世界から猫が消えたなら 極力ネタバレなし感想 ありがとう、君がいてくれて。

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オススメ度 ★★★



あらすじ


ごく平凡で平和な人生を過ごしてきた郵便配達員の「僕」(佐藤健)は、ある日突然、末期の脳腫瘍のため、もうすぐ死ぬ運命にあると宣告させれてしまう。

深い絶望に陥った彼が自宅に帰ると、そこには自分と同じ容姿を持つ謎の男性が。
悪魔(佐藤健)と名乗るその男性は、彼の命があと1日しか残されていないこと、そして彼の身の回りにある「いらないもの」を世界から消すことと引き換えに、彼の命を1日だけ延長できるということを告げる。

手始めに、悪魔は「世界から電話を消そう」と提案。
電話が世界から消えてしまう前に、「僕」は初恋の女性(宮崎あおい)に電話をかけて会うことになるのだが...

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感想


末期の重病人が、自分の大切なものと引き換えに命を長らえる...

ありがちなように見えて意外となかった不思議な世界観なのに、
売り文句には「泣ける」という、日本人が大好きなありがちすぎるワードを持ってきちゃった今作「世界から猫が消えたなら」は、

泣かせよう泣かせようと頑張りすぎな演出がところどころくどさを感じさせる部分もあるものの、
実力派な俳優陣の頑張りによってちゃんと泣くことのできる、人間の小さな営みに優しい目を向けた感動のヒューマンドラマとなっています。

主人公の「僕」(佐藤健)は、大学を卒業してから地元の街で郵便配達員をし、ペットの猫と一緒に慎ましく一人暮らしをする青年。

名前が設定されていないのは、観客の誰もが自分と置き換えて観ることができるようにでしょうか。
たしかに地元の街で慎ましく仕事に精を出して、昔の少ない友達とそれなりに不満のない日々を...ってリアリティのある設定ですもんね。

しかし、そんな「僕」の平和な日々は、突然終わりを迎えます。

いつものように自転車を走らせていた彼は、路上で突如意識を失い、倒れてしまいます。
病院に運ばれた彼に言い渡されたのは、彼が末期の脳腫瘍を持っており、もう長くは生きられないであろうという衝撃の事実。

深い絶望に沈んだ彼がとった行動は、錯乱して病院内で暴れまくったあげく、行き先もわからないまま逃走...
というのは彼の空想での話で、実際の彼は静かに「はぁ...」と頷くしかありませんでした。

このシーンから、読書や映画鑑賞が大好きだという彼は空想をしたり、過去の出来事に思いを馳せたりすることが好きな性格なんだということが伝わってきます。

だからこそ、避けることのできない不運に陥ってしまった彼に、これから描かれる不思議な出来事が起こったというわけで。

失意のままに帰宅した彼は、誰もいるはずのない家の中で何者かに声をかけられます。

驚いて振り返った彼の目に飛び込んできたのは、なんと自分と同じ顔をした青年。

なんとも軽く、どこか悪意に満ちた口調で「僕」に語りかけてくるその男性は、自分のことを「悪魔」と名乗ります。

混乱する「僕」を目の前に、悪魔はどこまでも軽い口調で「僕」が明日には死んでしまうのだというとんでもないことを口にします。

悪魔は立て続けに、絶望的な「僕」にも生き延びる方法が一つだけ残されていると告げます。

それは、この世界から「いらないもの」を一つ消す、とこと。
何か一つを消すたびに、「僕」は一日だけ生き長らえることができるのだ、という驚きすぎる契約を持ちかけてきたのです。

でも、消すものを選ぶのは「僕」ではなく悪魔の方。
だったら絶対いらないものを消してくれるわけなんてないじゃないですか!

そう、悪魔が消していくのは、「僕」の人生を支える思い出の根源となる、この世界に存在しないなんて考えることすらできないようなものばかりだったのです。

思い出の根源を消してしまったら、その物にまつわる思い出も全てなかったことになってしまう。
手始めに悪魔は、「僕」が大学時代の彼女(宮崎あおい)と知り合うきっかけとなった「電話」を消そうと提案してくるんですが...

