2015年上半期の映画 ベスト7

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前回の記事で今年つまらなかった映画に対して散々悪口を言いまくったので,今回は上半期の個人的ベストを発表させていただきます。

今年は邦画の逆襲が目立った年でした。2014年観た中でまともに面白かった邦画は,宮沢りえ主演の「紙の月」くらいしか思い浮かびませんが,この2015年には,特にいかにも下らなさそうな企画物(「海月姫」「ビリギャル」など)が意外なほどの完成度を見せて驚かせてくれました。

下半期はまず7月に「アベンジャーズ」「ジュラシック・ワールド」といったSFファンタジー超大作に,公開直後からPixarの最高傑作という声もあがっている「インサイド・ヘッド」など今年最も注目を集めているだろう作品群が次々と公開されるので,映画ファンの皆さんにとっては忙しい月になること間違い無しですね。

個人的に一番観たいのは,もはやジブリ超えを果たしたといっても過言ではない大人気のアニメ映画監督・細田守監督の最新作「バケモノの子」ですね。革新的な映像美に,静かだけれど深い人間描写,そしていかにもアニメっぽいドラマチックな展開など,大昔の「デジモン」から始まって,未だ彼の映画でハズレに出会ったことがありません。今作にも期待大!



...前置きが長くなりました。
何はともあれ,ランキングへ参りましょう! ちなみに今回も,本レビューを別記事で書いたものにはリンクを貼ってありますので,お読みいただければこれ以上嬉しいことはありません。

では早速!


7位: 脳内ポイズンベリー



私見ではアカデミー賞にノミネートされた「イミテーション・ゲーム」や「博士と彼女のセオリー」よりも断然面白かった今作が,今年最大のサプライズ。
人間の感情を擬人化し,脳内と現実世界でのドタバタを描いたシナリオはテンポ良く痛快で,外から見るとたいしたことないようなことでも頭の中では大事件。大嵐が吹き荒れている...というギャップは誰でも共感できるはず。

また,優柔不断な主人公・いちこの脳内会議のために現実世界で傷つく人がいるというところまで包み隠さず描写したのはこの手の少女漫画原作の作品からすると非常に勇気ある決断で,「私はあなたといると頭の中が大騒ぎになって」といういちこの告白に対し「そんなん誰だって同じでしょ」と意に介さないフリーター男の早乙女と,逆に思いっきり振り回されてしまう真面目系男子の越智の対比がバッチリ効いています。
このワーワーゴチャゴチャしているようで,実は一本筋が通った物語を見ていれば,最後にいちこと脳内メンバーが出す結論にも納得できるはず。
特に脳内会議の議長・吉田の「大事なのは誰を好きかじゃない。誰と一緒にいる自分を好きかということだ」は今年の映画のセリフで一番の名言だと思います。

役者たちの熱演も見どころで,特に日本のジュリアン・ムーア(私が勝手に言ってるだけです)・真木よう子はこんなカワイイ役も演じられるのかという意外性を見せていて,女優としての懐の深さを遺憾なく見せつけてくれています。


6位: セッション (Whiplash)



自分の才能を開花させるためには,自分を一人の人間たり占めている部分をどれだけ犠牲にすることができるのか,という究極の問題提起をちょっとねじ曲がった視点から描いたスポ根映画です。

入学すれば将来の成功は約束される名門学校にいるもののなかなか馴染めずにいた主人公・アンドリューは,ある日学校でも有名な指揮者兼教師のフレッチャー先生から声をかけられ彼のバンドに加わることになりますが,実際にレッスンを始めてみるとフレッチャー先生はとんでもないスパルタ教師。
フレッチャー先生に認められるべく血を流しながら奮闘するアンドリューの姿を描いているわけですが,アンドリューがだんだんと壊れていってしまう描写が生々しいことこの上ない。

フレッチャー先生がアンドリューに対して行う地獄のレッスンは端から見るとただのイジメでしかないわけですが,それに参加している本人たち,特にアンドリューからすると,フレッチャー先生に認められること以上に崇高なことなどない,脳内麻薬出まくりの,いわば戦いなわけです。

その世界に観客である我々を引きずりこんでくれるのは,本人もドラマーの経験のある主演・マイルズ・テラーと数々の映画で名脇役を務めてきたJ.K.シモンズによる完璧すぎる演技。

で,最後の最後のライブシーンになってフレッチャー先生はようやく本性を露わにするわけですが,そこでようやく目が覚めたアンソリューが,フレッチャー先生に一人のドラマーとして一対一の勝負を挑み,そこで2つの大きな才能がぶつかり合って壁を突き破る瞬間が来る...というのは見事なオチと言えるでしょう。

ていうか,あのラストシーンって9分19秒もあったんですね。普通に20秒くらいにしか感じられませんでしたけど。


5位: 駆込み女と駆出し男



「邦画なんて所詮ヤクザ映画かくだらないラブコメか,はたまたお涙頂戴の時代劇しか作れないからなあ...」なんて絶望しているあなたに朗報。この「駆込み女と駆出し男」は,かの「ソーシャル・ネットワーク」並みの早口で超ハイスピードで物語が進み,そしてなんとフェミニズムなんていう現代的な価値観を大々的に取り上げた,新時代の傑作時代劇です。

何よりも主演陣3人のハマり役っぷりが尋常ではなく,本人のキャラクターそのものすぎて「本当に演技してる?」と言いたくなる大泉洋,相変わらずの力演っぷりが美しい戸田恵梨香,そして登場するシーンの全てで思わず目を奪われてしまう満島ひかり。彼らの演技が物語をぐいぐい引っ張ってくれます。

