グッドモーニングショー ネタバレ多め感想 それでも、働く理由がある。

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オススメ度 ★★★★



あらすじ


澄田真吾(中井貴一)は、長年続く朝のワイドショー「グッドモーニングショー」のメインキャスターだ。
今日もいつものように朝3時に目をさます。何も変わらない日が始めると、そう思っていた...

しかしこの日は、彼にとって最悪の日だった。
リビングへ出て行くと、妻の明美(吉田羊)とまだ学生の息子が不機嫌そうに座っている。
どうしたのかと聞くと、息子が付き合っている女の子に子どもができてしまったので、成り行きで結婚するしかないでしょ、というのだ。

そんないい加減な...その後出勤中には、勝手に付き合っていると思い込むアシスタントの小川圭子(長澤まさみ)から、生放送中に自分たちが交際していることを発表しようと思っている、と一方的に言われてしまう。

その上プロデューサーの石山聡(時任三郎)からは番組の打ち切りを宣告されたり、今日の占いはきっと最悪なんだろうな...

そして朝7時、「グッドモーニングショー」の本番が始める。

その時、テレビ局の近所、番組の開始を狙ったかのようなタイミングで大規模な立てこもり事件が発生する。

事件の犯人・西谷颯太(濱田岳)の要求は、なんと澄田だというのだが...

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感想


若者どころか年代問わず、日本人がテレビを見なくなったと言われて久しく。
中でも落ち目と言われているフジテレビ。ここ7〜8年くらいバラエティ番組もテレビドラマもほぼ全く見ない私にはなぜフジテレビだけやばいやばいと言われているのかいまいちわかっていないのが申し訳ないのですが、

今作「グッドモーニングショー」は、そんなフジテレビがテレビ作り、中でもワイドショーの製作裏を描いた作品です。

賛否両論(らしい)この映画ですが、私には「働く」ことへの理由や、今の自分の仕事へ疑問を持ちながら働いている人々へエールを送るような作品に映りました。
たしかに欠点はありつつも、間違いなく面白い作品に仕上がっているのではないかなあ、と。

澄田真吾(中井貴一)は、長年続く朝のワイドショー「グッドモーニングショー」のメインキャスター。
今日もいつもと同じく朝3時に目を覚まし、テレビ局へ通勤するところです。

眠い目をこすってリビングに出てみると、妻の明美さん(吉田羊)とまだ学生の息子が気まずそうに座ってます。朝3時に。

話を聞くと、息子が付き合ってる彼女に子どもができちゃったので、こうなりゃなりゆきで結婚するしかないでしょ、という息子に、「結婚なんてのは、もっと立派な仕事をしてからだな...」という澄田さん。
そしたら息子さん、何て返したと思います?

「お父さんの仕事ってそんな立派なの。朝からケーキ食ってはしゃいでるだけじゃん。」
って言うんですよ。学生さんにありがちですよね。「〜の仕事は楽そうだ」みたいな勘違い。でも、働きだしてからだって自分以外の仕事に対して偏見もっちゃったりすることもあるじゃないですか?

特に自分の息子から言われちゃったらショックは大きいってもんです。朝から息子のでき婚&自分の仕事をバカにされるというダブルショックを受けたまま、時間も迫っているしお仕事へ...

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でも、澄田さんの最悪な1日はまだ始まったばかりでした。

タクシーに乗って出勤中、突然電話が鳴り出したと思ったら、相手は「グッドモーニングショー」でアシスタントを務めている小川圭子(長澤まさみ)
用件は何かと思ったら、2人が付き合っているという事実を、「今日の生放送で発表しようと思ってるんです」なんて言い出すんです。はあ!?

思い込みの激しい彼女は、元カレに振られて落ち込んでいたところを澄田さんに食事に連れて行ってもらって元気付けられたことを、彼が自分のことを好きなんだと勘違いしているんですね。とんでもない女だけど、長澤まさみに好きになってもらえるならもっと勘違いしてください。

圭子ちゃんは作品の最初から最後まで大きな笑いを届けてくれるキャラクターで、ほとんどの場合においてスベり知らずです。
長澤まさみ、こんなコメディエンヌも演じられるようになったんですね。最近になってさらに演技の幅が広がって、ほんとにいい女優さんになりましたよね。

なんとか職場にたどり着くと、本番直前のスタジオは大混戦。
その日、本番直前に入ってきたニュースのどれを先に放送すべきか、どれが視聴者の興味を一番に惹くのか、超ハイスピードで無駄のない打ち合わせの現場や、演者の立ち位置の決め方、衣装さんが番組で取り扱う話題に合わせてメイク中にも着替えを無造作に、でもわかりやすい位置に置いていく様子までのディテールがとにかく細かい。

これは長年フジテレビを支えてきた君塚良一監督だからこそ出せた味なんでしょう。
インターネット上で「もっと他に報道すべきニュースがあるだろ」などと批判を呼ぶことも多い、芸能人の恋愛事情やら浮気の現場だのを一番にファーストプライオリティに持ってくる理由や過程なんかも、「こんなこと言っちゃっていいんですか!?」と思うくらいリアル。

意見をぶつけあわせて、時には強い口調で相手を攻撃するようなことも言ってしまえど、みんなの目的は一つ。視聴者に愛される番組を作ることです。バラバラなようでいて妙な一体感があるこの雰囲気、テレビ局だけでなく、どんな仕事をしている人でもすんなり入り込んで行けるのではないでしょうか。

