リリーのすべて (The Danish Girl) ネタバレあり感想 ほんとの私。

このエントリーをはてなブックマークに追加

qgeudsfahsidfo.jpg

オススメ度 ★★★★☆



あらすじ


舞台は1926年デンマーク。

風景画家のアイナー・ヴェイナー(エディ・レッドメイン)は、同じく画家で、人物画を得意とする妻のゲルダ(アリシア・ヴィキャンデル)に女性モデルの代役を依頼される。

ゲルダから手渡された衣装を手に取ったアイナーの心の中に、とある感情が湧き上がる。
それ以来、頻繁に女装をするようになったアイナーに対し、ゲルダはとある提案をする。

それは、ゲルダがメイクや女性らしい仕草の指導までを手伝った完璧な女装で、いつも出席している仲間内のパーティに参加しようとしようというものだった。

女装している時はリリーと名乗ることにしたアイナーだったが、そのパーティの会場で衝撃的な事件が起こる。

それをきっかけにして、アイナーはリリーとして生活していく時間が徐々に増えていくのだが...

qviewbudsfnkjv.jpg

感想


人種だけでなくLGBTに対しても平等を求める声が強まってきている昨今ですが、そんな現代においても、「あの人はLGBTなのではないか」という人を追い回しては「疑惑」という言葉を使って、まるで犯罪者かのように追い込んでいく風潮って、消えていないじゃないですか?

だから未だにスポーツ選手やセレブリティのカミングアウトはいちいち大ニュースになって、世間からバッシングを受けたりするわけで、世界中で「LGBT=悪いもの/異常なもの」という認識がなくならないからこそ、LGBTの方々も自分を偽って、本当にしたいことをできない、本当の自分でいられないまま一生を過ごさなければならない人も多いのでは。

現代でもそうなんだから、ましてや1920年代におけるLGBTの方々の苦悩は計り知れません。
それこそが、人類で初めて性転換手術を受けたとされる実在の人物リリー・エルベをモチーフに書かれたフィクション小説"The Danish Girl"の実写版の今作「リリーのすべて」で描かれるテーマ。

女性としての自分に目覚めた主人公アイナー・ヴェイナーがいかにして「リリー」という本来の自分の姿を取り戻していくかを辛辣に、しかし優しく描いた社会派ドラマとなっています。

主人公のアイナー(エディ・レッドメイン)は風景画家。昔見た思い出の風景をいつまでもいつまでも描き続ける彼は、まるで過去の何らかの経験にとらわれているかのよう。
彼は同じく画家で、人物画を得意とする妻のゲルダ(アリシア・ヴィキャンデル)と結婚して約6年経ってもお互いに対する思いやりと愛情を忘れない、まるで絵に描いたような幸せな生活を送っていました。

ある日ゲルダは、女性の姿を描くため、アイナーに女性の服を着てモデルになってもらうようお願いします。
最初は着たくないよと拒む彼でしたが、ゲルダから手渡されたドレスを手に取ると、自分の内側から何かが湧き上がってくるのを感じます。
アイナーは、そのドレスを強く握りながら、ある考えに心を奪われてしまったわけですが...

その後、アイナーは頻繁に女装をするようになります。
ついにはゲルダとセックスをする時にまで、女性用の肌着を着用するように...

これを一種のプレイのようなものだと楽しんでいたゲルダは女装中のアイナーを「リリー」と名付け、とある提案をします。
仲間内のパーティに、リリーとして参加すること。メイクやドレス、仕草も練習していけば、誰にもばれることはないだろうと思いながら。

qgeudsbj.jpg

パーティに行ったリリーは、アイナーでいる時はいい友人であるヘンリク(ベン・ウィショー)から言い寄られ、ついには離れたところでキスされてしまいます。
それを拒めなかったどころか、むしろ性的な興奮を覚えてしまったリリー。しかもその現場を、ゲルダに目撃されていたのです!

ここのあたりの緊迫感というか、イケナイお楽しみ感というか...とにかく「あぁ〜ダメだよそんなぁ〜!!」とついつい身悶えが止まらなくなってしまう微妙な感覚がたまりませんね。
だって、アイナーは結婚してるんですよ! いくらなんでもキスは拒みなさいよ、キスは! ああ、ゲルダが不憫でしかたない...

と思うじゃないですか?
でも、女性としての自分に目覚めてしまったリリーはもう止まりません。
ゲルダを傷つけていることを理解しながら、「アイナーは君を愛しているけど、リリーとしての自分は別だから」なんて言いながら、なんとヘンリクとの逢瀬を重ねちゃうのです!

