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駆込み女と駆出し男 感想

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オススメ度: ★★★★★

江戸時代,夫との離縁を望む女性たちが駆け込む寺があった。

その寺の名は東慶寺。政府公認の離縁寺となっているこの東慶寺で2年間の修行を積むことで,夫へ離縁状を書く義務を課すことができるシステムになっているのだ。

東慶寺の駆け込みには当然のごとく作法が存在し,まずはその御用宿で事情の聞き出し調査を終えてから正式に東慶寺への駆込みが成立する。

そんな御用宿へ居候することとなった見習い医師で駆け出し戯作者の信二郎(大泉洋)もまた離婚調停人の一人として,苦しみを乗り越えんとする女性たちの聞き取りにあたることとなる。

そんな折,江戸に名をはせる大商人の妾・お吟(満島ひかり)と,顔に大きな傷を持った田舎娘のじょご(戸田恵梨香)という,まるで正反対の性質を持った女性が駆け込んできて...

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私見では今年上映された邦画の中でも段違いで最も面白かったこの映画は,世の中に溢れかえっている毒にも薬にもならない生ぬるい映画たちに強烈な挑戦状を叩きつけています。

和の雰囲気を押し出した美麗な映像と洪水のようにハイスピードで流れてくるセリフは我々の脳内に大量の情報を溢れさせ,最初の5分でこの映画が凡百の作品とは一線を画すものだと感じさせてくれます。

このハイスピードに流れていく台詞回しはこの映画の最大の特徴の一つと言えますが,その歌うようなリズムの良さと詩的な言葉選びの巧みさのおかげで,できるだけ多くの情報量を詰め込もうとしただけの苦肉の策なんかだとは全く感じさせません。
むしろこのリズムの良さがエンターテインメント作品としての躍動感を高めていてグッド。2時間半という長い上映時間がほんの一瞬にすら感じられるのはこの圧倒的なテンポの良さが貢献しているということでまちがいないでしょう。
江戸時代という舞台設定を完璧に活かしきった台詞回しには素直に賞賛を送りたいです。

そして,夫の振る舞いによって苦しむ女性の姿とそれと対照的な男性の権力社会を描くことによって今も日本社会の根底で続く男尊女卑の精神に対する痛烈な批判を含ませながら,それをコメディチックな人情物語で包み込むことによって,素直に物語に入り込むことのできる脚本作りはまさに「温故知新」という言葉がぴったり。
そんな政治的メッセージを嫌味なく,古き良き日本の良さと現代的な映画作りのアプローチを吹き込んだ新世代の時代劇と昇華して見せたことは見事としか言いようがありません。

そんなハイレベルな脚本をうまく機能させるには俳優陣にも高いハードルが課せられるわけですが,今作に集結した実力派の俳優たちは,期待を軽々と超える最高の演技を見せてくれました。

特に主演陣。信二郎役の大泉洋は本人のキャラクターそのままな,情けないけれどどこか憎めないキャラクターを違和感なくコミカルに演じているし,
じょご役の戸田恵梨香はいつも通りの力演で,最初は自分に自信の持てなかったじょごが顔の傷の回復と一緒に心も強くなっていく様を説得力を持って描き出しています。

中でも今回最も度肝を抜かれたのは,大富豪の妾・お吟を演じた満島ひかりの存在。
彼女が何か一言を口にするたび,なぜかはわからない様々な感情が溢れ出してくる。お吟の喜びや痛みが伝わってくる。そんな演技ができる女優さんはそうそういません。
もし彼女が日本アカデミー賞を受賞,最低でもノミネートされなかったら日本アカデミー賞の選定者たちの目は節穴だときっぱり言いきっておきたいほど。感服致しました。

確かにこの物語にはほころびがあるし,登場人物たちそれぞれの行く末には我々観客が望む展開が待っていない時もあります。でもそれらを全て含めて,人生は「素敵」なんだということを教えてくれるこの映画は,2015年最も語りたくなる映画。

映画ファンならば見逃す手はない傑作です。

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Theme: 映画感想 - Genre: 映画

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