金メダル男 ネタバレあり感想 カッコわるい人生が、一等賞!

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オススメ度 ★★★★☆



あらすじ


時は1964年、東京オリンピックの開催に向けて沸き立つ日本。

長野県塩尻市に、秋田泉一(知念侑李/内村光良)という男が誕生。

ごく普通...というより、いじめられっ子な少年として育った彼は、小さい頃からずっと友達がいない。
そのままダメな一生を過ごすのかと思っていた彼に転機が訪れる。小学校の運動会で行われた徒競走で一等になったのだ。

その瞬間、周りのみんなは自分に拍手を送って褒め称えてくれる。一等賞って、なんて気持ちいいんだろう...

それをきっかけにさまざまな分野で一等賞を取ろうと決意する泉一。
書道、絵画、火起こし、大声コンテスト、マスのつかみ取りなど、大会やコンクールに片っ端から参加しては一等賞に輝木、中学校に上がる頃には「塩尻の金メダル男」として話題になっていた。

しかし、とある事件をきっかけに、それ以降は一等賞を取れない挫折の日々が続いてしまう。
果たして泉一は、再び「金メダル男」として返り咲くことができるのか...

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感想


「趣味がたくさんあって楽しそうだね〜」って言われるたび、自分が不幸だって事実を突きつけられてるように感じてたんですよ。

私が映画やら音楽やら旅行やらに没頭しちゃうのって、今自分が生きている世界にどこか満足できないけど、それを自らの力でガラッと変えていくような行動力も勇気もなく。

だけど外の世界から遮断された世界にいると、なんとなく自分は特別な何者かになったかのような気持ちがしたり...なんて哀れな思いを求めているから、っていうのも自分で自覚があるからなんですね。

でも趣味がないってことは、自分の周りにある大切なものに感謝して、今いる場所に満足できている、目の前にある幸せに気づく能力に長けている人ってことなんだと思ってたんです。それこそが人生で一番大切なことじゃないですか?

逆に私は、目の前にあるはずの幸せに気づけていない、自分でも正体がなんなのかもわからない漠然とした「何か」に、一生届くことのない手を伸ばしてるみたいで、その悲しい思いから逃れるためにまた映画や音楽に逃げる...って、自分は依存症か何かなのかなあ。ほんとダメ人間の典型のような奴だなあと思ってたんですよ。

でも、「ウッチャンナンチャン」のウッチャンこと内村光良さまが脚本・監督を手掛けた今作「金メダル男」を観て、ダメな自分に対するひねくれた卑屈な考え方は、ちょっとだけポジティブな方向へと向かうことができたような気がするんです。それくらい、観る者の心に強く訴えかける力を持った映画です。

主人公の秋田泉一(知念侑李/内村光良)は、長野県は塩尻の田舎町に生まれた平凡な男の子。

...いや、平凡よりはちょっとだけ悪かったかもしれないですね。
幼少の頃の彼は、近所の子たちとヒーローごっこをやれば必ず悪役にされ、殴る蹴るの暴力を振るわれるのは当たり前。いじめられっ子で、対等な立場で話すことのできる友だちがいませんでした。

そんな彼に転機が訪れたのは、小学校の運動会。
かけっこで一等賞を取った彼は、上級生の可愛いお姉さんから直接メダルをかけてもらったり、学童たちからも、そして両親からも拍手を貰うことができたのです。

今までいじめられっ子で自分に自信が持てなかった彼も、一等賞になったらみんなから褒め称えてもらえる。
その快感にとりつかれた彼は、それから様々な一等賞にチャレンジしていきます。

書道、絵画や工作などの王道なものに始まり、今度は火起こしの速さや魚のつかみ取り、大声大賞など意味不明なものまで、とにかく何でも一等賞を目指して奮闘します。
彼の努力は無駄なように見えて、あまりにも意味不明でなぜ存在しているのか疑問に思ってしまうようなコンテストの数々は、内村監督の単なるヒットアンドミスなギャグ、そんなコンテストでてるくらいならもっと意味ありげなものを頑張れよ、と思ってしまうこともあるかもしれません。

でも、そこにこそ内村監督が伝えたいメッセージが凝縮されていたとしたらどうします?

