AMY エイミー 感想 名声の裏側で。

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オススメ度 ★★★★★



あらすじ


2003年にデビューアルバム"Frank"をリリースし、その特徴的な歌声と圧倒的なソングライティングで大成功を収めたシンガー、エイミー・ワインハウス

2ndアルバム"Back to Black"は前作以上の成功を収め、第50回グラミー賞では年間最優秀レコードをはじめ5部門で受賞するなど、彼女のキャリアは絶好調に見えた。

しかしその裏で、彼女は激しいアルコール・ドラッグ依存があることでも有名。
連日スキャンダラスなニュースで世間を騒がせる、いわゆる「お騒がせセレブ」の一人としても悪名高かった。

そして2011年、ドラッグとアルコールのオーバードースにより、27歳の若さでこの世を去る。
本作「AMY エイミー」は、天才と言われた彼女の真の姿に迫ったドキュメンタリー映画だ。

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感想


私の高校生活は、エイミー・ワインハウスの2ndアルバム "Back to Black"とともにありました。
いや、正確に言うと"Back to Black"以外にもTaylor Swiftの1st、2ndアルバムもそうなんですけど...ってああ、今はそんなんどうでもよくて!

あれは高校1年の終わり、US版iTunesのシングルチャートに"Rehab"という見慣れない曲が。
視聴ボタンをクリックしてみると、どこまでもスモーキーでハスキーな声の女性がレトロでアナログなR&B調のトラックに乗せて
自身のアルコール依存症をむしろ肯定しちゃうっていう激しい内容の歌を歌っているではありませんか。

一瞬で心のすべてを持って行かれてしまった私は、彼女の音楽を聴き漁りました。
それでわかったことは、彼女がイギリスから来たエイミー・ワインハウスというシンガーだということ、彼女が'60年代の音楽、ファッションに傾倒しているということ、そして、歌の中でも認めているように、彼女がかなりのジャンキーだということでした。

レコーディングは基本的に一発録りだという彼女の音楽には、歌詞の内容が生々しいほどパーソナルなこともあってかすっごく心を動かされちゃうんですよね。"Rehab"は別にして、他の楽曲は誰かを深く好きになった経験のある方ならば共感できてしまう、普通の女の子の話だったりして。

リリックから伝わってくる完成の鋭さとか表現の豊かさとは裏腹に、中身は意外なくらい普通の女の子っていうか。
「天才」というイメージとは裏腹の親しみやすさも彼女の音楽の魅力だと思うんです。

そんだけ彼女の音楽が好きだったのに、私の彼女に対するイメージって、「ヤク中」「奇行が目立つ人」くらいのものだったんですよ。

だって当時連日報じられてた彼女に関するニュースって、ほとんどが「ステージ上で泥酔して歌えない」とか「パパラッチに喧嘩を売る」とかひどいものばっかりで、ちっとも「人間としてのエイミー・ワインハウス」の魅力を知る機会に恵まれなくて。

そのまま彼女は2011年、ドラッグのオーバードースによって死去。
結局最後までドラッグへの依存を断ち切れなかったんだなあ...なんて残念に思っていたんですけれども。

彼女の死から4年(本国での公開は2015年なので)、ついに彼女の真の姿を知る機会がやってきてくれました。
それが彼女の人生を、今まで公開したことのなかったプライベートの映像などを使って製作されたドキュメンタリー映画
「Amy エイミー」
というわけです。

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映画を観るとわかりますが、彼女はよく笑う明るい人です。
友達といる時間を大切にし、冗談も言うけれど人のことをバカにしたりは全然しない。心の優しさも持ち合わせた人だということがわかります。

だけどとっても繊細で、自分が他人からどう見えているかに敏感だったよう。
多くのシーンで、「私とっても怖い顔に見える」「(その瞬間の)私ブサイクじゃない?」と近くにいる人に自分の見た目を確認したりなど、他人からの評価にとっても過敏な人だということが見て取れます。

そんな彼女、音楽を演奏している時は他の何をしている時よりも楽しそうなんです。
初期の彼女はステージ上でもしっかりと地に足をつけて、音楽に乗せてとびっきりの笑顔をプレゼントしてくれる素敵なシンガーでした。

あれ? 最終期の彼女って、いつも泥酔してハイで、っていうかまずからして歌おうとせずに帰りたそうで、まるでステージに出るのも苦痛な風にしか見えなかったんですけど...

そう、今作では、明るくて可愛らしい少女だったエイミーがどうしてあんなにボロボロになってしまったのか、という部分を描き、みんなの彼女への誤解を解こうという意味もあったんじゃないのかな、と思います。

2003年にリリースされた1stアルバム"Frank"は決してメインストリームな内容ではなく、本人の言う通りジャズ色が強く、そこにR&Bやヒップホップの味付けを施した新しいタイプの音楽でした。

彼女自身もこのアルバムが売れるなんて思っておらず、むしろ売れて「有名になってしまうことが怖い。もし名声なんて手に入れちゃったら、私はおかしくなっちゃう」と口にしていたくらいだったんです。

しかし"Frank"は彼女の予想に反して大ヒット。エイミーはすっかり有名人となってしまいます。
もとよりマリファナやアルコールが大好きだった彼女ですが、名声と向き合うことのプレッシャーからその消費量はさらに加速。
周囲の人間も彼女をサポートしようとするも、売れっ子の彼女は稼ぎ頭。彼女には働いてもらわねばなりません。

