アリスのままで (Still Alice) 感想

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オススメ度: ★★★★

あらすじ:

コロンビア大学で言語学教授をしているアリス(ジュリアン・ムーア)は,ある日の講演中に急に単語が出てこなくなってしまう。
しかしアリスももう50歳。帰りの車の中でやっと単語を思い出し,自分もついに更年期かと思っていた。

しかしまた別のある日,自分の職場である大学へランニングへ行ったアリスは,何十年も通ったそのキャンパス内で自分がどこにいるのかわからなくなってしまう。

何かがおかしいと感じたアリスは,家族に黙って神経科の病院へ通うことを決める。
しかしそこで告げられたのは,彼女が若年性のアルツハイマーにかかっているという衝撃の事実だった...

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最初に断言しましょう。ジュリアン・ムーアはハリウッドで最高の女優のうちの一人です。

これまでもその演技力の高さは多方面から評価されていて,数え切れないほどの話題作("The Kids Are Allright"や"Crazy, Stupid, Love"など本当に様々)にも出演しており,もちろんオスカーにだって何度かノミネートはされたこともあります。

ところがこれまで一度も受賞したことはなく,オスカーに嫌われてるのか,またはもう賞味期限切れの女優だということなのか...なんて思ったりもしたことすらありました。

そんな彼女がついにオスカーを受賞! しかも主演女優賞! いったいどんな作品なんだろう...と予告編を見たら納得。ああ,難病ものですか...
オスカーにおいては作品賞ではエンタメ業界を題材にした作品,俳優に対しての賞は難病ものの主演男優/女優が選ばれやすいというのが定説になりつつあります。なので今作が難病ものだと知った時には,「彼女の演技がいつも以上だったからとかではなく,とりあえず難病ものだったから選ばれたってわけね...」と,いちファンとしては微妙にがっかりしてしまったものです。

しかし蓋を開けてみればビックリ。若年性アルツハイマーにかかり,人生を捧げてきた「言葉」というものが自身の前で無慈悲にこぼれ落ちていくという悲劇の言語学者の役を演じた今作では,彼女のキャリアの中でも最高と言ってしまっても過言ではない,極上の演技を披露してくれています。

主人公のアリスは世界的にも有名な言語学者で,家庭では優しくイケメンで聡明な生物学者の夫(アレック・ボールドウィン)との間に生まれた3人のこども達の親として,順風満帆で充実した日々を送っています。

しかしアリスの病気が発覚した後は静かに,でも急速なスピードで全てが変化していきます。もちろん家族は全員それぞれのできる形でアリスを支えていくわけですが,彼女の病気を知った彼らのリアクションは映画だからといって甘く優しいものbばかりではありません。
病気のことを聞かされた時にケイト・ボスワース演じる長女が一番大きくリアクションを取ったのは「若年性アルツハイマーは遺伝性の強いものだ」と聞かされた時だったし,夫は最終的に自分のキャリアを優先してアリスを置いて家を出て行ってしまうし,それぞれ一人の人間として自分の人生を歩みたいという気持ちとの間で揺れる様子を,意外なくらい淡々と描いていたところにリアリティを感じました。これは監督のリチャード・グラツァー監督が全身の筋肉の自由が利かなくなってしまう難病・ALSと闘いながら撮影に臨んでいたという裏話も少なからず関係しているのでしょう。

そんな中,時折安っぽい感傷に走ってしまうシーンもちらほら見られるのですが,それらを全てジュリアン・ムーアがなんとかしてくれてしまっているところが,私がこの作品に最も魅力を感じた部分です。

クライマックスとなる,中盤のスピーチのシーンは特にそう。あそこは普通なら寒くなっちゃうところなんですよね。まだアルツハイマーにかかって日の浅いアリスがなぜ唐突にスピーチ頼まれてんだよ,とか,なんとなくいいこと言っとけば観客を泣かせられると思ってんだろ,とか突っ込むシニカルな人が多く現れそうなシーンなんです。
ところがそれもジュリアン・ムーアの手にかかれば,説得力を持ち生の感情に満ち溢れた,感動のシーンへと姿を変えます。
スピーチ中の細かい手の震え,ページをめくる仕草,原稿を落として拾い上げた後に必死にページを整理するその表情から,「私は苦しんでいるのではなく,闘っているのです」という言葉に思わず涙せずにはいられなくなってしまいます。

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そして,アリスの一家の方針に反抗するように生きているが,母親への愛情は誰よりも強い次女を演じたクリステン・スチュワートもこれまた素晴らしい。史上最悪のヤングアダルト映画シリーズである「トワイライト」に主演していたからという理由だけで不当な低評価を受けているようにも思える彼女ですが,ここまで自然で力強く,時に優しい細やかな演技ができるその才能には目を見張るものがありますね。今年公開の(日本公開は未定ですが)"Clouds of Sia Maria"での演技も評判の良く,最近また勢いに乗ってきた印象があります。今後に期待!

ところどころ「うん!?」と思うようなシーンもありつつも,主演の女優があまりにも素晴らしいとそれすらも説得力をもって心に響かせることができるのだということを証明してくれた一本です。
ジュリアン・ムーアの演技を観るそのためだけにも行く価値あり!

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2016/08/26 (Fri) 17:20

若年性アルツハイマーと診断された50歳の言語学者が苦悩し葛藤する姿を、彼女のまわりの家族とのつながりに絡めて描かれた作品。 ヒロイン・アリスを演じたジュリアン・ムーアが熱演、アカデミー賞オスカーを手にしました。 ニューヨークの大学で教鞭をとる50歳の言語学者アリスは、講義中に言葉が思い出せなくなったり、ジョギング中に自宅までの道がわからなくなったり、といった異変に気づく。 ...

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