聖の青春 ネタバレあまりなし感想 人生は、いつでも輝ける。

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オススメ度 ★★★★



あらすじ


幼少期から「ネフローゼ症候群」という、腎臓の難病を患う村山聖(松山ケンイチ)

彼は、幼少の頃、入院中に将棋と出会い、大阪に生まれ育った彼は、今も道端突然倒れるなど病気に悩まされながらも師匠である森信雄(リリー・フランキー)や弟弟子の江川貢(染谷将太)に支えられながら、名人になる夢に向かって将棋を指し続けている。

しかしその頃、東京では自分と同年代の羽生善治(東出昌大)が名人となり、連戦連勝の負けなしという噂を耳にしたことをきっかけに上京を決め、羽生さんの近くで将棋を打つことを心に誓う。

しかしその間も、病気は彼の体を蝕み続けていた...

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感想


「青春」っていうのは、長い人生のほんのわずかな期間だけ訪れるものだと思います。

最近公開された、大学生の多くが経験する「就活」というイベントを描いた映画「何者」の宣伝では、大学を卒業して企業に勤め始めることを区切りとして「青春が終わる。人生が始まる。」なんて言ってたりもしましたが、

それは例えば、10代中盤から後半にかけて、のように年齢で区切るべきものなのか、
それとも何かに夢中になったり、ロマンチックな恋に憧れたり、とにかく人生で一番熱く燃えることのできた時期ならば、年齢なんて関係なくやってくるものなのか。自分の青春は、いつ終わったんだろうなんて考えてしまうこともあります。

それに一つの答えを提示してくれるのが、天才と称されながら、若干29歳でこの世を去ってしまった棋士・村山聖さんの生涯を描いたバイオグラフィーを映像化した今作「聖の青春」です。

幼少の頃に「ネフローゼ症候群」という、腎臓の難病にかかってしまった村山さんは、定期的に医師にかかって薬を飲んだり、食生活にも気をつけていかなければならないはず。

だけども彼の食生活を覗いてみれば、食べているものはカップラーメンに牛丼、カツ丼など、とにかく体に悪そうなものばかり。部屋は散らかり放題で、棋士として7段に上がった自分のための祝賀会まで開いてもらっておきながら、遅刻なんてお構いなしに、散らかり放題な部屋で「イタズラなKISS」という少女漫画に熱中していたりととにかくマイペース。

「牛丼は吉野家で、カツ丼はあの店で〜...全部決まってるんだから」などとこだわりが強い性格だったことが見て取れる村山棋士。病院に行かずにいたのも納得です。

彼は、自分のやりたいことや好きなことだけを、自分の好きな時にやりたくて、それ以外のノイズは極力自分の人生から排除して、好きなことだけに人生を捧げたいという信念を持って生きていた人だったんですね。そのノイズというのがたとえ、自分の生死に直接関わることだったとしても。

そんな村山さんは、何につけても負けず嫌いな性格。将棋はもちろん、大好きな麻雀、お酒まで、とにかく誰よりも強くなって、先輩の前だって飲んで飲んで飲みまくり、ふらふらになって吐くまで酔っ払ったら、先輩どころか師匠にまで「強気」の域を超えた暴言まで吐いちゃったりするくらいです。

「師匠はいいよなあ、気楽に将棋指してるだけで金貰えるんだから」なんて、普通の人間だったらいくら酔っ払ってたって言えないことまで容赦なく言ってしまえるのは、今自分がやっていることにそれほどまでの自信とプライドを持っているということの表れ。

将棋のことを愛する気持ちだって、きっと誰にも負けないという絶対的な自信があったはずなんです。

村山さんを演じるにあたって、体重を20キロも増量して撮影に臨んだという松山ケンイチは、まさにその気迫が画面いっぱいに満ち満ちているような迫力の演技を見せてくれています。

少しモゴモゴしていて、自分のしたい話だけをダダッと早口気味で話してしまう口調からはオタク気質にも似たこだわりの強さを、

密かに想いを寄せる地元の古本屋の女性との会話では目を合わせることができなかったり、
初めて行った将棋会館では、自分からは声を変えられないけど、誰かからは話しかけてよと言わんばかりにチラッと見せる目線の可愛らしさには、実は誰よりも他人からの愛情を求めていた寂しがり屋な一面が見えたりと、

村山さんの微妙な心の動きまでを、セリフだけでなく表情、体の動きからも完璧に表現していたところはさすがの貫禄を感じさせられました。

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そんな彼の人生に、まるで彗星の如く現れ、彼の将棋人生を変えることになる人物がいます。

