アノマリサ (Anomalisa) ネタバレ注意感想 誰かここへ来て。

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*注意! 物語の大部分をネタバレしています。

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オススメ度 ★★★★★



あらすじ


時は2005年、カスタマーサービスの専門家マイケル・ストーン(デヴィッド・シューリス)は、講演会を行うためオハイオ州はシンシナティへやってきた。

人と接することのプロである彼は、とある問題を抱えていた。
自身の妻子を含むすべての人間が、全員同じ顔、同じ声をした無表情な男性(トム・ヌーナン)の姿に見えてしまうのだ。

翌日に講演会の開かれるホテルに宿泊していた彼に、一つの事件が起こる。
部屋でシャワーを浴びていると、なんと部屋の外から久しく聞いたことのなかった声が聞こえてくる。

それは、長年忘れかけていた、女性の声だった...

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感想


アニメーションなんて所詮は虚像。実写の映画のように生々しくリアルな世界観を生み出すことなんてできないさ...と思っている方、いらっしゃいませんか?

そんな方には、この「アノマリサ」をどうぞ。
まるで鉄マスクをかぶっているかのように顔が分割された人形たちが笑って苦しんで、セックスをする。
全編ストップ・モーションを使って描かれ、アカデミー賞長編アニメーション部門のノミネートを受けた今作は、どんなヒューマンドラマよりも生々しく、どこまでも「人間くさい」作品に仕上がっています。

物語の主人公・マイケル(デヴィッド・シューリス)はアメリカでは有名なカスタマー・サービスのエキスパート。
今回も自身のベストセラー "How May I Help You Help Them (あなたが誰かを手伝うお手伝いをさせてもらえませんか?)"に興味を持った主催者から招待され、オハイオ州はシンシナティのホテルで講演会が開かれます。

しかし、人と接することのプロである彼には、一つ重大すぎる悩みが。
いつの頃からか、街を歩く人々、飛行機で隣に乗り合わせた人、さらには地球上で最も愛する人物であるはずの妻子までを含めたこの世の全員が全く同じ顔、同じ声をした男性(全員トム・ヌーナン)に見えて(聞こえて)しまうようになっていたのでした。

アップグレードしてもらったホテルの部屋に入った途端、彼は明らかに生気を失ってしまいます。
というのも、愛する息子たちは彼のことをお土産製造機だとしか思っていないし、妻は電話にすら出てくれない。結婚生活がうまくいっていないことは明らかです。

それどころか、このシンシナティは10年前に自分がひどい振り方をした元カノが住む街。
その思い出までがフラッシュバックして、明日は大事な講演会だというのに気分は最悪です。

この寂しさ、悲しさをどうにか紛らわさなければ。
お酒の力を借り、思い切って電話でバーへと誘ってみた相手は、なんとくだんの元カノ!...って言っても、声はやっぱりいつもの男の声なんですけどね。

うわぁ、こんなん来るわけないでしょ! 俺なんてそこまでひどい別れかたもしてなくて、別れた後も普通にラインのやり取りしてた元カノを友達感覚で遊びに誘ったら、「ラインならいいけど、もう2人では会うのは嫌なんだよね」って断られたぞ!

...と思ったら、なんと彼女、来てくれるんですって! こりゃあ、男としては期待しちゃいますよね!
彼女に最近の様子なんて当たり障りのない会話をしたあと、「よかったら...俺の部屋に来ないかい?」なんて誘ってみたら、案の定彼女は大激怒。バーを大火災の現場に変えてしまったマイケルの気分は地の底へ落ちます。

そんな気分のまま飲み続け、足元もおぼつかないほどに酔っ払った彼は、子ども達へのお土産を求めて近所のおもちゃ屋さんへ。
焦点の合わない目でレジへ向かって、「子ども達用のおもちゃをくれ!」と言うも、我に返って辺りを見回すと、そこはおもちゃ屋さんはおもちゃ屋さんでも「大人の」おもちゃ屋さん! 男性器を模したフィギュアなど、とんでもないものが置いてあったのです。

またも落ち込むマイケルでしたが、そこにひときわ輝く本物のおもちゃが。
それは、ところどころのつなぎ目が見えた、私たち日本人にとっては恐怖でしかない日本人形でした。
その人形に特別な何かを見たマイケルは、その人形を購入して部屋に戻ることにします。

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部屋に帰って慣れないシャワーを使っていたマイケル。
このまま今日1日も過ぎていくのかとぼんやり考えてた彼でしたが、そんな時、彼の人生を揺るがす(かもしれない)大事件が起きます。

なんと、部屋の外から女性の声が響いてきたのです。
ん、女性の声!? 普通だったらなんともないことかもしれませんが、これはマイケルにとっては大事件。なにせ彼にとっては、全人類の声が同じ男性の声に聞こえるのですから。

急いで部屋を出て、近くの部屋という部屋をノックして声の主を探すマイケル。
彼の顔の必死なこと! こんなに必死な顔をされたら、私たちだってこの奇妙な現象が彼の頭の中だけでなく、まるで私たちも一緒に体験しているかのように感じさせられてしまうではないですか!

