EarSonics EM32 レビュー

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EM32.jpg

フランスのカスタムIEMメーカー,EarSonicsのフラッグシップモデル

EM32

のレビューです。

私の中では1964earsのA10と並んでお気に入りの機種です。そのためいつもよりテンション高めかもしれませんのでご容赦を。


※注意!
このレビューを行った際,ケーブルはEarSonics純正のものではなく,JH Audioの純正ケーブルとBeat AudioのSignalの2種類のケーブルを使用しています(理由は後ほど...)
そのため純正ケーブルを使用した場合とでは評価が大きく異なりますことをご留意ください。


シェル:

シェルの綺麗さはそこそこ。透明感はありますが,磨き跡がちょっと気になる部分も所々見られます。不満が出るほどではありませんが。

造形は全体的にスリムで,カナルはかなり細め。ですがカナル手前の部分でしっかりと密閉されているので遮音性には問題ありません。

EM32 Shell

半透明のブラックをチョイスしましたが,それでも中のドライバはわりとはっきり見えます。
高域は形と音からED29689かと。中域/低域はCI22955という型番がクッキリ。

EM32 Shell2

見づらいとかいうレベルでなく写真だと全くわかりませんが,ヘリクス部分には謎の黒い物体が鎮座しています。FitEarの萌音17のヘリクスにある噛んだ後のガムみたいなアレに似た感じ? 音に及ぼしている影響は不明ですが。


ケーブルについて:

このEM32を聴いていて思うのは,とにかく基本性能が高い機種である,ということです...ある一点を除いては。

それは,付属してくるEarSonicsの純正ケーブル。
購入して3日間は本当に何の冗談かと,自分はなんて地雷をつかまされてしまったんだろうと絶望したものでした。
ふにゃふにゃで締まりのない,柔らかいの次元を超えた弱々しい質感。左右からバラバラのタイミングで鳴っているかのような統一感のない変な音場など,これ以上聴いていたら頭がおかしくなる...と,藁をも掴む思いでケーブルをJH Audioの純正に変えてみたところ,状況は一転。

今まで聴くに堪えなかった音に突然締まりが出て,音場は自然なものになり,まるで別のイヤホンを聴いているかのような感覚に襲われました。

これは一体どういうことかとEarSonics純正ケーブルを手持ちのカスタムいくつかに挿して聴いてみたところ,そのどれもがそれまでのEM32と同じように変な音になってしまったのです。
そこで気づきました。「EarSonicsの純正ケーブルは劣悪な低品質ケーブルである」ということに。

それ以来二度と純正ケーブルを使っていません。なので今後EM32を買う予定の方は,最初純正ケーブルで聴いて絶望してEM32そのものをダメIEM認定してしまう前に,なんでもいいから別のケーブルに取り替えて聴いてみてあげてください。そうすればきっと評価は一転するはずでしょうから。

そのため,上述の通りこのレビューでは純正ケーブルではなく他メーカーのケーブルを使用しています。
まあ,もしかしたら私のケーブルが壊れていただけかもしれないのでなんとも言えないんですけどね...


音:

全体のバランス:

音量バランスは低域>高域≧中域の,低域寄りドンシャリサウンド。トーンは少し明るめ。エッジのきつい音ではなくむしろ輪郭は丸めですが,少々派手めに音が出るのででポップスにはかなり向いていると思います。
おおよそは公式サイトに記載のグラフ通りのような気がしますが,低域と高域の量だけは明らかに逆でしょう。

とにかくサブローの量感が多くインパクト抜群の低域が押し寄せてくるので,パッと聴きだととんでもない低音番長だと思われがちな気がしますが,慣れてくると他の帯域もしっかり負けずに鳴っていることがわかってきます。

この機種の特徴として挙げられるのはこの低域と,そしてずば抜けた解像度の高さ。
「解像度」というのは人によって解釈が違う曖昧な表現なのであまり好きではないのですが,このEM32に関してだけは自信を持って「解像度が高い」と言いたいです。

とにかく全体域に渡って粒立ちがよく,なおかつ瑞々しい。多ドライバのように音の密度を濃くして隙間隙間を埋めたような粒立ちの良さではなく,とにかく一つ一つの音をリアルに,そして表現力豊かに鳴らしてくれます。

音場は平面的というよりも立体的に広い感じ。奥行きはかなりのもの。低域の量感や,中〜高域の立体感ある鳴らし方によるものかと。


高域:

高域はレンジが広くよく伸びます。高域の伸びの良さで評判のいいUERMにも匹敵するレベル。
ローハイから超高域まで目立ったピークがなく,スーッと伸びていく感じです。
しかしEDらしいクールさも持ち合わせており,金物の鳴りは聞いていて気持ちがよく,明るいトーンに貢献しています。

とにかく粒立ちの良さが尋常ではなく,むやみに音圧をあげるのではなくて必要最低限の厚みでスッキリとしたこの鳴らし方は,デュアルでは絶対に実現できない良さだと思います。


中域:

他の帯域と比べて量は少し少なめで,距離も若干遠め。奥行きのある音場にはこの中域の距離感も関係しているかも?

表現力の豊かさが群を抜いて高く,特にギターやヴォーカルの生々しさは特筆ものです。

質感は艶がありつつも明るめで,これまたクール系。
適度に透明感もあり,とってもクリアです。厚みも適度でとっても聴きやすい,バランスの良い音と言えると思います。


低域:

とにかくCIが全力で主張してくる,迫力とインパクトの強い音。手持ちの中ではここまで低域が強くなっているIEMは他にありません。

ローミッドよりもサブローが強めで深みがあり,このあたりも広い音場に貢献している部分と言えるかも。
しかしブーミーで解像度が低かったり,他の帯域をマスクしてしまうということが全然ないのがこの機種のすごいところ。質感としてはむしろタイトで粒立ちの良さは他の帯域と比べても劣るということは全くありません。

そしてデュアルのように音圧が高くて他の帯域よりも不自然に厚みがあったりしないので,重たいんだけど息苦しさはあまり感じさせない不思議な感覚を与えてくれます。

ただUERMくらいの低音がちょうどいいと思っている方は最初はびっくりしてしまうかも。慣れてくるとクセになって他のカスタムIEMが物足りなく感じてしまうような中毒性の高い低音だと思うのですが。


総評:

「癖のないモニター機」とは決して呼ぶことのできない個性的な機種ではありますが,全体域に渡って細部までの表現力が冴え渡る,かなりリスニング向けな機種であるように思います。BAイヤホンではおそらく最大級の低域の量感も,ステージではあれくらいあったほうが聞き取りやすいってことなんでしょう,きっと。

3way3driversというスペックに対して943Euro(15万円くらい?)というかなりパンチの効いたお値段もあって,ドライバが多ければ多いほど人気が出やすいこのカスタムIEM界では敬遠されそうな機種ではありますが,一度この音を聴いてしまったらもう後には戻れない,そんな不思議な魅力を持った機種だと思います。

ちょっと珍しい機種を買ってみたいけど,あんまりにも変わったものを買って失敗はしたくない...という方にもぴったりのチョイスと言えるかも。個人的にはとってもお勧めな機種です。

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