モヒカン故郷に帰る ネタバレあり感想 人生は、喜劇だ。

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オススメ度 ★★★★



あらすじ


プロのミュージシャンを目指し、東京でデスメタルバンドのヴォーカルをしている田村永吉(松田龍平)

定職にもつかず、「ビッグになる」という漠然とした夢の向かう先も見えないままにダラダラと毎日を過ごしていた永吉だったが、そんな彼の人生にも転機が。

なんと交際中の彼女・由佳(前田敦子)が妊娠。
それを受けて結婚の報告をするべく、7年間も帰っていなかった実家に帰省することになったのだった。

永吉の実家は広島県にある小さな島。
島の住民は誰もがお互いのことを知っているような小さなコミュニティだ。

実家に帰った永吉は、さっそく父親・治(柄本明)に由佳の妊娠と結婚のことを打ち明ける。

最初は永吉のあまりの頼りなさに憤慨したように見せた治だったが、内心は大喜び。
その場で島中のみんなに電話をかけまくり、家で大宴会が開かれる。

宴は夜中まで続き、やっとみんな帰って家も静まり返った頃、永吉は床に倒れこんでいる治を発見する。
なんだ、また酔いつぶれてしまったのかと無感情な永吉だったが、今回はなんだか様子がおかしい。

救急車を呼んで治を病院へ連れて行くと、なんと彼が末期のガンにかかっているということが発覚。

これをきっかけに、治に死ぬまでにやりたいことのリストを作ってもらい、それを達成するために力を尽くそうと決意した永吉だったが...

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感想


みなさん、人生についての現実的な問題について考えることってお好きですか?

例えば、「今の仕事は楽しいけど、結婚した時のためにを、もっと収入と労働時間のバランスのとれた仕事に就かないとなあ」とか、「今は旅行に行ったり趣味にお金を使えて楽しくやってるけど、老後のことを考えると、今からもっと慎ましく暮らさないとなあ」とか。

私は大の苦手です。今を楽しめばいいじゃん、としか考えられない人なので。

でも周りには多いんですよねえ、「結婚した時のために貯金しなきゃと思ってるんだよね〜、子どもできてからじゃ遅いじゃん?」とか言ってる人、男も女性も。私もそういうことを考えなければいけない年になってきたってことなんだなあ、とは思わされるんですが、どうもそういう話には耳を塞ぎたくなっちゃう性分で。どうも、ダメ人間です。

この映画「モヒカン故郷に帰る」の主人公・田村永吉(松田龍平)も私と似たような感じの人でした。
デスメタルバンドのヴォーカルなんだけど、長年やってても芽が出るわけではなく、でも今の中途半端な毎日がなんとなく心地いいから難しいことは考えること自体したくないのです。

バンドのメンバーたちが「年金を払ってくためにちゃんとした収入を得ないと...」とバンドの将来について真面目に話し合う中、意見を求められた永吉の返答と言えば、

「俺は俺なりに考えたんだけど...なんだかんだあって、やっぱり、みんなの言う通りだと思う」

という、思考を放棄しているどころか、真面目に話をしたメンバーたちのやる気まで全て削ぎとってしまうようなもの。
とにかく今は現実的なことは考えないように。そんなダラダラした日々が、これからもずっと続けばいいのかも...

しかし、現実は永吉の気持ちも無視して追ってくるものです。
なんと、同棲中だったネイリストの彼女・由佳(前田敦子)がまさかの妊娠。
もうこうなったら結婚するしかないよね、ということで、一応の報告のため、永吉は長年帰っていなかった実家に帰ることとなります。

永吉の実家は、広島県にある小さな島。
島民の誰もがお互いの顔を知る、都会の東京とは真逆の世界というわけです。

生まれ育った我が家に帰ってみると、そこには家を出たはずの弟・浩二(千葉雄大)の姿が。

お前がいるのも変だけど、肝心の両親はどこだ...と不思議に思っていると、騒がしい音とともに、泥酔した父・治(柄本明)が母の春子(もたいまさこ)に連れられて帰ってきたではありませんか。

治は生涯を島で過ごし、小さなグローサリーストアを営みながら中学校の吹奏楽部のコーチをやっています。

同じ広島出身の矢沢永吉が大好きな治は、吹奏楽部でも常に矢沢の曲ばかりを演奏させていたり。作中では明確に言及されていなかった気がしますが、主人公の名前もどう考えたって矢沢が由来でしょうね。

吹奏楽部の面々からは、「中学校の吹奏楽で矢沢は渋すぎなんじゃないですかー」と批判を受けながらも指導は楽しいし、共に育ってきた仲間たちと飲む酒はうまい。文句なしの楽しい生活を送っていた治でしたが...

7年ぶりに突然帰ってきた息子が結婚。それも、妻となる女性のお腹には、彼にとって初めての孫がいるというではありませんか!

