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レッドタートル ある島の物語 (La Tortue Rouge) ネタバレ注意感想 これからも、どうぞよろしくね。

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*注意! 物語をすべてネタバレしています。

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オススメ度 ★★★★



あらすじ


吹き荒れる嵐の中、一人の男が海に投げ出された。

命からがら陸地にたどり着いた男だったが、そこは名も知らぬ無人島だった。
いかだを作り、島から抜け出そうと試みる男だが、その度に不思議な力によっていかだを壊されてしまい、島から離れることができずにいた。

気力を失いかけていた男は、最後のチャンスと力を振り絞り、今までで一番大きないかだを作る。
しかしまたしても、いつもと同じ場所で船が何者かに襲われてしまう。

今度こそはその正体を掴んでやろうと船の外を見た男の前に現れたのは、一体の大きな赤いカメだった...

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感想


「商業的に失敗している=つまらない」という法則なんて成り立たないのです、と声を大にして言いたくなる映画ってないですか?

私にとってのそれは、スタジオジブリの新作とは思えないほど話題になっていない日仏合作映画「レッドタートル ある島の物語」のことだったんですが。

「セリフがない」という事実が客足を遠のかせている要因かもしれません。確かに。これはいつものように家族で観られるタイプの映画ではなく、どう考えても大人の観客を意識した映画なんだと思います。それも、すでに結婚をして、さらに子どもがいるような素敵なご夫婦に向けられているような。

だってこの作品、ダイナミックでファンタジックな大冒険ではなく、人間のささいな営みへの愛情に溢れたミニマムなヒューマンドラマだったんですもん。

物語の舞台は、人の住む世界からほぼ隔絶されてしまった無人島。
嵐の海から投げ出されてしまった一人の男が島にたどり着いたことから物語は動き始めます。

彼は絶望するのではなく、島に誰か人はいないか探したり、通りがかる船はないか探したりし、あとは島の中にどこか飲み水や食料を確保できるところがないかと島中を探索し始めます。

島の風景の、美しくもなんと寂しげなんでしょう。動物すらおらず、いるのは昆虫や小カニくらいのもの。モノクロで描かれた夜の世界は、まるで男の世界から色が消えてしまったかのようにも見えるんです。
小カニたちが初めて見る大きな生物に戸惑いながらも、少しずつ男と歩み寄って行く様子もコミカルに、とても可愛らしく描かれています。

誰も頼ることはできないと気づいた男は、森の木を使っていかだを作り、自らの力で島を脱出しようと試みます。
無事に海に出ることができ、脱出に成功。あとはどうやって人のいるところにたどり着くか...

と思っていたら、突然いかだは海の中から何者かの攻撃を受け、一気に破壊されてしまいます。
何か危険な生物がいるのか、と海に落ちた男が周りを見回しても、そこには船を壊せそうな大きな生き物はおろか、小魚一匹いません。

これは一体どういうことなんでしょう?

もっと大きないかだを作れば壊されることはないはず!
男は前回よりも大きないかだで再び島を出ます。

しかしまた、それも同じ場所でいかだは沈没させられてしまいます。けれど海の中には、何もいない...

苛立ちを覚えながらも、男は何度もいかだを作っては海に出て、そのたびに失敗させられてしまいます。
まるで、誰かが彼を島に引き止めているかのように。

精魂尽き果てボロボロになり、一度は生きることすら諦めかけた男。
これが最後だと残った力を振り絞り、今までで一番大きないかだを作って海へと出ます。
一緒に乗ってこようとした小カニたちにもお別れを言って、これが最後の挑戦だと思ったのですが...

またいつもの場所で、いかだは攻撃を受けてしまいます。それと同時に、近くを泳いでいた小魚たちは一斉に逃げ出していったのでした。
今度こそ失敗するわけにはいかない、敵の正体を突き止めて戦ってやると決意した男の前に現れたのは...