そしてある部屋のドアを開けると、そこにいたのは、1人だけ全く違う顔と声を持った女性。
彼女のことをもっと知りたいと思ったマイケルは、リサ(ジェニファー・ジェイソン・リー)というその女性とその親友をバーに誘います。

もともとマイケルの大ファンだったリサは大喜び。
バーで話したあと、マイケルから部屋に誘われた時には、もう幸福すぎて自分に何が起きているのかわからないほどだったのです。

「君の声は特別なんだ」「もっと話し続けてくれ」と促されて話し続けるリサの言葉から伝わってくるのは、彼女がどんなことにも好奇心が強く、見た目が良くて明るい親友と比べて自分は...というコンプレックスを抱きつつも、負けずに楽しみを見つけて生きているという心の強さ。
それらは、「人生が退屈だ」と嘆く今のマイケルに欠けていた部分そのものでした。

マイケルは彼女に歌を歌ってもらうように促し、リサは大好きなシンディ・ローパーの"Girls Just Wanna Have Fun"を歌います。
すごく上手いわけじゃないのに、どうしてこんなにも感動的な歌が歌えるんでしょう。
リサを演じたジェニファー・ジェイソン・リーの演技はもはやアートの域です。ユーモアがありつつもどこか傷ついていて、でも他人への優しさに溢れるリサを完璧に演じきっています。
最近では「ヘイトフル・エイト」での演技も高く評価されていましたし、もう来年は持ち越しで彼女に賞をあげちゃってもいいんじゃないの、と思うほど。

こんなに美しい歌を聞かされちゃったら、そりゃあセックスだってしたくなっちゃうってものです。男性の皆さん、ここで興奮しちゃわないように要注意ですよ!

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ここから始まるセックスシーンは、まさに「濡れ場」と呼ぶにふさわしくエロい。果てしなくエロいです。
こんなにエッチなセックスシーンは、正直今まで観たことがないです。2人の肌が触れ合う瞬間や、自然とベッドに倒れ込む様子など、なんでここまでエッチに描けるんですか。もう人形が演じてるってことをすっかり忘れてしまいます。

だってもう、マイケルがリサの◯◯◯を舐めちゃったりとか、普通に正常位でパコパコやってたりしますからね。しかも、マイケルのち◯◯にはモザイクなど一切なし、普通の中年おじさんの体をもろに映しちゃったりしてますし。いくらアニメーションとはいえ、ついつい「いやいや、これ映しちゃっていいの!?」と心の中で叫びたくなっちゃうほどです。

ことを終えた彼らは、就寝前の最後の会話を。
それにしてもリサは、何て特別な人間なんでしょう。この世の誰とも違う彼女は、マイケルにとっては例外的。だから、英語で「例外的」を示す単語"Anomaly"と「リサ」をかけて、彼女のことは「アノマリサ(Anomalisa)」と呼ぼう、と決めます。

こんなにロマンチックでエッチな恋、いつまでも続いてほしいなあと思うじゃないですか?
ところがどっこい、人間の心変わりというのは早いものなのですよ。

翌日、同じベッドで目を覚ましたマイケルとリサ。
他の誰とも違う声、顔をした人となんてもう出会えないだろうと思った彼は、これからもずっと一緒に生きてほしい、自分は妻子を捨てるから、とリサに求婚します。

崇拝しているマイケルにそう誘われたリサもすっかり乗り気に。しかしそこで、またしても事件が起こります。

ルームサービスの朝食を食べながら今後について話す彼らでしたが、マイケルは食べ物を口に含みながら話すリサの姿がどうも気に入らない。注意しても治らない。その姿をどうしても許容できない...

と思い始めてしまった瞬間、なんとリサの声と顔が、いつもの男にだんだんと変わっていくではないですか!
その光景を目にした時、マイケルは思います。ああ、彼女も結局は同じだったか...

いちど許容できないと思ったら、その気持ちはもう止まりません。リサの姿は、もう元の姿を思い出せないほど、他の人間と同じ退屈な男の顔になっていきます。
それでもマイケルはリサと一緒になることを選ぶのか? それは是非、ご自身の目で確かめていただきたいところです。

この映画の素晴らしさは、人形の世界からどこまでも生々しく私たち自身の姿を思い出させてくれるところ。
所詮は自分勝手、自分に都合のいい人間以外の他人は退屈な、どうでもいい存在なんでしょうか。
広い世界の中心にいるのは結局自分で、重要なのは自分に合わせてくれるたった1人の人間だけなんでしょうか。

そんな深みのある物語をたった2人のメインキャラクター、3人だけの声優に、今はやりのクラウドファンディング型ウェブサイトのKickStarterに資金調達の一部を託した限定的な予算という最低限の環境下で作り上げてしまったチャーリー・カウフマン監督の才能には感服するばかりです。

そういえばタイトルの「アノマリサ」ですが、リサが英和辞書を引いてみたところ、日本語で"Goddess of Heaven(天国の女神)"という意味だったんだそうです。今まで24年間日本で生きてきて、そんな言葉聞いたことねーよ!! 誰か聞いたことある方いたら教えてください。



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