エイミー本人はただ、大好きな音楽を楽しみたいだけなのに...
本人の理想と周囲から重くのしかかる期待のギャップに、彼女はすっかり薬物依存状態に。手に負えない状態へと陥ってしまいます。

それに拍車をかけたのが、彼女のことを知っている人ならば多くの人がご存知でしょう。
彼女がそれから長年くっついて離れて...を繰り返すことになる恋人、ブレイク・フィールダー・シビルとの出会いですね。

この男がまたとんでもない男で、コカインにヘロインなど完全なるヤク中。劇中でも、エイミーにそれらのドラッグを教えたのは彼自身だと認めていますね。
精神的にもろく依存体質だったエイミーは彼に深くハマってしまい、「彼のやることは何でも私もやるの」と言って彼のやるドラッグは何でもやったし、ブレイクがリストカットをすればエイミーもする、みたいな、共依存の関係に陥っていたわけです。


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で、どうしようもなくなった彼女を周囲の人間は「誘拐」してリハビリに行かせようとしたわけです。
彼女本人は行きたがらなかったようなんですが、どう考えたってヤク中で情緒不安定なんて大丈夫なわけないじゃないですか?

だけど彼女の父・ミッチは、「エイミーは大丈夫だよ。そんなことより彼女はアルバムを作らなきゃいけないし、ツアーだってあるじゃないか。彼女は働けるよ」なんて、実の娘のことだというのに、まるで彼女のことを商売道具としてしか見ていないような口ぶりなんですよ。

彼女がおかしくなってしまったのには、最も愛情を求めていた相手が逆に自分を追い詰めている、っていう背景もあるはずです。絶対に。

...ってあれ? これって"Rehab"のリリックそのままじゃないですか?
"They tried to make me go to rehab but I said 'No, no, no (みんな私をリハビリに行かせようとしたけど、行きたくない)"
"I ain't got the time, and my daddy thinks I'm fine (そんな時間ないし、パパだって大丈夫だって思ってる)"
...っていう。

そう、この映画で彼女の人生を時系列で見ていくと、楽曲のリリックの一言一句がまさに彼女の人生で起こった事件について事細かに綴られていることが伝わってきて、いちファンとしては涙が溢れてきそうになります。

"Frank"以降の彼女の人生、つまりブレイクとの日々を綴った曲が大半を占める2ndアルバム"Back to Black"はさらなる大ヒット。
"Rehab"はアメリカ、いや世界最大の音楽賞であるグラミー賞における主要部門「最優秀レコード賞」を受賞するなど信じられないほどの大成功を収めます。

そこで登場するのがパパラッチです。
彼女が行くところすべてに付いてきてはフラッシュたきまくりで写真を撮り続ける。こんなん、よっぽどメンタルが強いか注目を浴びたい欲望が強い人でない限り、誰でもおかしくなっちゃいますよ。

ここからエイミーのドラッグ依存はさらにエスカレート。
それに伴って奇行も増え、インタビューでも焦点の定まらない目でよくわからないことを口走っていたりします。

いったいどうしてこうなってしまったのか。
エイミーはただ、大好きな音楽を大好きな人々と一緒に演奏して、そして何より、家族や友人からの愛情を得て、普通の幸せを求めただけだったのに...

少女時代には明るく楽しく、そして優しい人だったエイミーがおかしくなってしまう様子をシュガーコーティングせずに描き出しているので、観ていてかなり辛くなってしまう映画であることは間違いありません。

でもこれは、知っておかなければならない事実。
名声が、人の興味や好奇心が、一人の人間を食い殺してしまうこともあるということ。

誰よりも他人からの評価を気にして、誰よりも愛情を欲しがっていた寂しがり屋の彼女だからこそ避けられなかった悲劇。

天才で、でも誰より普通だったシンガー、エイミー・ワインハウスの生涯は、決して他人事ではないのかもしれません...





おまけ: 私のおすすめ エイミー・ワインハウス



せっかくなので、彼女の楽曲で一番有名な"Rehab"に加え、彼女の楽曲の中で私が好きな2曲をあげてみたいと思います。
どれも劇中で使われている曲ですので、皆さんもぜひ聴いてみてください!


Rehab



言わずと知れた代表曲。
リハビリに行きたくない! っていうリリックが当時話題を呼びましたが、この映画を見てからだと全く見方が変わった楽曲の一つです。



Tears Dry On Their Own



"Back to Black"収録曲。私はこの曲が一番大好きで、iTunesの再生回数だけで700回行ってました。

失恋から立ち直るっていう曲なんですが、おそらくブレイクに一度捨てられた時の心情を表した曲だと思います。
彼女の楽曲では、涙が「乾く」って表現が時たま出てくるんですけど、たぶん彼女は涙を拭いて強くなろうっていうよりも、涙が乾くまで流しっぱなしにしておくってことなんですね。繊細で情緒豊かな彼女らしいなあと。


Valerie



2006年にザ・ズートンズというインディーバンドが発表した楽曲のカバー。
マーク・ロンソンのアルバムとエイミーのアルバムそれぞれに別バージョンで収録されてますが、私はアップテンポなマーク・ロンソン版の方が好みです。

他の人の楽曲のはずなのになぜだろう。どう考えたってエイミーの人生を描いたようなリリックになっていて、彼女が歌うために書かれたような楽曲に聴こえてくるのが不思議です。

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Theme: 映画感想 - Genre: 映画

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