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中学校に上がった泉一は、今や「塩尻の金メダル男」と呼ばれるまでになっていました。
なんのスポーツでも芸術でも1位を取る彼はみんなからの憧れの的。隠れファンすらいるほどだったのです。

でも、そんな彼に初めての挫折が訪れます。
水泳部に入った彼は、自慢の50m無呼吸泳法で一等賞を取り続けていましたが、そんな折、彼の隣を美人の先輩が泳ぐ事に。

異性に慣れていなかった彼は、先輩の水着姿を見たいあまり、競技中に呼吸をしてしまいました。
それが原因で溺れてしまった彼は、久々に一等賞を逃してしまうのです。

それ以降は、異性が原因で挫折が続く毎日。
剣道部に入れば対戦相手の女子の顔を見たいがあまりに負けたりと、一等賞を逃し続けてしまいます。

「金メダル男」でなくなった彼に興味を抱く人は一気にいなくなり、もともと友達もいなかった彼はひとりぼっちになってしまうのです。異性だけじゃなく、同性にだって自分のことを理解してくれる人を見つけられなかったわけですね。

中学校時代が終わり、高校でもまだ友達もできず、勉強も部活もうまくいかずにいた彼に、またも転機が。
初めての友達ができたのです! 映画という共通の趣味を通して知り合った竹岡啓二(ささの友間)くんに誘われて入ったバスケ部では、仲間たちと楽しい時間を共有することの喜びを知りました。

しかし、泉一はバスケがうまくならなかった。今までずっと一人だったからか、団体競技が苦手だったんですね。そういえば今まで彼がやってきたかけっこ、水泳、剣道などは全部個人競技でしたね。

下手がゆえに、仲間だと思っていた同期たち、親友だと思っていた竹岡くんからさえ邪魔者扱いされてしまった彼は、失意のままに部活を去ります。

そうだ、みんなが自分を受け入れてくれないなら、自分のための部活を作ればいいじゃないか! と思い立った彼は、「表現部」という新たな部活を作り、周りから見たら意味のわからない独特の芸術を追求する部活を設立。
学校の中庭を舞台に、校内のみんなから頭がおかしい人だとからかわれながら自分の道を歩みます。

とにかくこの映画、泉一くんのことを周りの人がバカにするんですよ。学校の先生からは本気で精神病院への通院を勧められちゃったりしますし。

でも、そんなには負けず、自分のしたいこと、楽しいと思えることを追求していくことを、とっても力強く、優しく肯定しています。自分が夢中になっていることは、周りから見たら一見無駄に見えるけれど、その全てが実は自分の人生の糧になっているんだよ、ということを、これでもかというくらい必死に伝えようとしてきます。

それが顕著に表れているのが、大人になった泉一くんがひょんなきっかけからたどり着くことになる無人島のシーン。
無人島で助けが来るまで一人サバイバル生活を強いられてしまった泉一くんが、魚のつかみ取り、火起こし、大声コンテストなど子どもの頃にとってきた、私たちから見たらギャグシーンだと思っていた、なんで存在するのかも意味不明に見えてしまう大会での経験を生かすことで、彼の命は繋がれるんですね。

なんで彼が無人島に行くことになったのかとか、いろいろな展開が都合が良くて無理やりなパワープレイに見えてしまう部分も多いし、キャラ同士の会話が噛み合ってないなあと、地球上に存在しなさそうな会話の流れも幾つか見られたりするという欠点はありつつも、

とにかく映画の中にあるどのシーンも「自分が人生で成すこと全てに意味がある」というひとつのメッセージを伝えるために使おうという内村監督の熱い気持ちがビシバシと伝わってくることに好感を持たずにはいられないし、だからこそこっちも真剣に見なければと思わされてしまうんです。

お笑い芸人が監督をした作品の多くが、「どや! 俺は才能の塊だろ! お前ら凡人が理解できなくても、これが俺の芸術じゃ!」みたいな独りよがりの意味不明な作品が多いことに比べて、内村監督の今作は「このメッセージを伝えたい!」という真摯な想いのもとに作られているというところが本当に素晴らしい作品でした。

