アイズ 感想

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オススメ度: ★★★★

あらすじ:

平凡な女子高生の山本由佳里(伊藤万理華)はある日,白い服を着た奇妙な少女の夢を見て,その不気味さに思わず飛び起きる。
目を覚ましてマンションの表札を見ると,そこには滲んだ文字で「F」と書かれていた。
由佳里の父親(山田太一)曰くそれは「マーキング」というもので,セールスの業者が身内へのメッセージとして残していくものなのだという。ちなみに「F」は"Family(家族が住んでいる)"を表す文字だ。

それを気味悪がった母(おぞねせいこ)は由佳里に文字を消すように言いつけるが,なぜかその文字はなかなか消えない。
そうこうしている間に親友の奈保(山田朱莉)と一緒に学校に行く約束に遅れてしまい,奈保には先に行ってもらうことに。

その後由佳里が学校に行くと,奈保が乗っていたバスが大きな事故を起こし,帰らぬ人となったというニュースが入り,学校は大騒ぎに。
親友を失い絶望した由佳里だったが,その翌日に家の表札を見ると,今度は「A」の文字が。

それを機に,由佳里の身の回りでは奇妙な出来事が次々と起こり始める。

夢に現れた少女は何者なのか? あのマーキングには一体どんな意味があるのか?
そして,全ての謎を解き明かすべく奔走する由佳里を待ち受けている運命とは...

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「ホラー映画は任せとけ!」なホラー大好き人間と,そうではない/ホラーをあまり観ない人との間ではかなり評価が分かれそうな作品。

最初は白い服を着て顔のよく見えない幼女が暗がりから迫ってくるという,まさにステレオタイプな心霊ホラーが展開されます。そして彼女の出現によって主人公の周囲の人間がどんどん壊れていく...というのもこれまで何百回と繰り返されたきたありがちすぎる展開。

だいたいの人はこの時点で,「ああ,またかよ...」となるはず。だってそういうのが観たければ,もっと予算だけはバカバカ使った「呪怨」とか観にいけばいいですもんね。

でも待ってください。この映画が一味違うのはここからです。

マンションの表札に毎朝現れる謎の文字,主人公にやたら辛く当たる母親など様々な伏線を散りばめながら,それを巧みに利用して「これには何の意味があるんだろう?」と容赦なく物語の世界へ引きずり込んでいくシナリオ作りは素晴らしく,
散々ばらまいた伏線を綺麗に回収しながら,「よくある心霊ホラー」から「驚きに満ちた衝撃のサイコスリラー」へと様相を変えていく後半の怒涛の展開は見事としか言いようがありません。

ここまで起承転結のしっかりしたホラー映画はこれまで観たことがなく,特にこの世で一番恐ろしいのは人間の妬み・嫉みや自己保身などの負の感情であると提示してみせたラスト10分には背筋が凍りつくこと必至です。

ただ,そのようなストーリー展開のために心霊ホラー的な演出はわりとソフトで,グロさなんかは皆無。
物理的な怖さよりも心理的恐怖で魅せる映画なので,どこからともなく現れて不条理に命を奪っていく霊たちをどれだけ恐ろしく描けるかということに重きを置いているホラー映画ファンからすると非常に物足りないと感じてしまうかも。
ホラー映画をあまり見ない私でも,この映画が霊的な部分ではあまり怖くない部類だということがすぐわかるくらいでした。

しかしそんな物語をダレさせることなくしっかりと牽引しているのが,主演の伊藤万理華の圧倒的な存在感。
物静かでおとなしいように見えて,その中には内なる狂気を秘めた少女の役を完璧に乗りこなしており,普段はボソボソと喋って内気なのに,弟の翔太(中川慶二くん。この年でここまで冷たく怖い演技ができるのはすごい!)と接するときだけは明るくなる表情の変化や,物語が進むにつれてだんだんと崩壊していく様子を実に生々しく演じきっています。

すっげー演技上手なんだけど無名の新人女優さんなのかな? なんて思っていたらクレジットのところに「(乃木坂46)」と書いてあってびっくり。まさかアイドルの方だとは。アイドルに対して特別偏見はありませんが,普通に女優さんとして活動しても支障ないのでは,というくらい素晴らしい演技を見せてくれています。グループのファンの方にはきっとたまらないことでしょう。

そして映画に登場する舞台を見ていると明らかに低予算なはずなのに,チープさを微塵も感じさせない絶妙なカメラワークと画作りも良し。
監督が誰なのかすら調べずに観に行ったのですが,エンドロールで「福田陽平」の文字を見て納得。「ああ,『学校裏ビデオ』の監督さんですか」と。
ご存知の方は少ないかもですが,「学校裏ビデオ」は超つまんないケータイ小説ホラーをまさかの爽快アクション映画へと昇華してみせた,個人的には意外性があって面白い作品でした。

今作もそうですが,ありきたりなホラー映画の展開へミスリードし,そこから斬新かつ衝撃的な展開へと持ち込んで,観るものをアッと言わせることが上手な監督さんだと思います。

「呪怨」とか「リング」みたいな意外性の欠片もない作品で廃墟とか廃病院を貸し切るためにバカみたいなお金を使うくらいなら,こういうちゃんと「映画」として面白い作品に投資すべきでしょう,と思わせられる快作。

「どーせアイドル主演なんでしょ」とか「所詮は低予算のB級映画だろ」と敬遠している人にこそ観てほしい一本となっています。やってる映画館が少ないので探すのもなかなか大変かもしれませんが,ちょっと遠出してでもぜひ!

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Theme: 映画感想 - Genre: 映画

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