道頓堀よ、泣かせてくれ! Documentary of NMB48 ネタバレ注意感想 アイドルは、哲学だ。

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*注意!! 当記事には、作品の重要なネタバレが含まれます

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オススメ度 ★★★☆



あらすじ


ここは大阪。
笑いのためにはお金を出すが、面白くもない、未完成の状態で、成長していく過程を楽しむなんて、面白さが保証されないアイドルなんかにお金をかける人はごく僅かなこの大都市は、「アイドル不毛の地」と呼ばれていた。

しかし、そんな大阪の地に挑戦状を叩きつけるグループが現れた。
日本中にその名を轟かす国民的アイドルグループ・AKB48
その姉妹グループとして、難波を拠点としたグループ・NMB48が発足したのだ。

大阪ならではのお笑い要素や、グループのキャプテンにしてセンターを務める中心メンバー・山本彩のスター性を武器に快進撃を続けるNMB48。

しかしその裏には、グループ内に生まれた人気の格差、残酷すぎる競争社会の厳しさに苦しむメンバーたちの姿があった...

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感想


AKBグループのメンバーも一般の人以上には知っているつもりだし、なんだかんだでどのグループのドキュメンタリー映画もほぼ全て鑑賞している私ですが、今回観たNMB48についてはほとんどのメンバーを知らなかったんですよね。

というのも、グループのセンターである山本彩が目立ちすぎているので。
だってすごいじゃないですか。周りのAKBグループ自体のメンバーをほぼ知らない女性でさえ、「さや姉は可愛いよね!」とか「歌うまいよね!」とか言ってる人いっぱいいますよ。確かに(AKBグループにしては)歌もダンスもうまいし、何と言っても華やかなオーラがあって、女の子から人気があるのもわかります。

この映画のポスターもさや姉が単独で写ってるし、やっぱり人気のある彼女に一極集中した映画なのかな...と思いきや、映画を観たらそんなことは全くありませんでした。

NMB48待望のドキュメンタリー「道頓堀よ、泣かせてくれ!」は、一見華やかに見えるNMB48の活動の裏で、
一番の人気メンバーである山本彩
その脇を固める選抜メンバーでありながら、なかなか芽が出ずに悩むメンバー
そして加入から一度も選抜メンバーに選ばれたことのない、日の当たらないメンバー
という3つの視点からアイドルの世界の厳しさを描き出した作品となっています。

映画の始まりは、大きな箱を満席にした、華やかなライブのシーンからスタートします。
エレクトリックなダンスナンバーに合わせて歌い踊るメンバーたち。シングルのタイトル曲を歌う選抜メンバーたちを中心の一段高い段に据え、その周りを固め、少し振りの違うダンスを踊るその他メンバーたち。
そしてその光景を見つめるのは、サイリウムを振って応援するファンたち...

このシーンでまず、メンバーの間で格差が生まれていることが明示されています。
では、下段で踊るメンバーたちはどうやったら上にあがっていけるのか?

そこで突然場面は切り替わり、モノクロになった大阪の街中で哲学の本を朗読する少女が。
その少女は、AKBグループの「ドラフト会議」なるものによってNMB48に加入することとなった須藤凛々花
12枚目のシングルでは山本彩を押しのけてセンターに抜擢されたこのメンバーは、なんと将来は哲学者になることが夢なんだとか。

そんな彼女の口から語られるのは、「どうして人間は物事に順位をつけたがり、そのために争うのか?」という言葉。
そう、今作で描かれる階級・競争主義の世界は、何もアイドル界だけの話ではなく、現代を生きる我々みんなに当てはまる話なんですよ、ということを印象付けておくことで、我々の共感を促しているのです。

ここから物語は、山本彩に加え、境遇の違う2人のメンバーにスポットを当てて描かれます。

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そのうちの一人は、NMB48に2期生として加入し、見た目の可愛さや華やかさから運営や所属事務所からのいわゆる「推し」によって人気を確立していったメンバーの矢倉楓子

人気におごることなく誰よりも努力し、アイドルとしての夢も母子家庭で自分と弟を育ててくれた母親への恩返しのため、大きな一戸建ての家を買えるくらいビッグになるという、自分のこと以上に他人を思いやる優しさがにじみ出た感動的なもの。

正直この映画を観て、彼女を応援しようと思わない人はいないんじゃないか...というくらいのいい子っぷりを見せ、グループ内での序列も高く、順風満帆に見える矢倉さんのキャリアですが、そんな彼女にもある悩みが。

それは、10枚目のシングルで一緒にダブルセンターに抜擢された先輩メンバー・白間美瑠と比べられ、自分は望んでいなかったライバル関係の中で活動していくことを強いられてしまったこと。

天真爛漫な性格が魅力で、「負けたくない!」と自信満々に語る白間さんと違い、自分に自信がなく、他人と比べられることを嫌う矢倉さん。
対照的な彼女たちですが、そんな彼女たちの人気を数値化して表してしまう恐怖のイベントが存在するわけです。

それこそが、皆さんもご存知のAKB48選抜総選挙
ここでライバルに人気の差をつけられたら、今後の仕事にも影響が出てきてしまう...