日本の心である笑いあり,涙ありの人情劇と現代的な社会派メッセージが合わさって,思いがけない奇跡が生まれてしまったのがこの一本です。


4位: フォックスキャッチャー (Foxcatcher)



アメリカ有数の大富豪がオリンピック金メダリストで自らのお抱えのレスラーを殺害した事件を基にした今作は,体重を増やし付け鼻をして役作りに臨んだスティーブ・カレルの迫真の演技が光る2015年最恐のスリラーとなっています。

お金でなんでも解決できてしまう大富豪のジョン・デュ・ポンが,その裏では自分に失望の眼差しを向けてくる母親や,真の人間関係を築けない自分の姿に苦しむ姿を静かに,そして冷たく描いており,その対照的な存在として描かれるデイブをジョンの膨らみすぎた嫉妬と羨望が殺してしまう...という展開には背筋が凍りつかされます。


3位: バードマン (Birdman)



日本では意外なくらい批判が多かった今年のアカデミー作品賞受賞作ですが,宣伝の仕方がまずかったかな。
あんまり「さあ,今から傑作を観るぞ!」とハーゲルを上げに上げて意気込んで観にいくと,少しのツッコミどころもとんでもなく大きな欠陥に見えてしまうというのが人の性で,
こういう「世界観に迷い込む」系の作品に理路整然としたわかりやすさを求めてしまうというのはそもそも間違っているような気がしてならないのです。

肝心の作品の出来はというと,「ゼロ・グラビティ」で撮影監督を務めたエマニュエル・ルベツキが今作では映画全体をなんと1本の長回し映像のように見せてしまうという圧巻のアイデアで,現実の世界と主人公・リーガンの妄想の世界がまるで一つにつながった世界のように描いて見せてくれました。

かつては「バードマン」というヒーロー映画で人気を博したものの今はすっかり人気も落ちぶれてしまった主人公・リーガンが,苦肉の策でブロードウェイミュージカルを監督,演出,主演という完全自演の形で再起を目指す...という話を,自身もかつてのバットマンとして一躍スターダムに躍り出たものの,その後はヒット作に恵まれなかったというエピソードを持ったマイケル・キートンが演じるというところに皮肉な面白さもグッド!


2位: マッドマックス 怒りのデス・ロード (Mad Max: Fury Road)



メル・ギブソンをスーパースターへと押し上げた30年以上も前のシリーズを,なんと同じ監督の手によって復活させた今作はシリーズ最高傑作なだけでなく,(少なくとも私が観た中では)ここ5年間で最高とも言えるアクションの大傑作となりました。

追いかける悪者チームと逃げる主人公チームのカーチェイスを2時間ぶっ続けで映し続けるというブッ飛んだ設定と,CGが発達しすぎた現代のアクション映画が失った生の興奮を蘇らせた圧巻のアクションシーンの連続には脳内麻薬が出っ放しになること間違いなし。

また,不毛な砂漠の支配者から逃げ出した女性たちが,行けども行けども見えてこない希望の地が既に消えてしまったという事実を聞かされ,絶望しかないと思っていた独裁者が支配する砦に舞い戻ることを決めるが,その道中で悪者をやっつけて希望の光を掴み取る...といういかにもハリウッド的なシナリオもわかりやすくてとても観やすい。

大きなスクリーンで映画の世界に身を委ねてこそ楽しめる映画で,普段あまり映画館に行かない人たちを映画館に向かわせてしまう,そんな力を持った一本と言えるでしょう。


1位: 海街diary



個人的には2013年で最も面白かった映画だった,同監督による「そして父になる」よりも4000倍は素晴らしかったこの映画が今年の暫定ナンバー1。
ちなみに2014年のナンバー1は「6歳のボクが,大人になるまで」でした(2位も同監督の「ビフォア・ミッドナイト」)。その時点で私の映画の趣味はわかって頂けるような気がします(笑)

ストーリーは鎌倉の小さなボロ一軒家に暮らす3姉妹のもとに,彼女たちの過程を壊した原因となる父の浮気相手が生んだ腹違いの妹が加わるというもので,どこのシーンの細かい部分を話してもネタバレにはつながらないくらい,「映画的」な大きな事件は起こりません。
その代わり,4姉妹が日常の中で抱える小さな葛藤を通じて本当の家族になっていく過程を静かに,しかし切なく描き出しています。

おそらく是枝監督は我々の生活が諸行無常だということに深く思うところがあって,この作品ではこれまでの作品以上にその色が強く出ています。
近くにいた誰かがいなくなっても生きている人間の生活は続いていくし,悲しみも喜びもその瞬間を捉えた一つの事象でしかないということをわかっているからこそ,平凡で生活感に溢れた風景をあそこまで美しく撮れるんでしょう。

そして日本映画としては衝撃的とも言えるのが,是枝監督の映画に出てくる登場人物たちは「現実に生きる人間じゃあ絶対こんなこと言わないだろうな」とか「こんなしゃべり方する人間いないだろ」みたいなキャラクターが一人も出てこないこと。ここが一気に物語のリアリティを高めてくれています。

主演女優4人組の演技は文句なく素晴らしく,それぞれの女優の普段のイメージとはむしろかけ離れた役なのに何故か尋常ではないハマりっぷりを見せてくれていてお見事としか言いようがありません。

「今生きている日常が一番美しい」なんていうのはこれまで何千本の映画やテレビ作品で語られてきた陳腐なテーマですが,是枝監督の手にかかればそれすらも説得力を持って観客である我々の心に深く訴えかけてきます。

下半期,既に2015年の最高傑作の匂いがプンプンしているこの作品を超える映画は現れるのか...その辺りにも期待して,下半期も映画をたくさん映画を観て楽しみたいと思います!
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Theme: 映画レビュー - Genre: 映画

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