しかし、スタッフの頑張りもむなしく今は古いワイドショーは受けない時代。
プロデューサーの石山聡(時任三郎)から告げられたのは、長年続いてきた「グッドモーニングショー」を打ち切りにして若いキャスターを起用した新番組を始めるという計画でした。
息子が結婚して子どもまで生まれちゃったら、しばらくは面倒も見なければいけなくて、もっとお金がいるというのに...とにかく踏んだり蹴ったりです。

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しかし、そんな時に大事件が発生。
テレビ局のすぐ近場で、大規模な立てこもり事件が発生したとのこと。しかも警察によれば、犯人の要求は澄田さんだったというんですね。

過去にやらかした失敗のせいで現場に出ることを恐れていた澄田さんですが、これでもし澄田さんが犯人と直接対峙しているところを撮ることができれば視聴率が伸びること間違いなし。
石山さんは、上司の判断まで無視して澄田さんを現場に向かわせようとします(結局向かうことになったのは別の理由からですが)。

石山さんのキャラがいいですよね。これまたリアルで。
長年の付き合いとはいえ、澄田さんのことを基本的に視聴率を取るための商品としか見ていないんですよ。
彼の身の危険なんて二の次で、現場に向かわせた澄田さんに現場の実況をさせ、「絶対にマイクを離すなよ」と言ったと思えば、怖がる澄田さんに「お前の武器は言葉だろうが」と上っ面だけの言葉を棒読みで吐いてみせる。

途中、別の人物からの言葉でもありましたが、「情報は商品になってないと意味がない」んですよね。
働く以上はとにかく人材だってみんなただの商品。与えられた目的に向かって、最大限の利益を生み出せるよう、自分の仕事をするだけ。監督のものすごく割り切った仕事観がとにかく冴えてます。

立てこもり事件の犯人に、警察と一緒に接触することとなった澄田さん。
身を案じる圭子ちゃんとは対照的に、もう一人のアシスタント・三木沙也ちゃん(志田未来)「死んだら社長賞です」と真顔で言うところなんてその集大成じゃないですか。

結局、働く以上は誰も彼もが一つの商品。会社という大きな組織に利益を生み出すために消費されるものだ...ってところまでを驚くほどそっけなく描いている前半は文句なく面白いと言えるでしょう。

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それだけに、後半から始まる立てこもり事件の失速具合はちょっと残念だったかな。

立てこもり犯・西谷颯太(濱田岳)の要求は、「テレビの前でくだらないことばっかり上から目線で話してゴメンなさい、ってみんなに謝って」という、どうしようもなく幼稚な理由。

番組に対して何の恨みがあってわざわざ澄田さんを...
その真相はなかなかに悲しいもので、ネタバレになるので多くは語れませんが、彼は長い間長時間労働やパワハラに苦しんできた人物。それが回り回って澄田さんに恨みを抱くに至ったというわけなんですが、

彼が猟銃やら爆弾なんていう恐ろしいほどの事件を起こすに至るには相当の苦しみがあって、それは少しおかしくすらなってしまうほどのものだ、ということは濱田岳くんの演技からもわかるのですが、
だったら彼の苦しみを、回想シーンでもいいからもっと深く描くべきだったよね、という感は否めないでしょうか。

だって彼の苦しみって、「毎日12時間休憩なしで働かされて、それもワンオペばっかりで、辞めたいって言ったら他の誰か連れて来いとか、どうせお前なんか他にできることなんてないだろとか、そんな毎日を送ってたら休日は寝ることしかできなくて...」って、まるでブラック企業の典型例を語っているかのような彼の言葉でしか表現されてないんですよね。だから彼がここまでになっちゃった理由やら経緯がイマイチ伝わってこなくて。

私はテレビを見ないと最初に言いましたが、フジテレビのキャッチフレーズが「楽しくなければテレビじゃない」というのは知っていますし、フジテレビに入社して番組を作れるのは有名で偏差値の高い大学を卒業した中でも限られたエリートたちだけだということは誰もが知っていることだと思います。

そういう超がつくほどのエリートたちが、それこそニュースなどで文面から入ってくるブラック企業の典型例だけを抽出して、実際にその目線を経験することなく上っ面だけで心配しているような、物知り顔の上から目線で描いている。そこにフジテレビが支持されなくなりつつある理由が見えるんじゃないかなあ、なんて勘ぐってしまう演出ではありました。

とはいえ、この事件をテレビの前で見つめる視聴者の姿、とりわけ澄田さんの家族である明美さんや息子さんまでが、まるで他人事のように、現実に起きている事件ではないかのように突き放した目線で画面を見ている姿までが生々しい。

これを視聴者批判だと捉える方もいるかもしれないんですが、私の目にはそれ以上に、「これがテレビというものならば、自分たちは今後どうやって戦っていくべきなのか?」と自問しているように思えました。

ラスト、石山さんは澄田さんに言います。
俺たちは視聴率に、視聴者に振り回されて、自分たちの作りたくないものを作らされてるのかもしれない。でも、それでも辞めない理由は何だ、と。

テレビ局も、他の仕事だって同じです。会社の定めた目的のために、私たちはやりたくないことばかりやってるかもしれません。本当はそれが正しくないと、頭の中ではわかっているのかもしれません。
それでも続けてく理由。働いてく理由。

それは、単なる商品ではなく、一人の人間として夢を持って働く私たちの心に中に残っている、「情熱」ってことなんじゃないですかね。



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