進撃の巨人 Attack On Titan 感想

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オススメ度:

あらすじ:

100年以上前。突如現れた巨人たちによって、人類の大半は食われた。

それを受けて、人類は巨大な壁を築き、巨人の進行を防いで平和に暮らしていた。

そんな中、壁の中の僻地に生まれた少年・エレン(三浦春馬)は、いつか壁外へ出て広い世界を見ることを夢見ていた。

そんなある日、友人のミカサ(水原希子)アルミン(本郷奏太)とともに出かけていたエレンの前に、超大型の巨人が突如姿を表す。

今壁内に生きる人類の中で誰一人として実際に目にしたことのなかった巨人の出現に、壁内の世界は大パニック。
果たして人類は、この恐怖から逃れることはできるのか...


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漫画原作の映画では時折「原作レイプ」という言葉が使われますが、この作品ほどその単語がピッタリの映画もないのでは。

USJのクールジャパン企画でも取り上げられ、いまや日本を代表する漫画の一つとなった「進撃の巨人」の実写版ですが、この映画の何が一番気にくわないかって、「リアリティを徹底追及して、原作から大幅に設定を変えました!」というのを売りにしているくせに、中途半端に原作ファンにも媚びようとしているところです。

主人公は壁の外に広がる世界を夢見るエレン(日本人)という少年。口先で夢ばかり語るけれども、現実では仕事も長続きしないようなダメ男。
そんな彼は心優しい友人のアルミン(日本人)とミカサ(日本人。これはあり得るかも?)と一緒に遊びに出た時に、それまで100年以上姿を現していなかった巨人と偶然遭遇...っていうとっても都合の良いストーリーになっています。

まず原作ファンが怒りそうなのが、登場人物ほぼ全員の大幅なキャラ変更でしょう。特に原作ではまっすぐで仲間思いなエレンが、ただのダメ男くんに変更されているというところは賛否が分かれそう。

原作が現時点でコミックス16巻まで続いていて、それでもまだ物語の根幹に関わる謎がほとんど解明されていない状況というのがあるので、前編・後編あわせて長くても4時間程度で一つの物語の中で、最初はダメダメな主人公がだんだん成長していく...というドラマを作るためにこういう設定にしたのでしょう。

でも、そもそも三浦春馬は「アイデンティティ確立中の10代の少年」にはどうしても見えないと思ってしまったのは私だけなんでしょうか。それが今作でのエレンにどうしても感情移入できなかった理由の一つでもあります。ファンの方ごめんなさい。

にしても、キャラクターみんなのクズっぷりとバカっぷりがぶっ飛びすぎてて、もはや笑いしか出てこなかったです。

巨人と初めて遭遇した時に震えて逃げ回ってただけで、しかも初恋の女の子を見殺しにしちゃったようなエレンが、巨人に対して軽口を叩く仲間に対して「お前は巨人に乳首があるか知ってるか? 巨人を見たこともないくせに偉そうなこと言ってんじゃねえ!!」とぶちギレる。

「僕たちが失敗したら、そこで人類は終わる」とハキハキと口に出して言っちゃうような重要なミッションで、しかも最初に「声を出すくらいなら舌を噛み切れ」という説明さえあったくらいなのに、移動車の中でどうでもいい話をペチャクチャと喋り続ける。

そしてその野営地で、エレンは自分が見殺しにしたミカサが他の男に寝取られていたことを知って狂ったように叫ぶ。
そこに「あんた、また巨人でも呼ぶ気?」とたしなめに来るのは、ミッション最中に独断で動いて、結果として巨人を呼び集めて仲間たちを死の危機に追いやった女。しかもその女は空気も読まずにエレンと情事に及ぼうとする。
さらにその隣では、「離れたくなーい」という理由だけで2人一緒にミッションに加わったバカップルがセックスをしている。

...などなど、もはやどこからツッコめばいいのかわからなくなってくるようなおバカなやりとりが延々と繰り返されます。
そのおバカっぷりには、もはやちゃんと笑える映画を作ろうと練られた「ミニオンズ」なんかよりも400倍以上も笑えてしまうというのは皮肉なものです。

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そして日本人が演じて違和感が出ないように物語の舞台を日本に設定し直したわけですが、それもまたスベってますね。

そもそも「リアリティを追求した」と脚本家やら監督やらがドヤ顔で語っているわりに、「エレン」やら「アルミン」という純日本人と「ソウダのおっさん」が共存できちゃう世界なのに、
人気キャラのリヴァイ兵長は「『ヴ』という発音の名前はアジアではありえないから」なんて理由で登場すらさせないという、製作陣が思うリアリティの尺度が全くわけわからないです。

そのくせ主題歌には日本人ミュージシャンであるSEKAI NO OWARIに全編英語の歌を歌わせるとか、どういうトーンの映画を作りたかったのかがちぐはぐすぎやしませんか。

(セカオワによる主題歌。別にこれ自体が悪い曲とは思いません↓)


こんな曖昧なリアリティの感覚でもって作られた世界に生きているから、この映画の登場人物たちは声を発すれば死ぬかもしれない命がけの戦場でベラベラと余計な話をしたり、ヤりたくなっちゃったりするんでしょうか。
それとも、「まだ若い素人たちの寄せ集め軍団なんだからこれくらいの浅はかさが自然だろう」と、ここでもまたよくわからないリアリティを追求してくれちゃったんでしょうか。

