グランドフィナーレ (Youth) ちょっとネタバレあり感想 過去は儚くて、遠い。

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オススメ度 ★★★★☆



あらすじ


80歳になり現役を退いたイギリス人作曲家フレッド(マイケル・ケイン)は、親友の映画監督ミック(ハーヴェイ・カイテル)と共にアルプスの高級ホテルで休暇を満喫していた。

休暇と言っても、ミックの方は自身の「遺言作」となる作品の脚本作りに没頭中。
若いスタッフたちと意見をすり合わせるうちに過去の思い出や経験が蘇ってきて...

一方フレッドの元には、エリザベス女王の使者という男が訪ねてくる。
彼はフィリップ殿下の誕生日を祝う会でフレッドの代表作である「シンプル・ソング」を聴きたいとご所望なのだと依頼してきた。

しかしフレッドにはその依頼を受ける気は全くなかった。
どうやら「シンプル・ソング」には、彼の人生において譲ることのできない特別な想いが詰まっているようなのだが...

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感想


人生で大きく後悔してることって、誰しも一つはあるんじゃないかと思います。
誰かに伝えなかった思いへの後悔、もしくは誰かに伝えてしまった思いに対しての後悔...それは人それぞれですよね。

そんな時、これも誰もが思うはず。
「時を戻せたら...」
だけど世界は残酷。時は戻ることなく進み続け、後悔している物事に対する思いばかりが大きくなっていくものじゃないですか?

過去の後悔が消せないなら、今できることってなんなのか?
それってやっぱり、これから新しい後悔を増やしていかないように、自分に素直に生きていくことだと思うんですよね。

...って言うのは全部、この「グランドフィナーレ」を観て学ばせていただいたことなんですけど。
アルプスの高原に建つ豪華なリゾートホテルを舞台に描かれる、後悔と許しと救いの物語は、今年公開されたどんな映画よりも優雅に、静かに、だけど燃えるように観客の心を焦がすヒューマンドラマ作品となっています。

主人公は、もうすぐ80歳を迎えようとしている2人のおじいさん。
現役を退いた有名作曲家フレッド(マイケル・ケイン)と、その親友の映画監督ミック(ハーヴェイ・カイテル)の2人は、一般庶民には一生行くことすら叶わないであろう超高級リゾートホテルに長期滞在中です。

誰もが夢見る優雅な休暇。
しかし実際のところ、ホテルに集まってくる人々にはそれぞれに複雑なバックグラウンドがあり、ホテルでの滞在に求めるものも様々です。

1人目の主人公・フレッドの目的は、作曲家を引退し、英気を養うための休暇。
娘のレナ(レイチェル・ワイズ)とともに、毎日マッサージを受けたりスパでリラックスしながら、ぼんやりと何もしない生活を送っていたのでした。

しかしそこに、彼の心の平安を脅かす人物がやってきます。それはイギリスはエリザベス女王の使いだという男性。
彼が言うには、何と女王直々の希望で、彼の代表曲である「シンプル・ソング」を女王のためのコンサートで演奏して欲しいのだとか。

女王のために特別なコンサートを行えるなんて、イギリス出身のフレッドにとってはこれ以上ない名誉なわけですよ。絶対引き受けるでしょ...と思うじゃないですか?

まさかまさか、フレッドは「私的な理由で」といって断ってしまうんです!
しかもそれに続けて、「君主制というのは危ういと思わないか。1人が欠けてしまったら、世界のすべてが変わってしまう。まるで、結婚生活のようだ」と口にします。

この時点で、彼が演奏をしたがらないのは、彼の結婚生活において、彼を苦しめる何らかの過去があることが示されていますね。

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もう1人の主人公・ミック(ハーヴェイ・カイテル)がホテルに滞在する理由は、彼の「遺言作」となる映画、「人生最後の日」を製作するため。