思い悩む彼女は実家に帰り、最愛の母親と弟と一緒に、小さな回転寿司屋さんへ行きます。
そこで頑張っているのになかなか仕事が増えない現実を打ち明け、思いがはち切れそうになって、思わず涙を流してしまう矢倉さん。そんな彼女にかけたお母さんの言葉が印象的でした。

「ママだって、どんな仕事をしてたって頑張ろうって思うけど、頑張るだけじゃなく、それを楽しもうて気持ちが大事だよ(細かいセリフは違うはずですが、内容はこんな感じ)」

誰よりも努力家で、頑張ろう頑張ろうと思いすぎていた彼女は、もしかしたらアイドルとしての自分を楽しむことを忘れかけていたのかも。これはどんな仕事をしている人にも言えることではないでしょうか。

今の仕事を頑張っているのに、どうしてもうまくしかない、辛いという気持ちが先行してしまうもの。だけど、そんな自分も楽しむことを思い出して違うアングルから見れば、新しい何かが見えてくるかもしれない。
当たり前のことのようで、なかなか気づけないことを教えてくれるシーンでした。

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そしてもう一人、というか彼女こそがこの映画の主人公と言ってしまっていいんじゃないでしょうか。
1期生としてグループに加入するも、これまでのシングルでの選抜経験は一度もない、いわゆる「干され」メンバーの沖田彩華

NMB48の活動の原点である劇場公演を誰よりも愛し、選抜メンバーが出張中には劇場でダンスの練習をし、誰よりも多くの振りを覚えている彼女。

ダンスの実力には定評があり、CDに付属する握手券の売上も高い。5年間もの間グループを影から支え続けてきた彼女には熱狂的なファンも多く、2015年の総選挙では、速報順位で50位以内に入るという実力者です。

熱狂的なファンの一人が語るように、「自分たち(ファン)がやっていることも間違っていない。彼女がやっていることも間違っていない。」
なのになぜ、彼女は選抜に入れないのか?

その理由は、NMB48の劇場支配人がなんとも歯切れの悪い様子で「彼女の行動に...いや、もうこれ以上は言えないですね...」と答えるように、例えば事務所や運営の売り出したい子ではなかったとか、様々な理不尽な理由もあることでしょう。
それでも前向きに頑張り続ける彼女の姿こそが、この世の報われない人々へ監督が伝えたかったメッセージだったのか!

なーんて感動していたのもつかの間、ラストにとんでもない暴露話を持ってきてしまったことによって、映画全体の感動は一気にぶち壊されてしまうのです。

ある日突然、支配人の部屋に呼び出された沖田さん。
おお、ついに彼女の頑張りが認められて、「次は選抜だよ! おめでとう!」というハッピーな報告か!

しかしそこで支配人の口から語られた言葉は、これまでの感動的なシーンを一瞬で消し炭にしてしまうほど衝撃的なものでした。

「沖田がずっと頑張ってくれているのはわかってる。ファンの方からも直接『彼女はなぜ選抜に入れないの?』という声もたくさん届いてるしね。だから、ここで一つ聞いておきたいことがある。」

「今まで、男と関係を持ったことはなかったと言えるかな?」

はい、ちゅどーん。

なんだよそりゃ!
選抜に入れない理由、バッチリ自分自身にあったんじゃねーかよ!!!!

峯岸みなみの坊主事件とか、指原莉乃のHKT48への移籍とか、AKBグループには恋愛禁止という鉄の掟があること、AKBのファンじゃなくともご存知でしょう。

これまで散々「頑張っても頑張っても選抜に入れない不遇な子」としてのイメージを押し出しといて、
ラストで「選抜に入れなかったのは、男遊びが激しかったからです」ってバラしちゃうんかい!
ここまでの感動返してくれよ!

ていうか、これでもし彼女に男遊びしてたっていう事実がなかった場合とかどうすんの!? てか仮にあったとしても、グループのファンならほぼ絶対観に来るであろうこの映画の中でバラしちゃうってどうなの!?

劇中で出てきた沖田さんの熱狂的なファンの皆さん、卒倒しちゃうだろうなあ、これ見たら。
だって、今まで真面目な姿を応援してた彼女が、何が間違ってるのかわからなかった彼女が、選抜に入れなかった決定的な理由が、ファンへの裏切り行為だったって運営自らバラしちゃうって...

これはあれか。
沖田さんをあげてあげてあげたように見せかけて、実は「お前はもう終わってんだよ」という事実上の解雇通知でも突き付けようとしてたんですか、NMB48の運営さんは。

一応「今後は男遊びは絶対しないって約束だぞ! 約束だからな!」と5回くらい念押しされた上で、次回シングルでの選抜入りを約束してもらった沖田さんですが、これ見た後に選抜で踊ってる姿を見ても、素直に喜べないでしょ!

ああ、ラストにとんでもないもん見せられて終わっちゃったぜ...と釈然としない気持ちのまま劇場を出ることを余儀なくされてしまった私でしたが、
でも「所詮この世は因果応報」っていうところまでを描いてはじめてドキュメンタリー映画としてのリアリティが出た、と言ってもおかしくはないのかな。

この世は理不尽なことばかりだけど、やったことの責任は自分に返ってくるのです。
ああ、やっぱアイドルって哲学かもしれないなあ...と思わされたこの映画。

描きたいテーマが明確だったし、あからさまにファンだけに向けられた映画でもなく、ちゃんと映画としての面白さを追求していることがよく伝わってくる面白い映画であったことは間違いありません。
ていうか逆に、ラストのアレを観たらファンの人は観ない方がいいんじゃないかなあ...とすら思えてくるのが恐ろしかったですね。

壁に耳あり障子に目ありのこの世の中、私たちも、他人に見られていないと思うところでの行動が誰かに見られているかもしれません。私もこのブログ、知らないうちにリア友にばれているかもしれません。ああ、想像しただけで寒気がしてきました。 ぎゃー!!

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