人生スイッチ (Relatos Salvajes/Wild Tales) 感想

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オススメ度: ★★★★

あらすじ:

ひょんなことから突然人生を変える岐路に立たされた人々の姿を6本の短編からオムニバス形式で描く映画。

①おかえし
ある飛行機の乗客たちには、一つの共通点があって...

②おもてなし
田舎の古びたレストランに、一人の客が来店。しかしなんとその客は、そこで働くウェイトレスの親の仇の男だった...

③エンスト
人気のない荒野で男が車を走らせていると、目の前にはノロノロと走るオンボロ車。追い抜こうとすると、邪魔してくるので、無理やり追い抜いて運転手の男にも中指を突き立ててその場を走り去った主人公だったが...

④ヒーローになるために
ビルの解体業に従事する男は、娘の誕生日にケーキを買うため店の近くに車を停めていたところ、駐車禁止区域でもないのに車をレッカーされてしまう。市役所に行って異議を申し立てたところ、市役所職員は「法律で決められているから」の一点張り。ブチ切れた男は市役所内で大太刀まわりを演じ、結果として会社はクビ、妻にも愛想をつかされてしまうのだが...

⑤愚息
豪邸に住む大富豪の息子が、飲酒運転をしたうえ、なんと妊婦を轢いてそのまま逃げてきてしまった。
息子を刑務所に行かせないため、使用人に「50万ドル払うから息子の身代わりになってくれ」と頼むのだが...

⑥Happy Wedding
人生で最も幸せな日になるはずの結婚式で、なんと新郎が浮気相手を出席させていたことが発覚して...

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人間誰しも、腹の立つことというのはしょっちゅうあるでしょう。その中には思わずブチ切れてしまいそうになることだってあるはず。
この「人間スイッチ」は、そんな怒りを爆発させちゃった人々が行き着く先を、6本の短編ドラマをオムニバス形式で描いたブラックコメディ映画です。

ちなみにこれはあくまでオムニバスであって、よくある「群像劇」とは全く異なるものです。それぞれの話に出てくる登場人物たちの間には何の関連もなく、「あの話に出てた〜さんがこっちの話にも出てきた!」みたいな展開は皆無なのでご注意を。

先のあらすじで書いたように、物語ひとつひとつの筋書きは超シンプル。
実に普通な生活を送る主人公たちの身に「何か」が起きて、それにブチ切れちゃったことによって人生の歯車が狂っていく...というのが6本全てに共通する話の流れです。

劇中に泣けるシーンなどは一切なく、ただただ驚きと笑いが支配する約2時間。
特にさすがラテンの国に生きる人々だけあって、彼らのキレっぷりは我々日本人の想像を遥かに超えるド派手さです。
「そこまでやるか!」、「うおー、派手に暴れるねえ!!」という爽快さから来る笑いも確かに多いですが、今作の肝はもっと別のところにあります。

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この映画の笑えるポイントの多くは、「こんな些細なことでこんなにキレちゃうのかよ」とか、キレてる人たちの挙動のおかしさだったりとか、そんな嘲笑にも似た笑いがこみ上げてきちゃうようなものばかり。キレてる本人たちにとっちゃ目の前の出来事って、それこそ人生を左右するような大事件だったりするはずなんですけどね。

でも、「キレる」という行為って結局はそういうこと。
「キレる」ことによって、この映画で提示される結末はどれも極端なものばかりだけど、その人はコミュニティの中での評価に影響を及ぼしちゃったりとか、場合によっちゃ本当に警察沙汰になって逮捕されちゃったりとか、側から見たらくだらないことのために人生を狂わせてしまうことだってあるというわけです。

じゃあそれを笑う立場にいる私たちって一体なんなの? その笑いの矛先はどこに向いているの?
観終わったあとにそんな疑問が頭をぐるぐる巡ってしまう、笑いの中にたっぷりの毒を含ませた、まさにこれこそがブラックユーモアと呼ぶべき作品となっています。

一つの映像作品としての出来もかなりのもので、第3話「エンスト」での喧嘩シーンの迫力と緊迫感は、これよりも莫大な予算をかけた「ターミネーター: 新起動/ジェニシス」がアンパンマン並みの優しさに見えるほど。

そして個人的にはラストの「Happy Wedding」が良かったですね。
それまでの5本で、キレちゃった後に訪れる外的要因による制裁/報酬については散々描いてきたけど、キレてキレて、怒りを超えたその先に待っている内面的な変化については描かれていなかったなあ...なんて思っていたところにアレですから。詳しくは是非劇場でチェックして頂きたいところですが、あの結末には割と誰もが納得できるはず、というかみんなああいう経験あるんじゃないですかね。これまでの人生で一度もキレたことがないという仏様のような人なら話は別だと思いますが。

原題は日本語に直訳すると、「野性的な話(Wild Tales)」ですが、いつも外国映画に変な日本語タイトルを付けたがるGAGAも、今回はいい仕事したなと褒めてあげたいです。
何か些細なきっかけから自分の中にあるスイッチを押してしまい、それによって人生が変わってしまった人々の末路を皮肉たっぷりに描いたこの映画には、この「人生スイッチ」というタイトルがむしろぴったりな気がします。

皆さんもこの映画を観て、怒りを解き放つということの意味について考えてみてはいかがでしょうか?

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Theme: 映画レビュー - Genre: 映画

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