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それこそがタイトルにもなった、巨大な赤いカメ。

何か言いたいことがあるかのように男の前に姿を現したカメは、再び海へ潜っていかだを攻撃。
男の命をかけた努力の結晶は、彼の眼の前で音を立てて崩壊していったのでした。

ここまで、理不尽で苦しい展開が続きます。あまりの苦しみに一度全てを諦め、森の中に身を投げ出して虫に体を這わせる彼の姿を見ているのは本当に辛い。

それでも、一度諦めたって、人はもう一度立ち上がらなければならない時がどうしてもあるんですね。彼にとっての小カニたちのように、近くで見守ってくれて、自分を気遣ってくれる人は必ず近くにいるはずだから。

海へと落ちた男の元に、赤いカメが泳ぎ寄ってきます。
殺される、と目を閉じた男でしたが、カメは彼の顔を見つめた後、その場を去っていきます。彼を傷つけることが目的ではなかったのかな...

島に戻った男は、怒りを隠すことなく海へと叫び、そして絶望します。
あのカメがいる以上、自分はもう島から出ることはできないのだろうかという、やり場のない思いがあったことでしょう。

しかしそこに、またも不思議なことが。なんとあの赤いカメが島に上がってきたのです。

それを見た男は怒りを抑えきれず、無抵抗のカメを木の棒で思い切り殴った後、甲羅をひっくり返して動けない状態にしたまま放置してしまったのです。

けれど、カメはやっぱり海の生き物。日差しの強い南国で、水も与えられないまま放置されてしまったらどうなるか...簡単に想像がつくことです。

案の定、しばらくしてカメはピクリとも動かなくなってしまいます。それを見た男は自分のしてしまった罪に気付き、カメをなんとか助けようと山と砂浜を何往復もして水を汲んでくるなどの努力をしましたが、その甲斐も虚しく、カメはやはり動きません。

自分が殺してしまったと、自責の念に苛まれる男。
けれどそこで、思いもよらぬ奇跡が起こるのです。

突然カメの甲羅にヒビが入り、今までは間違いなくカメだったその生き物は、なんと突然、人間の女性へと姿を変えてしまったではありませんか!
しかも彼女はまだ死んではおらず、かろうじて息をしていました。

男は彼女のために草木で屋根を作り、日差しから守りながら時折水を飲ませたり。
罪の意識か、それとも初めて出逢えた人間への喜びからか、彼は献身的に女性の面倒を見ます。

ある日、島にも珍しく強い雨が降ります。
屋根でも防ぎきれないと思った男は、彼女のために森からもっと葉っぱなどを集めてこようとするんですが、戻ってくるとどうしたことでしょう。女の人が目を覚ましていたのでした。

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目を覚ました彼女とコミュニケーションを取ろうとするも、亀だった時の彼女を棒で殴ってしまったり、彼女を死の淵まで追い込んでしまったという罪の意識から、なかなか積極的に近づくことができません。

ある日、女性は自信が着けていた亀の甲羅を海へ返します。
それを見た男も、作りかけだったいかだを海へと流してしまうのです。

これはきっと、2人の覚悟の表れといえるのではないでしょうか。
だって、自分を邪魔していたカメがいなくなった時点で、男は逃げ出すことだってできたわけですよ。それでも逃げ出さずに彼女の看病を続けたっていうのは、心の中でどこか、彼女と生きていこうという決意を固めつつあったということなのではないかと思います。

それを象徴するのは、夜の浜辺で2人が貝を食べるシーンです。
海に囲まれたこの島で生きる術を知る女性が、男が今まで食べたことのなかった貝を剥いて渡してあげる時、男の脳裏には彼女を棒で殴ってしまった時のことがよぎります。

しかし女性はそれを察したかのように優しく、包み込むように男性の頬を触ります。
彼女はそれを受け入れた上で、男と暮らしていくことを選んだということが示されていますね。

やがて2人の間には1人の男の子が生まれ、2人の人生の中心は子どもの成長を見守る事へと移っていきます。
男は息子を守らなければと責任感を持つ中、息子は自ら島で生きる術や、父の知らないことを着々と学んでいきます。

物語冒頭、島にたどり着いたばかりだった男は谷間にある深い海へと落ちてしまうのですが、まだ幼い彼の息子も、全く同じ場所に落っこちてしまいます。

自分でも苦労したんだから、息子では絶対に出てこられないだろう。心配した男は自分も飛び込んで助けに行こうとするのですが、女性はそれを制止し、息子に潜って岩の間を抜け、自分で出てくるようにアドバイスします。
その結果、息子はいとも簡単に脱出成功。子どもというのは自分の知らないところで成長していくのだ、ということを示しているのではないでしょうか。