それは治にとって、永吉のことを子どもの頃から知る島の住民たちにとってのビッグニュース!
島中の人間に電話をかけまくり、その日のうちに、治の家では大宴会が開かれます。

長いこと島を離れていた永吉にとっては「誰だよあいつら...」だった島の住民が家を去った後、永吉は家の中で倒れている治の姿を見つけます。

なんだ、また潰れているのかと思いきや、今回ばかりはなんだか様子がおかしい。ん、聞き取れるか聞き取れないかギリギリの声で「救急車...」とか言ってるぞ!?

これはまずいかもしれないと救急車を呼び、なんとか治を病院に連れて行ったのですが...

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そこで発覚した事実が、家族の運命を変えていきます。
なんと治は末期のガンにかかっており、もう治療する手立てはないのだというではありませんか。

それを受けて永吉は、東京に戻るのをやめて、治のそばで彼のしたいことを叶えてあげられるように、と最後の親孝行をすることを決意するのですが...

お、「なんだ、いつもの良くある難病ものじゃないか」と思いました?
この「モヒカン故郷に帰る」は普通の病気ものとは一味違うのです。死期が迫る治の姿を、彼の死を軽く扱うとは全く別の方向性で、まさかまさかコミカルに描き出しているのですから。

まずからして、治のガンが発覚したシーンで既に笑いを誘っています。

先日公開の「黒崎くんのいいなりになんてならない」では聡明で美形すぎる理想のイケメンを演じた千葉雄大くんが、今作では完全に頭弱い子になっていて、まだ自分のガンを認識していない治から、家族一丸となって一旦は隠しておこうと振舞っていた時にも一人泣き出してしまいます。
これはまずいと察した母が「水買っておいで!」と助け船を出すと、「何本?」と聞き返したり、「人数分だよ!」と指示されると、半泣きになりながら「持てるかねぇ〜(涙)」と言ってみせたりと、もう完全に笑わせに来てるんですよ。

それ以外にも、治の思い出のピザを注文して食べさせてあげよう! となるのですが、その際に島はピザ屋があるところから離れすぎていて注文不可です、という断りに対して「親父がガンなんですよ〜」と永遠に言い続けて無理やりデリバリーさせる、とかね。

彼らにとっては間違いなく真剣なことなんだけど、端から見ていると喜劇になってしまう。いや、もしかしたら当事者である田村一家の人々も、心のどこかではこの状況を楽しもうとしているのかもしれない。

そう思わせてくれる、ナチュラルで力の抜けたセリフまわし、そして人間味あふれる個性的なキャラクターたちに生を吹き込んだメインキャストたちの活躍が素晴らしいです。

いろいろ言われてるけど、なんだかんだ前田あっちゃんは演技うまいですよね。
彼女の演じる永吉の新妻・由佳も例に漏れずなーんにも考えてないようなおバカちゃんなんだけど、どうしてこれが憎めないんだな。

彼女以外にも、田村家の人々はみんな悪意がなくて思わず好きになってしまうような魅力に満ち溢れています。

最初はちょっとムカつく感じだった永吉が、治の死を目前に、だんだんと現実と向き合うことに積極的になっていく過程もまた愛おしく感じられます。

彼の心理は、劇中のとあるセリフに凝縮されているように感じました。
治が指揮する吹奏楽部で唯一の男子を家に送る道すがら、永吉はこんなことを語ります。

「親って死ぬんだなって。いや、わかってたんだけどさ。」

きっと現実にそうなる、いつかは向き合わなければならなくなることがあるのはわかってる。
でも、自分には遠い気がしていたからわからないふりをしてた。一生そんな日は来ないかもしれないって思いこませようとしてた。

なんだか今生きている現実が現実じゃないみたいでふわふわしてたけど、今こうなってみて初めて地に足がついたというか。
「事実は小説よりも奇なり」とよく言いますが、これは自分の数奇な人生と出会うための物語だったんだなあ、と改めて実感させてくれるシーンです。

で、末期ガンにかかった張本人である治はどうなっちゃうの?
その答えは、皆さんも是非劇場でお確かめください。
衝撃のラストシーンまでユーモアを忘れず、悲しいテーマを扱っているのに、なんだか軽やかな足取りで劇場を後にできる映画、なかなかないと思います。

笑って笑って、また笑って、人生って悪くないかもなと思わせてくれるモヒカンくんの奮闘は一見の価値ありです!



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2016/05/14 (Sat) 00:50

9日のことですが、映画「モヒカン故郷に帰る」を鑑賞しました。 売れないデスメタルバンドのボーカル 永吉は恋人の由佳が妊娠をきっかけに瀬戸内海に浮か、ぶ戸鼻島へ7年ぶりに帰郷 同じく故郷を出たはずの弟もいつの間にか帰郷しており 久々に一家が顔をそろえるが、宴...

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