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オール・アイズ・オン・ミー (All Eyez On Me) ネタバレあり感想

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オススメ度 ★★★



あらすじ


1996年、銃撃事件によって亡くなった伝説のラッパー・2PACの生涯を描いた作品。

1971年、マンハッタンのハーレム地区に生まれたトゥパック・シャクール(ディミートリアス・シップ・Jr)は、黒人解放運動の主力メンバーである両親の元に生まれた。

そのためもあり、黒人が白人警官によって不当な扱いを受け続ける様子を少年時代より見続けてきたのだ。

警察から常に目をつけられていたが故に幼少の頃から引越しを余儀無くされることも多く、マンハッタンからボルチモア、そしてカリフォルニアへと移動を繰り返したトゥパック。

中でもカリフォルニアのストリートで暮らした日々は彼に大きな影響を与え、そこで収入を得るために始めたラップで才能を開花させ、一気にスターダムへとのし上がった。

その圧倒的なカリスマ性でラッパーのみならず俳優としても活躍する彼だったが、その人生には様々な困難もつきまとうのだった...

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感想


伝説のラッパー・2PACについては、洋楽に詳しくなくとも名前だけは聞いたことがある、という人も多いのではないでしょうか。

私自身も、2PACが銃殺された年にはまだ5歳。中学生くらいになって音楽を聴き始めてからようやく彼のことを知った、という素人なので、リアルタイムで彼の音楽を聴いていたわけではありません。
しかしそれでも、音楽を聴き漁り始めると必ずその名にぶち当たるという意味で、彼の影響力は圧倒的だったのだなあと改めて思います。

彼の音楽は、本人がシェイクスピアを愛していたということに起因しているのか、なんとも詩的なリリックが印象的で、彼の壮絶な人生や黒人として生きることで受けてきたこの世の理不尽を赤裸々に綴り、当時の世界に多大な影響を与えたようです。

そんな彼の壮絶な人生を描いた伝記映画として、長〜い交渉期間をかけてようやく実現したのがこの「オール・アイズ・オン・ミー」なのですが...

なんだろう。これで良かったんですかね?

物語は2PACの幼少時代からスタート。黒人解放運動のメンバーとして中心的な活躍をしていた両親のもとに生まれた彼は、警察から理不尽に追われる両親の姿、そして街中でも理不尽な暴力を受ける同胞の姿を目にして育ってきました。
両親が警察に追われる身であったため、引越しも数多く経験していたようです。

そして学生となった彼は、ボルチモアで芸術学校に通い、演劇を学びました。
この頃から詩を書くのが大好きで、カリフォルニアへ引っ越すこととなった際には、最愛の友人に自作のポエムを送ったり。実にしっかりしており、真面目で家族、友人思いな彼の姿が描かれています。

しかし、新天地であるカリフォルニア、黒人の居住地域での生活は、彼の想像を絶するものでした。
彼が新居に到着したと同時に、彼の目の前で人が殺される、暴力や麻薬が蔓延る場所。でも、そうしなければ生きていくこともままならない世界なのでした。

そんな中、お金を稼ぐ手段としてラップを選んだ彼。ボルチモアにいた頃から、「MCニューヨーク」という名前で活動をしていたのですが、レコーディングを始めたのは1987年。
最初はDigital Undergroundというグループのバックとしてデビュー、その後に才能を認められ、無事にソロデビューを果たすのでした...

というまでの流れが、非常に淡々と描かれます。2PACの出自をさらっとなぞり、かつ彼の人柄を知るにはぴったりだと思います。

しかし、問題は後半の物語です。

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ラッパーとなり名声を手に入れた2PACは、最初こそ「俺がみんなを導きたい」と志高く活動していたものの、だんだんとホテルに女性を呼んでパーティに明け暮れたり、
言動も周囲の、もはやギャングなレコーディングスタジオの人々の影響を受けてかだんだんと粗暴になっていきます。

その結果、単なるケンカのみならず、街中で警官を撃って逃げるなど、法に触れるレベルの暴力事件を多く起こすように。

この映画はもともと、獄中でのインタビューに対して彼が独白のように自らの過去を思い返し語っている、という体で進んでいくのですが、なんだかインタビュアーさんの2PACへの見方がなかなかに偏っていて、そのせいで劇中での彼の姿も結構偏った人物として描かれてしまっていたように見えたんですよね。

