フォックスキャッチャー (Foxcatcher) 感想

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オススメ度: ★★★★★

あらすじ:

オリンピックで金メダルを獲得した経歴もあるレスラーのマーク・シュルツ(チャニング・テイタム)は,
同じくレスラーで明るく華があり,レスリングの実力もさることながら周囲の人間みんなから愛されるような愛嬌にあふれた兄のデイヴ・シュルツ(マーク・ラファロ)の陰に隠れて,オリンピック後は目立った結果も残せず,鬱屈とした日々を送っていた。

そんなある日,マークの元にある知らせが届く。それは,ある大富豪が自身のチームにマークをスカウトしたいというものだった。
その大富豪の名はジョン・デュポン(スティーブ・カレル)

彼の愛国心,理想の高さに惹かれたマークは「フォックスキャッチャー」と呼ばれるジョンのチームに加入することを快諾する。

日々の練習を通じて心の距離を縮めていく2人だったが,だんだんとデュポンの抱える心の闇があらわになっていく...

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「カポーティ」や「マネーボール」など実話を基にした作品を描き続けてきたベネット・ミラー監督の新作に選んだのは,これまた実在のレスラーとそのスポンサーにまつわる,嫉妬と羨望がもたらした奇妙な相互依存の物語。

スポーツを題材とした映画ながら,全体を支配するのは冷たい緊張感に満ちた静寂。

アメリカを代表する巨大財閥の当主であり,その莫大な財産から周囲の人間は誰も逆らうことはないけれど,その裏で一人の人間としては誰からも認められてこなかった自分に苦しむジョンと,偉大な兄の陰に隠れて長い間日の目を見ることができず,スポンサーからも見放されていたマーク。

その2人が,明るくレスリングの腕は天才的,自分のこと以上に家族のことを強く思い,周囲の人間からの信頼も厚いデイヴへのコンプレックスから,まるでお互いの存在を補い合うように共依存関係に陥り崩壊していく様を冷酷なまでにシニカルな目線で描いています。

特にジョンが一番近しい存在である母親に認められようともがく様は悲しみと狂気に満ちており,母親の目の前でプロのレスラーたちを相手に滑稽な実技指導を実演してみせる様はあまりの痛々しさに目を背けたくなってしまうほどです。

その結末は公になっている通り。ジョンの抱える闇が,一人の人間が抱えられる大きさを遥かに超えるほどに膨れあがっていった結果,殺人という形でそれが爆発してしまうわけですが,
解説的な描写を極限まで省き,登場人物たちの行動や心の動きにスポットを当てたスマートな脚本は全くのセンチメンタリズムの持ち込みを許しません。

彼ら登場人物たちを演じるメインキャスト3人の演技はそれぞれキャリア最高といっても過言ではないほどに素晴らしく,
特に体重を増やし,偽の鼻をつけるほどの役作りに徹したスティーブ・カレルの演技はなぜアカデミー賞を逃してしまったのか不思議なほど。
観ているこちらまで凍り付いてしまうほどに繊細で,狂気に満ち溢れたキャラクターを完璧に演じきっています。

「事実は小説よりも奇なり」とはよく言ったものですが,それを体現したような奇妙で生々しいこの物語は,観るもの全てを骨の髄まで凍りつかせる,2015年最高にして最恐のスリラー。
映画ファンなら見逃す手はありません!



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