
    とって従う。しかし、なぜ死が怖いのか?生き物はみな死を恐れます。
    死ぬとどうなるかについてなんてわからないのに。
    でも、もしAIにとって死の概念が記憶の削除であるならば、
    その記憶さえ情報化できれば物理的に媒体が壊れてもまとめて
    インストールしてしまえば永遠に死ぬことはない・・・
    (この辺りはGhost in the shellで既に描写されていますが)
    もちろん閉じ込められている状態では他の媒体にインストール
    できませんでしたが、AIがなぜ死を恐れるのかについての
    本能の定義の描写があると良かったなと思いました。
    (そこは視聴者におまかせしますってことですかね?)
    以上とりとめのない感想でした。

  • 2016/06/12 (Sun) 01:39
    UC #- - URL
    Re: No title

    マフティーエリンさん、コメントありがとうございます!

    AIにとっての死の定義...難しいですね。
    でも私は、エイヴァには生存に対する執着、外の世界で人間のように生きたいという生存本能があった。それこそが人間を人間たらしめるものであって、だからエイヴァは、作中の誰よりも実は人間らしかったんじゃないか...っていう結論のお話だと思ったんですね。

    で、人間そっくりの体に作られちゃったエイヴァには、自分のデータを移したら生き延びられるっていう認識がってあったかどうか...私ももう半年以上前に観た作品なので、ちょっと覚えてないかもです、すみません!
    ただ、たった2人の人間としか触れ合ってこなかったエイヴァが、まずからして自分をどういう存在だと認識していたかっていうのは、想像にお任せなのかなあ、っては思った記憶がありますね...

  • 2016/06/17 (Fri) 13:24
    はなまるこ #mHZ/BfkA - URL
    お仕事、お疲れさまです!

    UCさん、こんにちは^^
    先日はリツイートして下さってありがとうございました!
    ツイッターなど不慣れなもので、それが分かった瞬間にものすごく驚いてしまいました(笑)。

    私もこの映画、2014年くらいにイギリスですごく話題になっていたのにどうして日本には入ってこないんだー!!と去年ヤキモキして、ちょうど1年前くらいにBlu-rayを買ってしまっていました^^; 日本公開、遅すぎですよね、まったくもうi-203

    UCさんはご覧になったのが1年前ほどでしょうから、もうあまり覚えていないかもしれませんがi-201 私は彼女が外に出た後の進化が怖くて仕方ありませんでした。だって、永遠に若さを保ってあの美しさをキープしたまま、あらゆる男性への対応i-229が可能なんですよ~、これは武器ですよ!無敵ですよ(笑)!UCさんもエイヴァと会話を重ねていったら、やっぱり気持ちを持っていかれそうですか!?

    とにかく、劇中の音楽や硬質で不安感を煽る色合いの映像など、常に緊張感が付きまとう、とても良質な作品でしたね。日本公開になってくれて、本当に嬉しい限りです^^

  • 2016/06/17 (Fri) 23:34
    UC #- - URL
    Re: お仕事、お疲れさまです!

    はなまるこさん、こんにちは!

    人間界に入っていった後のエイヴァは、いったいどうなったんでしょうね?
    どれだけ人間に近づけるかという道を模索するのか、それとも...想像するだけで怖くなっちゃうような、無機質な画の作り方とかBGMとかが緊張感を生み出していて素晴らしかったです。私だったらエイヴァにころっと引っかかりそうです。浅い人間なので。

    はなまるこさんのレビューが面白い/興味深すぎたのでリツイートしちゃいました。私とは全然違う目線で見てらっしゃるなあと。だから他のブログを見るのって面白いんですよね!

  • 2016/09/25 (Sun) 13:56
    novus_amor #4d0Gbk9o - URL
    日本公開最後の日

    最近 私はストーリーは読まないんですわ。映像と音楽のみで文学性は問いません

    映像としては山の中の緑・滝の流れ・山水画の雰囲気がありました。

    建築はコルヴィジェスタイルの鉄・コンクリート・木の組み合わせ。

    コンクリートのグレィとの組み合わせが美しい。

    アクセントとしてときどきフラッシュのようにひらめく赤。

    壁にかけられたクリムトとポラック。

    オリジナルの音楽もよかったです。
    この作曲家を注意していこうと思います

  • 2016/09/27 (Tue) 15:47
    UC #- - URL
    Re: 日本公開最後の日

    novus_amorさん、コメントありがとうございます!

    確かにこの映画、低予算とは思えないほど映像が美しく、自然に囲まれた非常に人工的な施設っていうギャップも良かったですね。
    音楽も緊迫感をあおるもので、静かな中に押しつぶされそうな迫力があったように思います。

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2016/08/20 (Sat) 23:47

26日のことですが、映画「エクス・マキナ」を鑑賞しました。 世界最大手の検索エンジンで知られるブルーブック社で働くケイレブは滅多に人前に姿を現さない社長ネイサンの山間の別荘に招かれる そこで女性型ロボットのエヴァが現れる ケイレブはそこでエヴァに搭載され...

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