ヒィィィ!! とんでもねーな! いや、自分の性のありかに関わらず、やっぱり不倫はあかんでしょ! しかもこんな堂々と!
しかも、いくら見た目も美人で仕草も完璧に女性だとはいえ、リリーが本当は女装したアイナーだとバレてしまったら、多分ストレートなヘンリクはどう思うんだよ...

でもみなさんご安心を。残念ながら、バレバレなんですよ。

リリーが女装したアイナーだと気づいていたヘンリクは、それをわかった上で性的な関係を築こうとしていたのです。
ヒィィィィィィィィ!!!!! そっちの方がむしろ怖えーわ!!!

そのことに深く傷つくリリー/アイナーですが、それでも女性としての自己認識は日々強まっていくばかり。
「私は自分の夫に戻ってきてほしいの」と懇願するゲルダに対し、リリーは「リリーとアイナーは別人。私はもうあなたの求めるものを与えてあげられないの」と主張し、その上でまだゲルダのことを愛している、一緒にいてほしいと言うのです。

gyiefwrufd.jpg

うーん、こうなってくると、ゲルダが不憫でなりません。

女性としてのリリーは男性に対して性的な行為を持つわけで、だけど元いたアイナーとしての自分はゲルダを愛していたし、今でもそれは変わらないから、「自分に性的、夫婦としての愛は求めないでほしいけど、でも自分のことを人間として愛して、近くで支えてほしい」と言っているわけなんですね。

そんな身勝手なことってないじゃないですか。
確かに、子どもの頃から女性としての自分に自覚があったアイナー/リリーは、法律で同性愛が犯罪と規定されていた当時のデンマークにおいては自分を偽って生きることを余儀なくされていて、だからこそアイナーとしてまず女性を愛するように努力しなければならなかった...という悲しいバックグラウンドがあったのかもしれないですが、
だからと言ってこれじゃあ、アイナーという人を一途に愛し続けたゲルダにとってあまりにも酷です。

しかし、そんな状況下においても、ゲルダはアイナー/リリーのことを誰よりも深い愛で支え続けるんです。
もうリリーが自分の夫・アイナーではないと理解しながら、だんだん女性になっていく彼のことを、傷つきながらも優しい目で見守っていくんですよ。

観客の多くは、リリーよりもゲルダの方に感情移入してしまうんじゃないでしょうか。
劇中で"The Danish girl is here to see you (デンマークの女の子が会いに来てますよ)"というセリフがあるように、おそらくタイトルの"The Danish Girl"はゲルダを指したものであるはず。

そんなゲルダを愛すべきキャラクターへと仕上げたアリシア・ヴィキャンデルの演技はまさに「アカデミー賞もの」ですね。「エクス・マキナ」「コードネーム U.N.C.L.E.」などの話題作での活躍もありますし、オスカー助演女優賞受賞も大納得ですね。

アイナー/リリーという難しい役を完璧以上に演じきったエディ・レッドメインの実力は言わずもがなですね。
男性の体に生まれながら、自分は本当は女性なんだ、女性として生きたいと内側で葛藤する様子を細かすぎるディテールに至るまでこだわり抜いた演技は、もうこれで2年連続主演男優賞取っててもおかしくないんじゃないか、というレベルでした。これでも受賞できないって、ディカプリオはどんだけすごかったんだ。

「リリーのすべて」は、女性になったアイナー/リリーが男性との性にまみれていく描写や、生々しい性適合手術の描写には傾倒していませんが、
代わりに主人公たちの心理に深く迫ることで、観客の頭の中、そして心の中に、「ジェンダーに関わらず自分らしく生きること」が1人の人間の人生をどう変えていくのかという問いかけへの一つの答えを残していってくれる作品です。

もし、自分の近くにリリーのような人がいたら、素直に応援してあげられるか?
それはやっぱり、その時になってみないと私にもわかりません。でも、この映画を観て、もっと自分を押し殺して生きている人を応援してあげたいなって思ったんです。

だって、自分らしく生きること。それこそが、人生で一番大事なことじゃないですか。



関連記事
スポンサーサイト
Theme: 映画感想 - Genre: 映画

Comment

Leave a Reply


管理者にだけ表示を許可する

Trackback

2016/05/07 (Sat) 17:33

28日のことですが、映画「リリーのすべて」を鑑賞しました。  1926年デンマーク 風景画家のアイナー・ヴェイナーはく画家の妻ゲルダに女性モデルの代役をきっかけに自身にある女性の存在を意識する それ以来リリーという女性として生活していく比率が増していくアイナ...

笑う社会人の生活 - http://blog.goo.ne.jp/macbookw/e/111ad4679e7ca958dcebeac6058db360