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ここからの物語は、「僕」の過去と現在が入り混じって展開していきます。
元恋人と過ごした、楽しくて甘酸っぱくて、時に苦しかった時のこと。何年も前のことだというのに、どの思い出も鮮明に蘇ってくるんです。

どの演出も台詞回しも、原作の小説からそのまま引っ張ってきたんだろうなあ、という不自然さに溢れているし、
劇中はおセンチなピアノのBGMがずーっと流れっぱなしで、「お前ら、こういう曲でもかけとけば涙の一つも溢れるだろ?」とでも言いたげなクドさが拭えなく、
とにかくあの手この手で「泣けるでしょ?」っていう主張が強すぎて戸惑っちゃう時の方が多かったのはちょっと残念でした。

特に、「僕」と彼女が大学の卒業旅行?か何かでアルゼンチンに行ったあのへんのくだり、あんまり理解ができる内容ではなかったのに、「今、深くていいこと言ってるでしょ?」みたいな押し付けがましさが出まくっててきつかったですね。

だってなんですか、「いぎでや゛る゛ぅぅぅぅ!!」って。なんですか、「私がいなくなっても、世界は何も変わらぬ朝を迎えるのかなぁ」って。
こんなポエティックなセリフを現実の世界で吐かれたら、私、多分卒倒しちゃいますよ。あまりの痛々しさに。

セリフそのものの言葉遣いにしても、セリフごとの間の取り方にしても、頑張って詩的にしようとしているのが見えすぎて辛かったんだよなあ。小説は文字を読むからそれが違和感なく入ってくるのであって、映像にして人間に喋らせるのとはわけが違うんだってば。

確かに原作へのリスペクトは大事だと思うんですけど、それって原作のセリフをまるまんま写してきちゃうことではないのでは。
物語や原作のメッセージ性を別の媒体で伝えるために、多少の変更は必要なことだと思います。
...って、「ハンガー・ゲーム」のジョシュ・ハッチャーソンが言ってたよ。私も賛成です。

でも、じゃあそういうクドい演出のせいで興ざめしちゃうの、と言われたらそういうわけでもなく、
どんなにクールな目線で観ようと頑張っても、最後にはしっかり泣いちゃうんですよ。悔しいけど。
それは、今作を彩る最っ高のメインキャスト陣による素晴らしい演技のおかげというものでして。

しっかり者でありながら、感受性が高くて胸の内に感情が溢れかえってしまう元彼女を演じた宮崎あおい、
あっ、この人、古い映画が好きなんだろうなぁ、と一瞬でわかるオタクっぷり、でもその中にいやらしさを感じさせない「僕」の親友・ツタヤくんを演じた濱田岳
どんな時も「僕」のことを優しく支え続けてくれたお母さん(原田美枝子)

みんな悪意のない人たちばかりで、それぞれが違う方法で「僕」のことを思いやる姿がどうしてこんなにも感動的なんでしょう。
特に濱田岳の演技は素晴らしかったですね。ラストの彼の演技を観たら、どんなに冷めた目線で観ている人でも、目から塩水が溢れて止まらなくなるんじゃないですか?

そして極め付けは、おとなしくて、なんでも例え話にしないと説明できない「僕」と、作中唯一の悪意を持ったキャラクターとして描かれる「悪魔」の二役を完璧に演じ分けた佐藤健ですね。
「るろうに剣心」でも「バクマン。」でもそうだったんですが、彼はうまさ云々よりも、観ているこっちまで感情を揺さぶられるようなエモーショナルな演技をしますよね。

大切な人とのつながりをすべて失っても、命があれば「生きている」と言えるのか。
残酷な運命をだんだんと受け入れていく「僕」の微細な心の動きまでを捉えた演技は本当に素晴らしいです。

この映画、確かに物語の大筋には説明不足な部分も多いですし、演出もちょっと過剰かな、と思わされる部分も多いですが、
それを魅力的なキャスト陣の演技力という力技でしっかりと感動作に仕上げてしまったという珍しい例かもしれません。
特に佐藤健くんの演技を見るためだけでも、劇場に足を運ぶ価値はある...かもしれませんよ!



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Theme: 映画感想 - Genre: 映画

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