いや、確かに偏った人物ではあると思うんですが、そうではなく、彼の本来持つ繊細でアーティスティックな内面とか、有名な楽曲が生まれた裏側にあるエピソードとか、そういうのこそが伝記映画に求めるものなのではないでしょうか。

この映画、何が問題かって、彼のことを知らない人でもWikipediaやら他のラッパーによるインタビューなどを読めば文章だけで概要がわかってしまう、彼が直面した法的な問題や犯罪歴を断片的に描きすぎて、彼の本当の人間性にはあまり迫れていなかったような気がするんですよね。

クライマックスとなるのであろう、ステージ上で輝く彼の姿も、正直入れ込むタイミングが急すぎて、長い長い道のりを乗り越えて...って感じがなかったですね。

先ほども書きましたが、やっぱりインタビュアーさんの2PACへの見方が批判的すぎたのってどうも不思議だったんですよね。伝記映画のある種進行役とも言える人が、「刑務所での生活を乗り越えて反省したかと思えば、その直後に出したヒットが"I Get Around"(パーティソングです)なのか!」と怒ったりとか。



いやいや、アルバム全部聴いた? みたいな。同じアルバムからの1stシングル"Holler If Ya Hear Me"なんて、ストリートの現実を聴く人に突きつけつつ同胞たちにエールを送る、涙なしには聴けない名曲じゃないですか。



映画の中の2PACはかなり自己中心的で周りに流されやすい人のように描かれていて、どうにも感情移入しづらい人物になっちゃってるんですよね。

逮捕歴も多い人なので、そりゃあ綺麗なことばかり描いたらむしろ不自然にもなるかもしれませんが、だけど、もっと彼の仲間思いな姿だったり、楽曲をどんな思いで製作していたのかとか、そういった心の機微の方に視線を向けて欲しかったな、というのが残念です。そんなはずはないと百も承知の上で、映画を観た後に「監督さん、実は2PACのこと嫌いだったんじゃない?」なんて思いまで出てきてしまったくらい。

それでも主演のディミートリアス・シップ・Jrは見た目がすごく似ていただけではなく、2PACの持つ熱さや強い信念と、その裏にある繊細さを見事に演じきっていました。そのおかげで最後まで飽きずに観られたという点が大きいです。

今作は2PACというミュージシャンはどういう経歴がある人なのか、という略歴をなぞりたいだけならばアリかもしれませんが、比べるのもなんですが、
2PACより少し前の時代に活躍していたグループN.W.A.を描いた伝記映画「ストレイト・アウタ・コンプトン」並みにディープでドープな映画を期待していると肩透かしを食らうかもしれませんね。




おまけ: UC的オススメの2PACソング



せっかくなので、私が思う...というか、2PACの中でも有名な曲を2曲ほどピックアップしてみました。もしこの映画を観て2PACの曲に興味を持ったら、ヒット曲から入ってみるのがいいかなと思ったもので。

彼の曲は強烈かつ詩的なリリックに目(耳)が行きがちですが、実はトラックもアグレッシブかつ意外なくらいに耳馴染みが良くて聴きやすいものが多いです。

California Love (feat. Dr. Dre)





この映画のタイトルにもなったアルバム"All Eyez On Me"からの1stシングル。2PAC最大のヒット曲でもあります。
わかりやすいパーティソング。この頃は東とのヒップホップ抗争真っ只中だったのだと思うので、東への当てつけ的な意味もあったのではないでしょうか。


Dear Mama





3rdアルバム"Me Against the World"からの1stシングル。劇中でも登場していた楽曲ですね。
辛い環境の中でドラッグ中毒になりながらも自分を育ててくれた母親への愛を表したリリックが感動的。"And even as a crack fiend, Mama/You always was a black queen, Mama"なんて最高すぎるラインですね。

Only God Can Judge Me (feat. Rappin' 4-Tay)





シングル曲ではありませんが、映画のエンディングテーマに使われていたので。
彼の人生を象徴しているようなリリックがとても印象的な楽曲ですよね。トラックもかっこよくてキャッチーだし、シングルになっていてもおかしくなかったような。エンディング曲のチョイスは最高だと感じました。
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Theme: 映画感想 - Genre: 映画

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