ヴィンセントが教えてくれたこと (St. Vincent) 感想

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オススメ度: ★★★

あらすじ:

毎日酒浸り、ギャンブルが大好きで無一文。ついには銀行の口座まで解約に追い込まれてしまった不良オヤジ・ヴィンセント(ビル・マーレイ)は、ロシア人の売春婦の彼女・ダカ(ナオミ・ワッツ)と自堕落な暮らしを続けていた。

そんな彼の隣に、病院で検査技師をしているマギー(メリッサ・マッカーシー)という女性とその息子・オリバー(ジェイデン・リーベラー)が越してくる。

ある日、ひょんなことからオリバーを預かり一緒に時間を過ごすことになったヴィンセント。
そして、オリバーが学校の子どもたちからイジメにあっている現場を目撃してしまう。

そんなオリバーを見かねたヴィンセントは、彼にケンカの方法を教えるのだが...

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*注意! 感想には若干のネタバレが含まれています。



みなさん、「ほっこり」って単語、聞いたことありますか?

最近よく耳にするんですが、使い方の例を一つ挙げてみます。

私が休みの9割を映画を観ることに費やしていることは職場でも周知の事実なのですが、よく職場の女性の先輩方から「UCくん、あの映画観た? 超良かったよね〜! なんかすごいほっこりした〜。」
...などとよく言われます。

最初はほんとに「ほっこり」なんて単語は聞いたことがなかったので「なんだ敵襲か!?」などと思ったものですが、話を聞いていると「激しく心が揺さぶられるわけではないけれど、なんとなく優しい気持ちになったり心が温まる」みたいな意味で使うみたいです。
まあうまいこと可愛らしい単語にまとめたもんだなあ、と思いますよね。私みたいな男が使っても気持ち悪いだけなので、自分で使うことは絶対にないですが。

この「ヴィンセントが教えてくれたこと」はそんな「ほっこり」という言葉の権化のような、笑って泣ける優しい映画となっています。

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クレバーだけどひ弱でいじめられっ子の少年と、自堕落で口の悪い不良オヤジが触れ合って、お互いに変化をもたらしていく。これを聞いただけで、もう先の展開も読めてきますよね?

この映画のすごいところは、そんなありがちな展開を恥ずかしげもなくどんどんと積み上げてくるところ。

いじめからの脱却→主人公の病気→大事な人の死→オリバーによる感動のスピーチ→出産...と、「泣ける映画」と聞いて思い浮かびそうな展開を、なんと一本の映画の中にギュギュッと全て詰め込んでいます。
確かに話としてはコンパクトにまとまってはいるんですが、同時に、もうこれを観て感動しなかったら極悪人と認定されて刑務所にでもぶちこむぞ、と言わんばかりの圧力も感じられてしまいます。
そんな風にありきたりな展開の連続なので、安っぽいおセンチなシーンなんかもチラホラ目に付いてしまうのは残念かも。

しかしその脚本をちゃんと形にして、しっかり感動させてくれるのは、個性豊かなキャラクターたちと、それを演じる素晴らしい俳優陣のおかげです。

オリバーの母親・マギーを演じたメリッサ・マッカーシーは相変わらずのコメディエンヌっぷりで笑いを誘ってくれますが、今回の役柄はブレイク作の「ブライズメイズ!」ほど下品な役ではないのでご安心を。

ヴィンセントの恋人役のナオミ・ワッツもまたいい味出してますね。ゴージャスなイメージの彼女が、お金にがめついロシア人売春婦の役にあそこまでハマるとは。彼女の存在は作品の中でも一番の笑いを提供してくれます。個人的に一番面白かったのは、信じられないほど強引な方法でベビーベッドを$19.99で購入しちゃうところですね。詳しくは映画を観てのお楽しみということで。

主演の二人はもはや革命的な演技力で観客を圧倒してくれます。
日本でもアメリカでも、子役の子って「頑張って、演技をしてます!」というのがはっきりと伝わってきてしまうくらいに、ちょっと不自然なくらいの演技をしてしまう子が多いように思うんですが、今作でオリバーを演じたジェイデン・リーベラーくんには全くそれがなく、小学校中学年くらいの年頃のはずなのに、まるでこの世の暗い部分を様々見てきたような「悟ってる」感がにじみ出た自然な演技を見せてくれています。

そして何と言っても主演のビル・マーレイでしょう。
酒にギャンブルに、どっからお金出てんだよ、とツッコミたくなるような暮らしぶりをしているヴィンセントは、我々がイメージするダメ人間の典型。ここまで行っちゃうと「ここまでのダメオヤジは存在しないでしょ」とリアリティのなさに覚めちゃったりすることもあるわけですが、ビル・マーレイが演じると、本当にヴィンセントというキャラクターがこの世に存在しているかのような錯覚に陥ってしまいそうになるから不思議です。

ビル・マーレイがずれたリズムでボブ・ディランの許を口ずさみながら枯れた花に水をやるシーンを延々と映したエンドクレジットは必見で、私は本編よりもあのエンドクレジットに人生を感じて涙がこぼれそうになりました。
あのシーンを見て、私にもなんとなく「ほっこり」の精神が少しわかったような気がします。いや、その言葉自体を私生活で使うことはないんですけどね。

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Theme: 映画感想 - Genre: 映画

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