そんな不運のために登場できなかったリヴァイ兵長の代わりに登場するのは、どこの宝塚歌劇団ですか、と聞きたくなるようなナルシストキャラ・シキシマ
一応、リヴァイ兵長の「最強」という設定を引き継いでいるのですが、長谷川博己の持つ独特の挙動不審な感じとか、ナヨナヨした感じが絶妙に気持ち悪くて、ああいう自信に満ちた王子様キャラにはミスマッチでした。ああいうのはむしろ及川光博とかにやらせておいたほうが突き抜けてて良かったような気がしますけど。

しかし、このシキシマみたいにちゃんと映画オリジナルキャラとして日本人の名前をもらって登場するキャラはまだいいほう。この映画が批判を集めてしまいそうな最大の理由は、ここまで設定を改変しているのに、主役3人の名前とか、原作での有名なセリフとか、原作ファンが好きそうなものだけをそのまま拝借してきちゃったことにあるような気がしてなりません。

「エレン」という名前を使っているのにダメ男。「ミカサ」という名前の女の子がエレンに恨みを抱いている。それに対して製作陣は、「映画のためにキャラ設定を大幅に変更しました」とのたまう。

そのくせ、原作では巨人だらけの外の世界へ命がけで出て行く「調査兵団」を、映画の時間の関係上、役割を縮小させて「壁修理要員」に変えたのに「心臓を捧げよ!」という決め台詞だけはそのまま流用していたり、
原作と違って巨人を全滅させるのが目的ではないエレンが、原作と同じ場面であの名台詞「駆逐してやる」を言ってみたりとか、
とにかく中途半端に原作ファンに「ほーら、みなさんこれが欲しかったんですよね?」と媚びるような真似をする。

だから原作ファンが怒るんです。
リアリティがうんちゃらと言うくらいなら、いっそ主人公の名前も「ハルマ」と「キコ」とかに変えちゃって、原作とは全くの別物として物語を構築してくれちゃったほうがむしろ受け入れやすかったというか。

この映画を観ると、顔が濃い日本人の俳優たちを集めてきて「この人たちは古代ローマ人です!」と押し切った「テルマエ・ロマエ」の潔さを賞賛したくなります。

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製作陣のリアリティの追求とやらはキャラクターの見た目にまで及んでいるのか、味方チームの登場人物、特に若い女の子たちのルックスはかなり無個性です。私は一回観ただけでは、女の子たちが誰が誰なんだか見分けがつきませんでした。一回の鑑賞で登場人物たちのキャラクターが全て把握できた人のことを私は尊敬します。

一応上の画像に出ているのがメインの登場キャラたちなのですが、こうして改めて見てみても「あれ、こんな人いたっけ...?」と思わせられるキャラが4人ほどいます。いっぱいキャラ出したがるのはわかるけど、もっと見た目にも個性をつけてくれないと観客の混乱を招くだけだと知っていただきたい。

...とまあ、よくも98分という短めの上映時間に対してここまで文句が出てきたなあと自分でも驚くくらいではありますが、ただこの映画、非常に惜しいなあとも思う部分もあります。

だってこの映画、ただのパニックアクションとして観るぶんには、なかなか完成度が高いんですもん。
軍艦島で撮影された映像は文句なく綺麗だし、立体機動装置を実写化するのは難しいだろうと思っていたら意外なくらいに爽快なアクションが実現されていて、そのあたりには原作ファンの方々も素直にご納得いただけるのではないかという出来になっています。

巨人たちのリアルさもかなりのもので、もっとCG感溢れるものになるのかと思いきや、けっこう普通に人間ぽくて逆に恐怖感を煽られました。

ただ、グロ描写がかなり多く、これがなぜPG12で放映されてしまっているのかかなり疑問。私が観に行った時には小学生くらいの子どもを連れた家族も観にきていましたが、普通に泣いちゃってました。そりゃそうだ。血をブシャブシャ出しながら、あんなに気持ち悪い効果音で人間を食べられたんじゃ泣きたくもなります。

夏休みのファミリー層をターゲットにしたいから、おそらく映倫に賄賂やらなんやら送って無理やりPG12に抑えたんでしょうが、こんなん子どもが観たらトラウマになるに決まってます。

モザイクだらけのソフトAV「フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ」やら、トゲトゲの戦車の上でギター弾いてる人がいるだけの「マッド・マックス」にR指定つけてるくらいならこっちをなんとかしろよ、と思ったのは私だけではないんじゃないでしょうか。

とにかく誰に観て欲しいのか、誰を喜ばせたくて作ったのかが全くわからないトンデモ映画。

売れてる漫画を実写化すればヒットする、というのは日本映画界における必勝の方程式とも言えますが、ただお金欲しさに、自分たちが製作しやすいように適当に設定をいじって、あとは原作から名台詞だけを引っ張ってくれば原作ファンも満足させられるだろう、なんていう甘い考えで面白い映画は作れないんだよということをこの映画に寄せられた酷評から学んでほしいと思います。

来月9月19日には後編の公開も決定していますが、後編はまるで拷問のようだったこの前編よりもマシなものを期待したいところです。

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Theme: 映画レビュー - Genre: 映画

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