自分よりも何十歳も若いスタッフたちとともに、余命の少ない老人が人生の終わりを迎える時を描いた映画の脚本を書こうとする彼は、若い彼らの人生観、そして長年ともに映画を作ってきた女優のブレンダ(ジェーン・フォンダ...存在するだけで感動と驚きを呼べる女優ってすごくないですか?)からの痛烈な言葉によって自分の過去、そして現在と向き合うこととなります。

彼の言葉で一つ、強い印象が残ったものがあります。
若い女性スタッフが、望遠鏡を使って遠くにあるアルプスの山々を眺めている時に、ミックは「あの山はどう見える?」と尋ねます。
女性スタッフは当然、「とても近くに見える」と答えるのですが、それに対してミックは「それが若い時に見える未来だ」と言うんですね。

で、今度は「望遠鏡を逆にして見てみなさい」と言います。そうするとどうなると思います?
そう、全てが遠く見えるんです。
「それが過去だよ」

なるほど、過去というのはどんなに望んでも戻ってこなくて、すごく近くにあるようで、でもどんなに手を伸ばしても届かないほど遠くにあるものなんですね。

じゃあ過去に残してきた後悔や、一生引きずり続けなければいけない失敗にもう一度触れることができないのなら、私たちはどうやってその苦しさと向き合っていけばいいんでしょうか。

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その答えは、ホテルのそこかしこに隠れていました。

フレッドの娘のレナは、幸せな結婚生活を送っていたはずなのに、「浮気相手のほうがベッドで最高だから」という理由で夫だったミックの息子にフラれて新しい人生を探し始めたり、

人気俳優のジミー(ポール・ダノ)は、大ヒットしたスーパーヒーロー映画のロボット役としか人々に覚えられていない現状をなんとかしようと本気の役作りに望んでいたりと、

若い世代が「今」新しい何かを作り上げようともがく姿を対照的に映し出すことによって、大切なことはこれから新しい後悔を生み出さないためにどう生きていくかなんだ、ということを教えてくれるんです。

そんな彼らの姿を見たフレッドは、人生も終わりに近づいた今、何をするべきなのか?
彼の心は彼に一体何を命じるのか?
後悔と希望の間で揺れ動くフレッドの微妙な心情を繊細に演じきったマイケル・ケインの演技はこれ以上なく感動的で、歳は離れていても彼の経験や心の痛みに共感せずにはいられなくなります。

フレッドとミックは序盤から「今日はどれくらいの尿が出た?」という会話を、毎日飽きもせずに続けます。
昔と比べるとほぼ全くと言っていいほど出なくなった尿の量に、2人は自分の体におかしいところがあるんじゃないかと疑っていました。
しかし終盤、ホテル専属の医師から伝えられたのは驚きの事実。
フレッドは健康体そのもので、どこにも悪いところは見当たらないというのです。

「私はどこかが悪いんだと思っていたよ」というフレッドに対して、医師はこう告げます。
「このホテルの外の世界には、何があると思いますか?」
「『若さ (Youth)』ですよ」

自分の殻に閉じこもり、過去の後悔に無力さを感じているばかりでは決して気づけないもの。
思い切って外の世界に飛び出して初めて見えてくるもの。
それこそが「若さ」なんだというメッセージに気づいた時、思わず涙を流してしまいました。

この映画は美しいです。たぶん、今年公開された他のどんな映画よりも。
劇中でブレンダはミックに、「未来、いや、今はもうテレビの時代なのよ」「あんたのデタラメな映画なんかじゃなくてね」と言い放つのですが、そんなデタラメな世界がこんなにも素晴らしいなら、私自身だってデタラメな人間でもいいや。



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2016/05/16 (Mon) 22:33

18日のことですが、映画「グランドフィナーレ」を鑑賞しました。 80歳になり現役を退いたイギリス人作曲家フレッドは親友の映画監督ミックと共にアルプスの高級ホテルで休暇を満喫していた ある日 エリザベス女王の使者が彼を訪ね フレッドの代表作を女王のため演奏して...

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