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月日は流れ、息子はすっかり青年になっていました。
そんなある日、平和だった島に大事件が起こります。島全体を飲み込んでしまうほどの大津波が起こったのです。

島に住む生き物、昆虫たちや、家族と仲良しだった小カニたちまで、すべての生き物が津波によってその命を奪われてしまいます。
その過程で、息子は両親とはぐれてしまいます。ここで気づくべきは、物語の視点が息子に移っているという点ですね。
いつの間にか島での主役は彼になってたんですよ。まだ両親だって老いたわけではないけれど、若い人にどんどん時代は移っていくということですね。

島の中で母親を見つけた息子は、小さい頃から一緒に過ごしてきたカメ達の導きによって、海の中へ父親を探しに行きます。
広大な海を自由に泳ぎ回る息子は、海の中に投げ出されていた父親を見つけ、島へと連れ帰ります。

彼はすでに父親を超えて、新しく自分の知らなかった世界を開拓していくべき存在になったということでしょうか。
事件を乗り越えた息子は、島を出て外の世界へと飛び出していくことを決意。両親はその様子を、寂しくも頼もしげに見守るのです。

そして物語は再び2人の世界へ。
彼ら以外には誰もいなくなった無人島で、夫婦はお互いの絆と愛を確かめ合いながら、少しずつ少しずつ老いていくのでした。

こんな暮らしがずっと続けばいい...そう思うものですが、人間の命には終わりがくるもの。
浜辺で2人寄り添いながら、男は命を落としてしまいます。

ここまで映画を観ていて私は思いました。
女性が最初は赤いカメとして登場する理由、あんまりなくなかったか、と。
もっとファンタジックで、異種間の交流を描いた物語になるんじゃないかと思ったら、普通のどこにでもいる夫婦の話だったんだから、こんな設定必要なくなかったか、と。

でも、その疑問は素敵すぎるラストシーンですべて晴れました。
男の死を見届けた女性は、再び赤いカメの姿に戻り、海へと戻って行ったのです。

カメは大きさによっては、人間よりもずっと長く生きるといいます。
周りの魚たちからも姿を見るだけで逃げられ、ずっと孤独に生きてきた赤いカメが男のいかだを座礁させていたのは、初めて見る人間への興味と、彼ならば自分を孤独から解放してくれると思ったからではないでしょうか。

自分は一人で生きられる、なんて強がりを言ってしまうことも、自分に言い聞かせてしまうことも多いけれど、人は誰だって寄り添える誰かを求めるものなんですね。私もこの映画を観るまで全然気づけなかったことです。

中でも他人同士が家族となって一生一緒に暮らしてく、夫婦の営みというのはこんなにも美しいものなんだなと。
2人の世界は大きいものではないし、毎日が大きな刺激に満ちたものではないかもしれません。
でも、小さな幸せを積み重ねていけることこそが、人生で最も大きな幸せなのかもしれないなあと、そんなことを教えてくれる、ミニマムだけど目の前に広がる世界はとっても広大で、壮大。

登場人物たちにセリフがなくて、顔も目が小さい点になってたりするのも、彼らの物語に自分の人生を投影しやすいための工夫なんだなあと。

この映画は大人の方々、とりわけ子どもを持つご夫婦が、もっと自分の近くにいるパートナーや家族を大切にしていきたいと、
子どもが独立してしまったご夫婦には、観終わって「これからもどうぞよろしくね」と笑顔で手を取りなくなるような、そんな素敵な映画です。



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Theme: 映画感想 - Genre: 映画

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2017/01/25 (Wed) 23:12

確かに去年既に、カンヌのある視点部門で入賞(特別賞) オランダ人監督が撮るフランス・ジブリ映画が、アカデミー賞候補に! 実はこの映画、セリフが全くない。 美しい熱帯の自然をシンプルに描いたアニメーションの世界に取り込まれる。 こうしているうちに、すっかり無人島に漂流する主人公と意識がシンクロし始める...

日々 是 変化ナリ ~ DAYS OF STRUGGLE ~ - http://blog.goo.ne.jp/onscreen/e/de485732c8fc16e9227feab4280915ab
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