将棋のことはどの駒がどういう風に動けるかだけはかろうじて知っている、というレベルの、私のような将棋ど素人でもその名を知る天才棋士・羽生善治(東出昌大)名人です。

村山棋士と同年代ながら、早くも名人となり連戦連勝の羽生名人。
彼の存在を知った村山さんは、「羽生さんの近くで将棋を指さないと」という思いに駆られ、すぐに東京への移住を決めてしまいます。

そして東京の将棋会館で、初めて羽生名人と相対した村山さんですが、見事に敗北。
大阪では負け無しだった彼ですが、羽生さんの圧倒的な強さを知り、彼に勝つためにもっともっと将棋を指したいという気持ちが強まる結果となったのでした。

ここから、村山さんと羽生名人のライバル関係は始まった...というよりも、初めはきっと、村山さんから一方的にライバル視し始めたということなんだと思います。それはもう、まるで恋に落ちるみたいに。

さらに将棋に没頭する村山さん。羽生名人との対決は何度も、何度も行われます。
時には羽生名人が勝ち、そして時には村山さんが勝ち。

彼らが将棋をさすシーンでは、彼らが具体的にどんな作戦を使って、どのタイミングでどんな駒が相手を追い詰めたのかなどの詳細は描かれません。

その代わり、彼らの対局のを表現するため取られた方法は、盤面を挟んで次にどんな手を繰り出すか必死に考える、彼らの表情をクロースアップすること。
汗をかいて、体を揺らして、時には顔を歪ませながら目の前の一手に命を懸ける彼ら2人が放つオーラから、将棋のことは何もわからずとも、その勝負がどれほど熱いものなのかということが伝わってくるんです。

羽生名人を演じる東出昌大さんが、将棋を知らない私ですら判別できるほどそっくりな見た目になっていることも、物語に真実味を与えてくれました。羽生名人って、あんなに顔を歪ませながら将棋を打つんですね。でもそれも、あんなに切迫した勝負の世界に生きる人ならば納得です。

しかし、自分の大好きな将棋、麻雀、お酒にのめり込んでいくうち、だんだんと村山さんの体は限界へと近づいていきます。今すぐ手術をしないともう手遅れになり、手術をしてもここまで進行してしまったら、腎臓を摘出しても数年以内には再発してしまう可能性もあり得るという状況に陥ってしまう村山さん。

それでも最初は、「麻酔をしたら脳が鈍って将棋が弱くなってしまう。麻酔をしないなら手術を受けてもいいです」などと、こんな状況になっても将棋で勝つために取れる最良の手段のことだけを考えているのです。

羽生名人と村山さん、何度目かの対局において、今回は接戦の末に村山さんが勝利。

その後、2人で近所の居酒屋に飲みに行った時、村山さんは羽生さんに問いかけます。
「羽生さん、僕たちはなんで将棋を選んだんでしょうか。」

それに対する羽生さんの答えは、この映画のテーマを総括してくれるものでした。
「さあ... ただ、私は今日あなたに負けて、死にたいほど悔しい。」

今やっていることが自分にとってどんな意味があるのか、なんでこれでないといけないのか、時に迷うことは、村山さんのように幼少の頃から一つのことに身を捧げている人でなくとも、誰にでもあると思います。

けれどそれ以上に、今目の前に立ちふさがる壁を乗り越えていきたい。そのために自分が何をすべきなのか。そのことだけに、自分の頭の全てを持って行かれてしまいたい。

少女漫画のような恋に憧れ、命をかけてでも夢中になれる何かを、最高のライバルとともに追いかけ続ける。
青春は年齢じゃない。何かに熱くなれる、その気持ちさえあれば、人生はいつだって最高に輝く。

人生そのものが、まさに「青春」を体現しているかのようだった村山聖さんの人生は、他の誰よりも熱いものだったに違いありません。





蛇足:

村山さんの師匠を演じたリリー・フランキーさん、最近は狂気に満ちた恐ろしい役ばかりやってらっしゃったので、今作でのとにかく優しくお人好しな役柄は果たして本性なのか、ついつい疑っちゃったりしましたよね。

弟子の村山さんに暴言を吐かれ続けても、隣で笑顔で「うん、うん」と頷いていた彼の姿を見て、「もうそろそろ包丁の一本でも持ってくるぞ〜!! もうやめてぇ〜!!!」と思わず耳を塞いでしまったのは私だけでしょうか。きっと疲れてるんですね。うん。



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