ルーム (Room) ネタバレあり感想 世界は大きくて、美しい。

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オススメ度 ★★★★☆



あらすじ


とある狭い部屋に2人きりで暮らす、5歳のジャック(ジェイコブ・トレンブレイ)と、そのママ(ブリー・ラーソン)

生まれてから部屋を出たことがないジャックが知っているのは、ママとテレビの中に広がる魔法の世界、そして時々部屋を訪れては、魔法の力を使ってテレビの世界から持ってきたプレゼントを置いていく謎の男性オールド・ニック(ショーン・ブリジャース)だけ。彼にとって、それ以外のもの全ては虚構の存在だった。

ある日ママは、オールド・ニックとの言い争いをきっかけに、部屋からの脱出を決心する。

そのために彼女が取った作戦とは、ジャックに死んだふりをさせて、オールド・ニックが彼の遺体を外に運び出した際に、ジャックに外の世界の誰かに助けを求めさせるというものだったが...

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感想


ミニマムなのに壮大。辛辣なのに、鑑賞後には優しい気持ちになれる。
そんな矛盾した感性が共存した映画なんて存在しそうもありませんが、この「ルーム」がまさにそうなんだからしかたがありません。

エマ・ドナヒューによる同名小説を実写化した今作は、小さくて暗い部屋の中で暮らす、最近5歳になったばかりの男の子ジャック(ジェイコブ・トレンブレイ)と、そのママ(ブリー・ラーソン)のクローズアップから幕を開けます。

彼ら親子は、部屋の中でゲームをしたり絵本を読んだり、誕生ケーキを焼いたり、2人きりの日々を楽しもうと暮らしています。
なんてスイートな画なんでしょう。これはアットホームな家族ドラマなんでしょうか。

...あれ、でもこの2人、映画が始まってからしばらくたっても、全然外に出ないなあ。なんでだろう?

それもそのはず。
だって彼らは、この狭い部屋に監禁され、出たくたって出られないという状況に追いやられているのですから。

ママは7年間もこの部屋の中で監禁生活を余儀なくされ、この部屋の中で生まれ育った現在5歳のジャックは、生まれてから一度も外の世界を見たことがありません。

そんな彼にとってリアルな存在は、ママと部屋の家具たち、時々遊びにやってくるネズミだけ。
部屋にあるテレビは魔法の世界を映し出す箱で、テレビの中にいる人間や、木の葉などの部屋の中にない物質は全て虚構の存在なのです。

では、誰が彼らを監禁したのか?
その人物は、時々部屋にってきては生活に必要なものを置いていく、オールド・ニック(ショーン・ブリジャース)という謎の男性。

でも、ジャックにとってのオールド・ニックは、リアルなのか虚構なのかの判断がつかない存在です。
彼が夜な夜なやってくる時、ジャックはクローゼットに隠れていて、一度も直接のやりとりをしたことがないから。

ママがジャックをクローゼットに隠す理由はもっと衝撃的なものでした。
オールド・ニックは、夜にやってくると必ず、ママをレイプしていくのです。
ジャックはオールド・ニックが無理やりに孕ませた子ども。それによって生まれた彼は、生まれてからずっと、クローゼットの外から聞こえてくる、鈍く重苦しいセックスの音を聞き続けてきたわけです。それがまるで普通なことのように。

あまりにリアリティがないと思いました?
だいたいなんで、ママは抵抗もせずにおとなしく捕まっているのか。天井でもなんでも逃げられるだろって思います?

たしかに少しのツッコミどころもありますが、この設定を信じられずにはいられないのです。
あまりの不思議さに我々の頭も爆発してしまうそうな奇跡のインディー映画「フランク」を作ったレニー・アブラハムソン監督の生み出す緊迫感に満ちた雰囲気作りがあまりに見事だから。

しかし、このままずっと部屋に捕まったままでは話が進みません。
ある日、オールド・ニックと口論になったことから、ママは部屋からの脱出する計画を実行に移します。

どうやって彼らが部屋から抜け出したかは、ぜひともご自身の目で確かめて頂きたいところ。
だってこの過程、そして初めて外の世界へと舞台が広がっていく時の高揚感ったら、尋常ではないんですもん。

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そしてついに、部屋からの脱出に成功した2人は、ママの両親の家で新しい人生を始めることになります。

ここからの物語は...うーん、言えない!言えないです! だって、この物語はここからが本番だから!

高校卒業前からの7年間という、人生の一番大事な時期を謎の男から監禁され、レイプをされ続けて過ごしたママは、自分の人生を取り戻せるのか?
狭い部屋の中だけで、ママ以外のリアルな人間と触れ合うことなく生きてきたジャックは、広い世界と出会った時に何を思うのか?

この過程が、2人きりの小さな部屋から、4人(時々+1人)で暮らす一軒家に舞台を移して描かれていく様子があまりにも美しく、何よりも感動的なんです。

それをブーストしてくれているのが、今作の演技でオスカー主演女優賞を受賞したブリー・ラーソンと、その息子ジャックを演じたジェイコブ・トレンブレイ君の完璧以上の演技。

ジャックと2人で強く生きようとしても、監禁生活の経験から受けたトラウマが邪魔をしてなかなかうまく生きられないママ。その姿を生々しく、どこまでもリアルに演じたブリー・ラーソンは、前主演作「ショート・ターム」から引き続き素晴らしく、

ジャック役のジェイコブ・トレンブレイ君は、社会から断絶された場所で女性のママとだけ触れ合って生きてきたためか、最初は見た目も仕草も全てが女の子にしか見えないのに、ママの家族や新しい友達との時を過ごすようになってだんだんと男の子としてのアイデンティティを手に入れていく姿を力強く演じきっています。

彼がこの演技で主演男優賞にノミネートすらされなかったのは逆に衝撃的です。人種がどうとか言ってるなら、年齢が低すぎると対象にならないのかとかも考慮に入れたほうがいいですよ、多分。

主人公2人の世界が広がっていくにつれて、なんだか私たちの世界までも広がっていくような感覚を味わうことのできるこの映画は、確かに世界を破壊する宇宙人やスーパーヒーローは出てこない、規模の小さい映画といえるかもしれません。
でも、他のどんな映画よりも強い思いを私たちの中に残してくれる映画ということは、疑いようもありません。



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2016/05/13 (Fri) 01:40

9日のことですが、 映画「ルーム」を鑑賞しました。 施錠された狭い部屋に暮らす5歳のジャックと母親ジョイはオールド・ニックによって7年間も監禁 そこで生まれ育った息子にとって この部屋こそが世界の全て ある日ジョイはこの部屋しか知らない息子に外の世界を教え...

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