全てにおける「一等賞」を目指してきた男・秋田泉一くんも大人になり、40代になり、最終的には50代に突入し、果たして彼は自分の思い描く「金メダル男」になることができたのか? そのラストに、涙が止まらないっ! 映画を観た時の私は、思わず呼吸ができないくらいに泣いてしまって、上映終了後もしばらく席を立つことができないくらいでした。だって、たぶん顔全体が真っ赤だったと思うんですもん。

それくらい、観る者の心を力強く揺さぶってくれる、素晴らしい作品です。ああ、あのラスト、言いたい! ちょっとでもいいから、あの感動を伝えたいっ! 私が最初に述べてた、「趣味を持つことが云々〜」みたいな無駄話が意味してたところ、あのラストに凝縮されてたんですよ! うわ〜!!

ということで、予告編の下ではラストのネタバレ含むちょろっと感想を述べておきたいと思います。映画を観終わってからお読みいただければこれ幸い...





ラストのネタバレ含む感想


愛する奥さんや息子にも恵まれ、最終的にはカメラ屋さんでの仕事に落ち着いた泉一くん。
家庭を持った今は独身時代の、若かった頃のように無鉄砲に挑戦ばかりもしていられない。カメラ屋さんで働き始めた頃からハマっている写真を趣味にしつつも、家庭を支えるために、ちゃんとお仕事に励んで収入を得るため頑張っています。

もう一等賞を取ることへの執着にも折り合いをつけていた泉一くんでしたが、人生は何が起こるかわからないもの。
何と、泉一くんが撮っていた写真を奥さんが内緒で写真コンクールに応募していて、その写真が一等賞を撮ったのだというのです。

そこから個展を開くまでになった泉一くんでしたが、その一等賞を取ったのが...

これまでの長い人生、ずっと塩尻で過ごしてきた泉一くんの両親が、横断歩道を渡っている写真。

お父さん(平泉成)は自分探しのために家を不在にすることが多く、ベクトルは違えど様々なことに手を出してフラフラと自分の人生を模索してきたところは泉一くんに似ていると言えるのではないかと思います。

そんなお父さんと、がむしゃらに一等賞を取ることに夢中になっていた泉一くんの2人を塩尻の地で優しく見守ってきたお母さんが交通事故に遭い、歳もとって体も弱ってきた頃、今までずっと家を不在にしてきたお父さんが、お母さんを守るために車に「止まってくれ」とサインを出して守っている姿を捉えた写真の、なんと神々しいことでしょう。

人生いろいろ、「自分は何者になれるのか」「人生に意味はあるのか」を証明するためにいろんなことに挑戦したり、あるいは現実の世界と折り合いをつけて、趣味に没頭して自分の世界で一等賞を取ろうと頑張ったり。

そのほとんどは、周りから見たらなんの意味もなさないことです。自分一人の行動が、世界に影響を与えることもないかもしれません。

だけど、そんな自分のことを理解して受け入れてくれる人は、きっとこの世界のどこかにいる。その人との小さな世界を守っていくことは、世界中の誰もから拍手を貰うような偉業を達成することと、同じくらい素晴らしいことなんだって、泉一くんが気づいたことを証明するような写真だった。だからこそ多くの人からこの写真は愛されたんだと思うんです。

そんな日々の営みの美しさに気づけた、そんなあなたに一等賞。

ああ、何度思い出しても泣けます。このラスト。

でも、泉一くんの挑戦は続きます。50代になった今でも、2020年の東京オリンピック、ゴルフで出場を目指して努力を続ける彼の姿が映し出されます。

なぜ今でも一等賞を目指し続けるのか?
だって、彼には...
いやいや、さすがにこれは言いませんよ! だってラストもラスト、予測できないほどの感動を与えてくれるシーンですから!

完璧じゃない、挫折もあって、一見無駄に見えることもある。でも、だからこそ美しい人生。

この映画もきっと同じです。演出だってセリフまわしだって、決して完璧じゃない。でも、それももはやすべてがラストへの伏線だったんじゃないか。そんなことまで考えさせられてしまう、とっても素敵な映画です!

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Theme: 映画感想 - Genre: 映画

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